レベル: 初級 杉浦麻耶, ITmedia
2007年 4月 13日 企業内においては、個人に対するコーチングやビジネスコーチングでは解決できないパターンも幾つか存在します。今回は、組織にテコを入れる形のビジネスコーチングに必要な3つの法則について解説しましょう。あなたの企業に照らし合わせてみてください。
前回は企業の中の個人におけるビジネスコーチングについて解説しました。企業内では、個人のコーチングスキルでは解決できないようなパターンもあります。社員一人一人は優秀なはずなのに、組織の中に属すると能力があまり発揮されなくなる、という場合です。こういった際に必要になってくるのは、組織にテコを入れる形のビジネスコーチングなのです。
企業風土が生み出す人間関係
上司との信頼関係を作ったり、部下の士気を活性化、対個人で成果を見たり答えを引き出したのが前回説明したビジネスコーチングでした。しかし、今回の対象は組織になります。目的に向かって組織をまとめ、部署や組織に対し成果や答えを引き出すことが必要です。
企業において個人の意識というのは、企業全体の意向の影響を大きく受けがちとなります。つまり、企業が持つ問題を根本から解決しようとすれば、企業文化などとも呼ばれる全体意識をコーチングによって改革せざるを得ない、ということです。例えば、研修や新たな手法を取り入れたとしても、業績が上がらなかったり、組織が活性化しないのは、企業自体に問題があるからです。「企業」という場所は、常にほかの同僚や上司を意識しながら生きていく場です。人は、周りから認められたい、企業で自分を成長させていきたい、と願うと同時に、他人の活躍をねたんだり、失敗をして恥をかきたくないと思うのが通常です。
こういった根底にあるのは「企業風土」です。本人は意識していなくとも、組織にとって、ときにはこの企業風土が目的遂行に大きな弊害となる場合が多くあります。個人ならたいして気にもとめない問題でもネガティブに考えてしまいがちになります。
分かりやすい例として、お風呂にお湯をためていたとしましょう。「半分」たまっている状態が、客観的な事実だとします。しかし、この事実を「半分“しか”たまっていない」とネガティブに考える人もいれば、「半分“も”たまっている」とポジティブに考える人もいます。しかし、多くのケースにおいて、企業では前者の考えが主流となることが多く、どうしてもネガティブな空気が停滞しがちです。さて、こうした空気をビジネスコーチングでどう吹き飛ばせるのでしょうか。
組織のビジネスコーチングの土台に必要な要素とは?
ビジネスコーチングで組織を変革しようとする際に、ベースとして使われる幾つかの考え方があります。
1つ目は、経済的成功の法則「85対15」の法則を基にしたものです。この法則は、カーネギー財団が優秀な経営者やマネージャーを対象に調査した結果、彼らがどういったことにどれくらい意識を向けているかについて、ある程度の法則性が見られるというものです。
これによると、優秀な経営者やマネージャーはその意識の実に85%を、メンバーのモチベーションや意欲を高めるといった、人材の能力を引き出すことに対して向けており、残りの15%が、問題の解決や技術的な観点に向けられているということです。これは実に示唆に富む法則ではないでしょうか。あなたが働く企業に照らし合わせてみてください。もしかしたら、あなたの上司は売り上げの達成や、目の前の問題を解決することに労力を費やしているのではないでしょうか。そうした企業では、言葉悪く言えば、人材というのは専門的なスキルや技術を持っているとしても単なる駒でしかなく、その士気を引き出すことに時間や力を投資しようというマインドにはならないことが多いものです。結果、組織の改革はおろか、現場から優秀なアイデアや商品が生まれることは少なくなります。
2つ目は、イタリアの経済学者のヴィルフレード・パレート氏が発見した所得分配の経験則「80対20の法則」です。パレートの法則としてご存じの方もおられるでしょう。この法則を用いた考え方は、所得に関する定義づけだけにとどまらず、さまざまなケースで幅広く用いられていますが、基本的には、事象には比率の数式的な法則があり、その割合は80対20で成り立っているという理解を持っておいてもらえれば十分です。
この法則に従えば、企業の売り上げの80%は全商品のうち20%の商品が稼いでいたり、企業体力から80%の労力を費やしても売り上げから見れば20%の成果しか上げていないといったケースが意外に多いことが、あなたの企業でも当てはまるのではないでしょうか。前者の場合であれば、効率良く企業を成長させていくためにその20%の商品に対し人材や資金を集中させる、といった判断が成されるでしょうし、後者でも、効率化の観点から改善が求められるべきになります。
最後に、管理職やリーダーの言動が部下に大きな影響を与えているという「波及効果の法則」です。上層部に笑顔や活気が少ないと、メンバー間にもその思いは伝わっていってしまうものです。結果、顧客に対しても同様に波及し、笑顔もなければ活気もない営業などが行われかねません。組織としてまとまった信頼感を固めるためには、部下の変化を待つのではなく、まず管理職からいい流れを作っていかなければならないのです。
これらの要素を踏まえた上で、ビジネスコーチングをすれば企業自体が変わる、逆を言えば、これらの土台がないままコーチングをしても非効率的、変化はあまり期待できない、といえるでしょう。
少人数でも変化する企業組織
上述した土台を意識したコーチングの具体的な例を挙げてみましょう。組織の中から、勤続年数、役職、性別などは一切考慮せず、柔軟性があり仕事で自立心をもった人を3~8人程度選出し、チームをつくります。その中で、組織を活性化させる方法やビジョン、問題の意識化をさせるなど全体に影響を及ぼす役割を担わせ、長期的なスパンで実行させます。統括する上司は、チームに対し全面的なバックアップをすることが必須条件となります。
すると、どうでしょう。その少人数のチームの人員がほかの社員に対しいい影響を与え、ひいては企業全体を良くしてくれるのです。全員に労力をかけコーチングしなくとも、組織は変化していけるのです。当初、企業を変えるとは無理なことのように思うかもしれませんが、ビジネスコーチングでは、ポイントを絞り、企業の意識を変えていくことが可能となっています。ぜひ、企業に取り入れ活用していきたいものです。
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