マッシュアップのビジネス・シナリオとパターン: 前編

この記事は2回に分けてお届けします。前編となる今回は、今日のビジネス・ニーズの解決するためのエンタープライズ・マッシュアップ活用パターンを活用パターン説明します。後編では、ビジネス・シナリオと活用パターンを実装するために用いられるソリューション・アーキテクチャーおよびアーキテクチャー・パターンを解説します。(原文公開日:2008年1月27日)

Holt Adams, Executive IT Architect, IBM

Holt Adams は、IBMソフトウェアのEmerging TechnologyグループのExecutive IT Architectであり、現在、IBMのjStart ProgramおよびCustomer Innovation Teamをサポートしています。そのスキルにより、ソリューション・アーキテクトおよびエンゲージメント・マネージャーの役割を担い、お客様が最新のインターネット技術を採用するための支援に効果的かつ熱心に取り組んでいます。また、カスタマー・エンゲージメントに関してビジネスおよびテクニカルの両面で専門家としての経験もあり、リード生成、ビジネス的価値訴求、要求管理、ソリューション・アーキテクチャー、ソリューション設計、および契約交渉などに携わりました。さらに、ITアーキテクトとしてお客様の業務要件をIT要件に読み替え、それを最新のITを活用した最先端のソリューションとして構築、解決に導いています。jStart Programおよび他のサービス経験を通じて得た技術的バックグラウンドには、ワイヤレス/パーベイシブ・コンピューティング、インターネット・インフラストラクチャー、Java/J2EE、XML、Webサービス/SOA、オープン・ソース、Web 2.0、ソーシャル・ネットワーキング、およびエンタープライズ・マッシュアップなどのテクノロジーがあります。



2009年 5月 01日

ビジネス・ニーズを満たすためのマッシュアップの活用は進んでおり、採用曲線でいうと急激な成長率を見せる段階にきています。このテクノロジーは多くの業種で活用され、汎用的な使い方とアーキテクチャー・パターンとの組み合わせにより、ぞれぞれのビジネス課題が解決されています。また、ある業種で成功したソリューションが、同様のニーズを持つ他の業種にそのまま横滑りで適用されることもしばしばあります。

マッシュアップ・ソリューションごとに異なるのは、ユーザーの役割と、組み合わせられるデータ・セット、そしてそれによって生み出される価値です。活用パターン (たとえば、検索条件の取得、ユーザー・インターフェース (UI) 内でのデータのレンダリング、1番目の表での選択に基づく2番目の表の更新、データの操作、相互連携など) はほとんど同じであっても、達成するビジネス目標がお客様ごとに異なるのです。

マッシュアップの設計およびアーキテクチャーの選択肢は、採用するマッシュアップ・プラットフォームによって決められます。様々なビジネス・シナリオが、いくつか定石アーキテクチャー・パターン (たとえば、RSS/ATOM フィードの使用、REST サービスの呼び出し、pub-subモデルのウィジェット間通信、集中ハブを介したデータ・ソースの集約、データおよびサービス・ソースでのデータのフィルタリングなど) の組み合わせで実現されます。

図 1. マッシュアップの導入傾向
マッシュアップの導入傾向

はじめに

IBM® software Emerging Technology team (jStart) は過去数年間、お客様やビジネス・パートナー様とともに、ビジネス課題の解決に向けてさまざまなマッシュアップ・テクノロジー (QEDWiki、IBM Mashup Centerなど) に取り組み、その有効性を検証してきました。jStart チームの経験に基づき、多くの一般的シナリオやソリューション実装が検討され、成果物として文書化されています。これらの成果物は他に先駆けてテクノロジーを採用する者たちによって活用され、エンタープライズ・マッシュアップの価値を提案する推進力となっています。

シチュエーショナル(状況依存型)アプリケーションとして実装されたエンタープライズ・マッシュアップは、特定のビジネス目的で使用される新しいスタイルのマッシュアップです。これらのマッシュアップは固有のビジネス・ニーズのために作成され、そのビジネス状況が続いている間だけ使用される傾向にあります。ユーザーによっても作成が可能であり、基幹業務の Web アプリケーションと同等の非機能要件 (たとえば、信頼性、可用性、およびパフォーマンスなど) までは求められません。このようなアプリケーションは、しばしば”good enough”(使えれば十分な)アプリケーションとして分類され、今日のビジネス環境において、課題をある程度自己解決できる手段を求めるビジネス・プロフェッショナルが標準的に身につけるべきものとなりつつあります。

