レベル: 初級 杉浦麻耶, ITmedia
2007年 4月 20日 コーチングのスキルは非常にシンプルなものです。要するに、相手からの答えを導く方法論に過ぎないのですから。今回は、実際のスキルを身につける方法の手助けとなるポイントを2つ挙げてみましょう。
コーチングと剣の極意の意外な共通点
コーチングを行う際、なんとしても避けたいのは、コーチであるはずの自分が一方的に話してしまうことです。ボス型のマネジメントなどではこれが顕著に見られます。こうしたケースでは、指示や命令といった一方通行のコミュニケーションで相手を動かそうとしてしまいます。そして多くの場合、相手の自主性などはないがしろにされてしまうのです。
コーチングスキルに必要なのは「相手の話をきちんと聞き、相手の中から答えを引き出す」ことですが、これは剣術で言えば「後の先」とでも言えるもので、簡単なように見えて実は難しいことです。コーチングでは、あなたが知っている知識や情報を相手に与える必要はありません。コーチがすべきなのは、相手が持っている情報をうまく整理整頓し、思考の流れをスムーズにしてあげることです。
では、「後の先」を取るためにはどうすればいいか。そのポイントとなるのは、相手が何か発言したとき「ちょっとした言葉を返すこと」です。相づちと言ってもいいかもしれません。例えば、「この企画の趣旨はxxです」と一言で部下が簡潔に終わらせてしまったとしても、あなたが、「それはおもしろいアイデアだね」と答えれば相手は何かしらの反応をせざるを得ないでしょう。逆に、たくさん掘り下げるための質問を用意していても、無言だったり、「えぇ」「そうだね」とその場しのぎの「とりあえず返事」では、話す方のテンションは下がってしまいます。「後の先」を取るためには、相手のどんな言葉でも確実に受け止められるだけの広い視野と、効果的な返答を瞬時に組み立てるだけの集中力が必要となるのです。
こんな経験はないでしょうか? あなたが上司から質問を受けているとき、自分としては言いたいことが山ほどあり、的確な答えを言っているはずなのに、上司は「そうか」「いいんじゃない」「で?」としか反応しない。そのうちだんだんとあなたも煮え切らなくなってきて、最終的には話す気をなくしてしまう。つまり、人の意識は受け答え方1つで大きく変化するのです。
ただ、相づちは最低限のコミュニケーションスキルでしかありません。一歩進んだコミュニケーションスキルとしては、相手の言葉を「反復」、つまりオウム返しすると効果的です。反復の技法については、コーチングに限らず、カウンセリングなどでも用いられることがありますが、これを実践しようとすると、とたんにボロが出やすいものであることも知っておいてください。オウム返しなのですから、一歩間違えれば、相手によっては馬鹿にされたような印象を持つ可能性もあります。このため、反復はあまり多用せず、相手が問題解決につながる言葉を発した際に用いる程度にしておく方が効果的であることは、付け加えておきましょう。
さらに上級者は、声の大きさ、目線、間のタイミング、トーン、表情などで、例えば同じ「そうなんですか」の一言でも、幾通りもの表現を可能にします。これは「ペーシング」と呼ばれることもありますが、相手に合わせて声の大きさや調子、スピードなどを変化させることで、相手との安心感を築くスキルです。
いずれにせよ、受け答えのストックを会話術に忍ばせておくことは、コーチングにおいて必要なスキルになります。会話にならないちょっとした受け答えは、相手の中の答えを見つけるコーチングでは重要なベースとなります。相手がしゃべりやすいように、そしてたくさんの話をきけるように、意識したいものです。
自分を客観的にとらえてみる
人は誰しも、物事を自分の視点で考えがちです。「部下のA君が行っているあの企画はいかがなものか」「上司はわたしたち部下のことをきちんと考えているように思えない」など。こうした言葉の背景にあるのは、「わたし」という存在を中心とした考えです。あなたが他人に向けて発している言葉は、実はあなた自身に当てはまることであるケースは珍しくありません。
これを意識するには、自分が発したいメッセージを客観的に確認することが重要です。実際には、相手に対して行う質問をまずは自分にしてみればよいのです。内容やとらえ方を改めて明確にできるだけでなく、相手がどう感じるかを認識することで新たな道が見えてきます。
答えを導くはずのコーチが、自分の基準で物事を見てしまっていては、いつまでたっても相手の気持ちは引き出せません。相手の立場や感情をくみとって、導き、勇気を奮わせ、やる気を起こさせていきましょう。
コーチングスキルとはシンプルなものです。要するに、相手からの答えを導く方法論に過ぎないのですから。まずは気軽に構えて、今回解説した2つのスキルを習得し、コーチングの達人への一歩を踏み出してください。
著者について  | |  | 杉浦麻耶,ITmedia |
記事の評価
|