SE関のノーツ/ドミノ徒然草: 第35回 知識の密度とナレッジ・マネジメント

これだけナレッジ・マネジメント(KM)と騒がれても、ナレッジ・マネジメントは何かという問いに対しては十人十色いろいろな答えがあるようです。前々回にご紹介した、『組織の中で知識をうまく経営に役立てる仕組み』という定義ぐらいは多くの人がそうだと言ってくれそうですが、どうもこれでは今一歩広すぎる感が否めません。今回はナレッジ・マネジメントとは何かという問いに対する他の答えを探ってみましょう。

Lotus クライアント テクニカル プロフェッショナルズ, ソフトウェア事業, 日本アイ・ビー・エム株式会社

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2003年 8月 11日

『組織の中で知識をうまく経営に役立てる仕組み』という定義ですが、この"知識を役立てる"というのがどうも曖昧です。もちろん知識を使って基本的には売上を増やしたり、顧客満足度を高めたりするのでしょうが、どうやれば"役立てられる"ようになるかその仕組みが問題でしょう。このあたりがナレッジ・マネジメント対する、皆さんの最も興味のある核心の部分であるような気がします。

グループウェアで情報共有が盛んに唱えられた数年前。とにかくいろいろな報告書などを入力させたりして公開するのが一つの情報共有のパターンでもありました。ただその時はとにかく入力させるだけで、どう役立てられるかはあまり注意が注がれなかったような気がします。言わば情報の単純な蓄積であったり、単純にそれらを公開するだけであったりしたわけです。もちろんそれらの入力された書類の中には明らかに知識があったでしょう。ただそれが役立てられなかったのは数々の失敗事例が物語っているようです。

ところが同じように情報を蓄えた中から実際にナレッジ・マネジメントの成功事例とも言えるものがでてきました。営業報告書の蓄積から同業種の顧客への売込みがタイムリーに行われ売上増につながった例、修理エンジニアが修理ノウハウの蓄積から適用できるノウハウを探して修理コストの減につながった例などがよく聞かれるところです。まさに蓄積された知識が経営に役だったと言えるでしょう。

ではこれらの例では何が単なる情報共有と違ったのでしょう。明らかに表面に見えるのは、知識の必要な人が必要なときにその知識を入手できたことではないでしょうか。その入手方法は事例によりいろいろあるようです。知識の必要な人が直接、全文検索エンジンで探すのはその一つの典型とも言えるでしょう。また営業報告書であれば顧客別に書類を分類したり、ソートしたりするだけでも必要な知識の入手はかなり楽になるでしょう。このあたりはノーツで言えばビューのカテゴライズとソートにあたるでしょう。中には今の流行の言葉でもあるポータル的な画面で、数多くの書類を分類しているところもあるようです。また少し古典的ではありますが、必要としている人へメーリングリストで配っているところもあるようです。

これらのいろいろな知識の入手方法に共通するのは何でしょう。膨大な書類の山から知識を必要としている人に、選択的に知識を見せているような、または必要としている知識がありそうなあたりを集中的に見せているような、そんな見方もできるのではないでしょうか。ただ実際に目的の知識がずばりこれですと与えられるのではないことは明らかですから、そんな意味では選択的と言うよりは集中的に見せるというほうがあたっているかもしれません。これを違う言い方では、『多くの知識の中から必要であろうもの、または必要であるものが見つけやすい切り口として、知識の密度を高めて提供している』と言えるのではないでしょうか。

膨大な電子的な書類の山から、必要な人が必要な時に必要であろう文書の密度を高めたり、事前に必要であろう文書が探せるようにある切り口で密度を高めたりと考えると、知識の入手方法がひととおりこの説明で理解できるような気がしてきます。必要な人が能動的に、共通する単語で知識の密度を高める全文検索エンジン。必要な人が分類するであろう切り口で事前に知識の密度を高めておく分類やソート。必要と手をあげている人に、その興味の対象の情報のみ密度を高めて提供するメーリングリスト、となります。

そしてこれらを使いやすいように、ある体系の下に統合して目的別に知識密度のいろいろな高め方を統合したのがポータルサイトと言えるでしょう。また最近出始めた、意味で関連する文書の検索ができる高級な全文検索エンジンは、この知識密度の高め方をより高度にしたと言えるでしょう。さらに自動的に文書を分類するツールもまさに知識密度の高め方を自動化したものと言えます。

ナレッジ・マネジメントで知識を経営に役立てるためには必要であろう知識がまずは見つからなければなりません。ともかく膨大に溢れかえっている情報の中から、必要と思われる知識を探すそんな道具立てが必要となるわけです。それがまさに上で見たような知識の密度を高める技術であり、言い方を変えればナレッジ・マネジメントの技術とも言えるのではないでしょうか。

この考えを裏側から一歩すすめて考えるとこんなことが言えるかもしれません。知識の密度を高める道具立てがナレッジ・マネジメントの重要なポイントとすれば、知識の密度を高めるような道具の使い方、またもっと広く知識の密度を高めるような施策をすることがナレッジ・マネジメントの大事な側面となるかもしれません。

自由に技術ノウハウを入れられるようにして、その文書を外部に出せるように精査していくプロセスをワークフローで作った例とか、特定の分野のディスカッションデータベースにシスオペのような司会者をきっちりつけて、新しい発想などが議論されるように仕向けているナレッジ・マネジメントの例などがロータスのホームページでも紹介されています。これらは、ワークフローによって雑多な技術ノウハウの知識密度を高めていくように使っているとも言えますし、またシスオペが雑多な議論を知識密度を高めるように運用するというように言えるでしょう。ワークフローという古典的な道具、シスオペという運用の仕方を知識密度の観点でナレッジ・マネジメント的に利用しているとも解釈できるでしょう。このように考えると、実際にナレッジ・マネジメントを展開する上で、知識の密度がどのように高められるかを検討することも一つのアプローチとなるのではないでしょうか。

『組織の中で知識をうまく経営に役立てる仕組み』というナレッジ・マネジメントの定義を、この知識の密度という考え方を使ってもう一歩言い換えてみましょう。『組織の中で知識をうまく経営に役立てるために知識の密度を高める仕組み』。今日からこれをナレッジ・マネジメントの定義の一つとして加えてみてはいかがでしょうか。

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publish-date=08112003