すべてのソリューション開発の原則として、資産 (方法、設計概念、コンポーネントなど) の再利用は推進すべきであり、それによって効率化、開発コスト削減、期間短縮がもたらされます。再利用の汎用的な手順が生まれたとき、これをパターンと呼んだりします。”パターン”自体は一般的な言葉であり、ビジネス・シナリオ、操作手順、アーキテクチャー設計、実装 の単一または組み合わせに使うことができます。この連載記事では、マッシュアップ・アプリケーションの設計・実装における操作手順やアーキテクチャー的側面を説明するときに、パターンという用語を使用します。


マッシュアップのビジネス・シナリオ

企業における加速的なマッシュアップ採用の広がりは、収入と支出という 2 つのビジネス指標と関連しています。ビジネスでは常に、売上とサービスの拡大を通じて収益を増加させる必要があります。しかし、今日の経済では、既存の収入源を確保するためにカスタマー・ロイヤルティーを保つ必要性も高まっていることでしょう。エンタープライズ・マッシュアップへの投資を正当化するもう1つの理由として運用コスト(支出)の削減の必要性が挙げられます。アプリケーション開発に費やすITリソースの最小化、IT プロフェッショナルの配置最適化、どちらもプラスに働きます。

企業はこれらの両方の指標のために、エンタープライズ・マッシュアップをうまく活用し始めています。主な理由は様々なアプリケーション要求が情報システム部門に多く蓄積されながらも、これらの開発が着手されることがない点にあります。多くの場合、ビジネス・ユーザー (LOB) 部門は、自身の個別のニーズを情報システム部門に依存することなく解決できるよう、より多くの自由度が与えられることを望んでいます。少ない予算でより早く LOB にアプリケーションを供給するプレッシャーを感じている情報システム部門は、基幹以外のアプリケーションにマッシュアップを活用しはじめています。これは、マッシュアップの方が要求されるスキル・レベルが低く、より短い時間で作成できるからです。情報システム部門は、Webリテラシが必ずしも高くない、自分でマッシュアップ・アプリケーションを組み立てることができないようなユーザーに対して、マッシュアップを使用してアプリケーションを共有します。マッシュアップのビジネスにおける活用シナリオをいくつか図 2 に示します。

図 2. ビジネス・シナリオ
ビジネス・シナリオ

マッシュアップを活用できている企業では、収入・支出を改善するために、いくつかの共通目標を設定しているものです。たとえばこのようなものです。

  • 管理職の意思決定の改善
  • 社員の生産性向上
  • アナリストによる新しいビジネスチャンスの発掘
  • 社員、ビジネス・パートナー、顧客の中からの専門知識やコンテンツの検索および特定
  • チーム・コラボレーションを潤滑化に形式化されていないビジネス・プロセスの改善

マッシュアップを使用してビジネス課題を解いているナリオの多くは、様々な業種に適用することができます。一般的なシナリオとして、リソース管理と個人ダッシュボードの 2 つがあります。リソース管理は、世界的なイベントや自然災害に応じて製品の販売を最適化するために、販売店間における在庫管理に使用できます。また、貨物輸送を最適化するために、鉄道、自動車、船舶などの固定資産の管理にも使用できますし、営業やサービス部門による収益を最大限高めるための人員配置にも適用可能でしょう。いずれのケースでも、さまざまなソースから集められたデータが 1 画面に集約され、ビジネス・ユーザーは、意思決定の改善、生産性の最適化、および形式化されていない業務プロセスの改善を図ることができます。

個人ダッシュボードは、個々人にあわせたカスタマイズが可能なのが一般的です。意思決定の支援、型にはまらないプロセスの改善、専門知識保有者やコンテンツの特定において大きな価値をもたらします。個人ダッシュボードは、特定のビジネス目標を解決するために作成されるのではなく、情報を統合しきちんとタスク管理できるようユーザーの日常業務をサポートします。ダッシュボードは、緊急時対応、財務分析、エンタープライズ・リソース・プランニング、あるいは軍事分析などにも使用されます。

他のコラボレーション系ビジネス・シナリオの中には、個人的コミュニケーション、フィールド・サポート・サービスといった分野が挙げられます。チームが情報の閲覧・更新、あるいは電話の開始、電子メール、インスタント・メッセージングといったコミュニケーションを効率的に行えるようになります。銀行口座の管理、支店やATM の検索、銀行スタッフとのコミュニケーションの開始を行うといったセルフ・サービスを顧客に提供する一般消費者向けシナリオもあります。

ここで大事なのは、これらのシナリオ例の中で行われるユーザーの基本操作 (後述します) やデータ集約の流れは、ユーザーの役割とデータ・ソースが全く異なる全く別のビジネス・ニーズを解決するためにも容易に転用できるという点です。これだからこそ、この記事ではパターンというものに重点を置いています。


初期採用者の対話モデル

ビジネス・シナリオや業種にかかわらず、jStartチームがこれまでにサポートしてきた初期採用者のマッシュアップ・プロジェクトを見ているとどれも”検索/照会”型または”個人ダッシュボード”型のいずれかにあてはまることが多いという傾向がみられます。

1番目のスタイルでは、小型の 入力フォームから1 つ以上の情報ソースに対して検索を実行します。結果は、表形式、地図上のポイント、チャートやグラフなど、視覚的な方法によって表示されます。ユーザーが 1 項目を選択すると、その項目に関する追加の詳細情報がユーザーに提示されます (検索とレビューの動作です)。一般に、表示される情報は、企業内部のシステムまたは外部のインターネット・ソースなど、複数のソースから取得されたものです。この時点で、ビジネス・シナリオは終了するか、ユーザーがマッシュアップを使用し、レンダリングされた情報に基づいてアクションを実行します。

個人ダッシュボード・スタイルでは、ユーザーのクレデンシャル (ID およびパスワード) が取得され、これを使用して、カスタマイズされたデータの「ダッシュボード」がユーザーに表示されます。この表示でシナリオが完了することも、前のシナリオが繰り返されることもあります。この場合、ユーザーは項目をクリックして詳細情報を取得し、レンダリングされた情報に基づいてアクションを実行します。最近になって、初期採用者たちはこれらの基本スタイルを拡張し、バックエンド・システムに対するデータの更新、作成、削除 (検索、レビュー、更新の各動作) や、社員、パートナー、顧客間でのコラボレーションを可能にするコミュニケーション・メカニズム (検索、レビュー、共同作業、更新の各動作) を含めようとしています。

図 3. 初期採用者の対話モデル

マッシュアップの基本的な使い方を理解しやすくするために、初期採用者向けの対話モデルを図 3 に示します。ここでいうの”対話”とは、ユーザー・アクションと、それに対するマッシュアップからの 1 つ以上の応答の組み合わせのことを意味します。(例:タブをクリックして表示内容を切り替える、マウスをイメージ上に移動してポップアップ・アクションを起こる、データ・レコードを選択すると詳細情報が別の表に表示されるなど。)この記事で活用パターンを扱う際、対話にはラベルを付け、ユーザー・アクションとその結果マッシュアップから返される応答について説明します。

マッシュアップ内の動作のうち(検索、レビュー、更新、および共同作業といったものは、前述のビジネス・シナリオを構成する基本セットです。今後の展望として、ビデオ、自動更新、IP ベースのリモート・デバイスの統合、全地球測位システム (GPS) など、このテクノロジーのより広範な利用法を思い描くこともできます。ビジネス目標、ユーザーの役割、データまたは対象業界にかかわらず、ほとんどのビジネス・シナリオは、前述の対話モデルで表すことができます。この対話モデルを使った汎用活用パターンは、jStartが初期採用者プロジェクトから生まれたものです。


ビジネス・シナリオと、活用パターンおよびアーキテクチャー・パターンの対比

ここまで、ビジネス・シナリオは、テクノロジーとの関連性よりも、むしろビジネス目標を達成するための業務活動として記述されています。シナリオを実現することは、ビジネス・ユーザーがこの記事で活用パターンと呼んでいる一般的な方法を用い、特定のテクノロジーとの対話を通じてタスクを実行することを意味します。このパターンには、個人がマッシュアップ・インターフェースが提供する機能やコントロールを使用しながら実行する一般的な手順 (つまり、アクション) が含まれます (たとえば、マッシュアップへのログイン、検索条件の入力、表からのデータ選択、イメージ上へのマウス移動、データ・レコードの追加または更新など)。ユーザーがマッシュアップ内に表示されたコントロールまたはデータと対話すると、それに応じてマッシュアップによる処理が行われます。この処理には、UIのレンダリング (たとえば、ナビゲーション、コントロールの表示/非表示など)、他のソフトウェアのサービスまたはデータ・ソースの呼び出し、またはマッシュアップ内での追加情報や画像の表示などがあります。ユーザー・アクションへの応答として、これら3つの例はすべてマッシュアップによって実行することが可能です。図 4 を参照ください。

図 4. シナリオとパターンの対比
シナリオとパターンの対比

マッシュアップ・アプリケーションによってサポートされている動作および対話の実装は、基盤であるアーキテクチャーの影響を受けます。マッシュアップ・アプリケーションはウィジェットと呼ばれるコンポーネントで構成されます。コンポーネントは相互にリンクされて UI およびモデルを形成し、ユーザーに表示する あるいは操作されるデータを集約します。これらのウィジェットは、UI をレンダリングするための目に見えるものであることも、バックグラウンドの処理を実行するために非表示となっていることもあります。表示にされているウィジェットもバックグラウンドの処理を実行または開始できます。ウィジェット間のリンク (プログラマチックな結合または通信) は、マッシュアップ・アプリケーションがユーザーに対話的で応答性のあるエクスペリエンスを提供するメカニズムです (たとえば、あるウィジェットのコントロールをクリックすると、他のウィジェット内のデータが更新される、またはインターフェース内に別のウィジェットがレンダリングされるなど)。リンクの定義および実装方法は、マッシュアップ・アプリケーションのプラットフォームに依存します。この連載記事の後編 では、マッシュアップの動作およびユーザーとの対話を実現するために実装される活用パターンの設計について説明します。


アクションとマッシュアップ応答を有効にした活用パターン

jStart チームは現実社会のビジネス・ニーズを解決するために、50 社を超えるお客様と協業しマッシュアップ・テクノロジーを適用してきました。マッシュアップ・アプリケーションの初期セットである検索、レビュー、共同作業、および更新の各動作に基づき、汎用的な活用パターンを数多く文書化、再利用してきました。これらのパターンによってもたらされる機能は、マッシュアップを採用したお客様の一般的な IT 要件に容易に適用でき、多くの業種で再利用性の高さから普及していることを裏付けています。次のセクションで概要を説明する活用パターン (操作にともなうアクションと応答) は、お客様における採用の初期ステージで jStart チームが実装したものです。これらのパターンは、ビジネス・ニーズの解決に向けてマッシュアップ・テクノロジーで何か可能であるかを示すサンプルの一端にしかすぎません。

アクセス制御とパーソナライゼーションのパターン

多くのエンタープライズ・マッシュアップは、企業データ (データに内在する市場価値に基づいて価値があるとみなされたデータ) または機密データ (個人情報または競合優位性を持つデータ) を活用します。どちらのケースも、ユーザー・コミュニティーに対する認証・認可が必要であり、メンバーはマッシュアップ・アプリケーションにアクセスする前にログインしなければなりません。ユーザー・コミュニティーは、社員、ビジネス・パートナー、および顧客の組み合わせによって成り立ちます。図 5 に、一般的な活用パターンおよびログイン時のアクションを示します。

図 5. ログイン時の対話
ログイン時の対話

ユーザーのクレデンシャルを取得・検証後、企業データの提供、そしてユーザーの役割に基づいたパーソナライズを実行できます。この認可の対象にはマッシュアップ・アプリケーションの機能 (たとえば、ナビゲーション・コントロール、コミュニケーション・コントロールなど) へのアクセス制御も含まれます。同様に、サービスコストを最適化するために、有料サービスへのアクセスも役割に基づいて制御可能です。ユーザーはログイン時に、マッシュアップ UI 内でコントロールをクリックしてアクションを開始し、UI 内にどのような機能およびデータを表示するのかを、担当している業務タスクに基づいて指定できます。

マッシュアップ UI のレンダリングとデータ取得のパターン

複数のソースからマッシュアップ内に集約する際にできるだけ必要としているデータに絞って取得ができるよう、データ取得はユーザー指定の検索条件に基づいて行います。この検索条件は多くの場合、フォーム内のテキスト入力フィールド、ドロップダウン・メニュー、チェック・ボックス、またはラジオ・ボタンを使用して取得することとなります。統合されるデータ・ソースまたはサービスのタイプにもよりますが、最も単純なケースとして、データ・ソースまたはサービスからRSS または ATOM フィードの形で取得する方法が考えられます。あるいは、ハブに要求を送り、複数のデータソース (たとえば、XMLフィード、SQL、ファイル、Web サービス、LDAP、SAP) から、または異なるデータ・フォーマット (たとえば、RSS、ATOM、 CSV、XML、非構造化ストリング) を持つソースからデータを集約し、統合化されたデータ・フィードを作成する方法もあります。

より複雑な呼び出し方法としては、バックエンド・システム固有のネイティブ・プロトコルやAPI を使用した直接的なデータ抽出も考えられます。 (この詳細については、後編 のアーキテクチャー・パターンの中で触れます)。レンダリングが起こるブラウザーとバックエンドの企業システム、外部パブリック・データ・ソース、または他のベンダーからのサービスとの間で交換される情報量を最小限にするために、重要でないまたは冗長なデータを削除するフィルタリングがよく行われます。図 6 に、一般的な活用パターンと、検索条件を定義するためにログイン後に有効なアクションを示します。

図 6. 検索・参照操作

初期データを取得した後、マッシュアップはデータ表示用ウィジェット (表、リスト、階層ツリー構造、地図、メニュー、およびイメージなど) を使用してそのデータをレンダリングします。データベースから取得した構造化データを表の列として表現したり、地図上に色付きのアイコンとして重ね合わせたり、イメージのスライド・ショウ、在席確情報を示すアイコンつきの連絡先リストなど、様々な表現手法が考えられます。

データのレビューおよび操作のパターン

初期データが表示されたあと、ユーザーはマッシュアップによってサポートされている操作を開始できます。関連性の高いデータの閲覧や操作により、意思決定の改善、生産性の向上、専門知識保有者や必要コンテンツの迅速な特定、そして形式化されていない業務プロセスの改善をもたらします。

分散している情報を集約し関連付けることで固有の価値を生み出すのはマッシュアップが得意とするところです。データを横に並べて比較したり複数を相互に連携させることでビジネス・ユーザーはすぐさまメリットを享受することでしょう。個々のデータ・レコードからより詳細なデータにドリルダウンする、あるいは関連するデータをすぐさま引き出し表やグラフ・地図といった形で表示する、こうした力を手にすることでビジネス・ユーザーはデータをより視覚的・直観的に利用することができるのです。図 7 に、一般的な活用パターンと、データの初期セットの取得または追加照会によってデータ更新がされた後に有効なアクションを示します。

図 7. データ閲覧のための操作

ユーザーに複数システムのデータへのアクセスを提供し、同じ画面の中でリアルタイムにデータ操作 (レコードの更新、新規レコードの作成、またはレコードの削除) ができるようになると、業務を遂行するためのタスクやプロセスを最適化できます。データの更新には、構造化されていないコメントの追加、チーム・メンバーへのタスクの割り当て、または予算カテゴリーへの銀行トランザクションのタグ付けなどが様々な例が考えられます。アドレス帳への連絡先の追加といった新規データ・レコードの作成もあるかもしれません。銀行口座間での資金移動などのトランザクション処理の実行によって新規レコードが生成されることがあるでしょう。もちろん、データは完全に削除することも可能です。図 8 を参照してください。

図 8. データ操作のための対話

すべてのケースにおいて、データ操作の結果は、他のメンバーが整合性ある形で次に利用することができるよう、バックエンド・システムに直ちに反映される必要があります。複数のシステムが関与する場合、システムおよびサポートされているプロトコルに応じてではありますが、こうした更新系の調整 (たとえば、2 フェーズ・コミット)はサーバー・サイドのコンポーネントに委ねるケースが多いです。

他とのコミュニケーションのパターン

メンバーどうしが簡単にコミュニケートできてはじめてチームは最高の働きをします。今日の、リモート・オフィスが普及して地理的にも分散したチーム、移動中メンバーもいることが多い環境の中では、チーム間の標準コミュニケーション手段として電話と電子メールだけで十分とはいえないでしょう。もしも、メンバー間のその時最適な連携手段を呼び出してつないでくれるようなマッシュアップがあれば大きな価値を生みだします。インスタント・メッセージング (チャット)やショート・メッセージ・サービス (SMS) を使用したメールなどの非同期メッセージングは、緊急性のない短い連絡用のコミュニケーション手法として、多くのプロフェッショナルや一般消費者が好むチャネルとなっているのです。図 9 に、一般的な活用パターンと、チーム内のコミュニケーションを改善するために有効なアクションを示します。

図 9. コミュニケーションのための操作

標準的な使い方として、コミュニケーションを支援するマッシュアップでは、コンタクト・リストが使用されます。コンタクト・リストでは、メンバーをグループ単位に整理したり、ニックネームを割り当てて使いやすくしたりします。個人の優先度または状況に基づき、複数のコミュニケーション・チャネルを通じてチームのコラボレーションを可能とするマッシュアップでは、業務効率を高めます。目標は、メンバーの個々の力を結集しながら型にはまらないビジネス・プロセスを遂行する力をチームにもたらすことです。図 10 を参照してください。

図 10. コミュニケーションのための対話の詳細

コミュニケーション手段が選択されると、マッシュアップ・アプリケーションはコミュニケーションを開始するために必要な情報 (電話番号、電子メール・アドレス、IM 名、IM プロバイダーのサーバーなど) を取得しているデータ・セットから補間できます。また、マッシュアップは、書式や綴りおよびメッセージ長への適合を確実なものにするために、ユーザーが入力したメッセージを処理することもできます。

ここに挙げた活用パターンは、複数の業種にわたるさまざまなビジネス・シナリオのためにjStart プロジェクトで実装したものですが、これらは該当するお客様の業務をサポートするために必要であったものを作り上げたにすぎません。マッシュアップはブラウザー内で実行される JavaScript を活用し、サーバー・サイドのコンポーネントにもアクセスできるため、マッシュアップ・アプリケーションが実現できる機能に制限がありません。マッシュアップ内で使うウィジェットを開発あるいはカスタマイズする IT スキルさえあれば、無限の可能性が広がっているのです。


まとめ

今日のマッシュアップ・アプリケーションは、検索、レビュー、共同作業、および更新の各動作をサポートするシンプルな対話モデルを使用して表現できます。ユーザーがアクションを実行すると、それに対しマッシュアップ・アプリケーションが1つ以上の応答を返す形で実現され、さまざまなビジネス・シナリオに使用できます。マッシュアップが適用される業種、ユーザーの役割、扱うデータによってそれぞれのビジネス要件を解決する固有の価値を生み出します。ただし、IT 要件的に大きな違いなく活用パターンは類似するものとしてとらえられます。この記事では、初期採用者での活用実績に基づき、マッシュアップ・テクノロジーがもたらす可能性にほんの少し触れました。ビジネス・ユーザーが自分自身のニーズまたは問題を解決するために、自らアプリケーションを作成できるようになれる ということが、マッシュアップ・テクノロジーおよび IBM Mashup Center が実現できる価値なのです。連載記事の後編 では、この記事で説明したビジネス・シナリオおよび活用パターンを実装するために使用されるソリューション・アーキテクチャーとアーキテクチャー・パターンについて解説します。

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Zone=Lotus, Sample IT projects
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