SE関のノーツ/ドミノ徒然草: 第27回 ユーザー名は人の名前か否か

ノーツの展開を決めて、いざシステム構築となると最初によく話題になるのがユーザー名をどうするかということです。いろいろな議論の末に、実際に展開しているお客様をみると、ローマ字名を使っているところ、社員番号を使っているところ、その組み合わせのところ、果ては公式にはサポートしていないものの漢字を使っているところと実にさまざまです。また長くノーツを使っているところは、ユーザー名を見なおしたいというところもでてきています。今回はこのユーザー名をどうすればいいか考えてみましょう。

Lotus クライアント テクニカル プロフェッショナルズ, ソフトウェア事業, 日本アイ・ビー・エム株式会社

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2006年 7月 01日

まずユーザー名がどんな意味を持つか考えてみましょう。コンピューターシステムを使うにあたってユーザー名は過去30年以上に渡って使われてきました。当初はコンピュータ側からユーザーを識別するという意味あいが強かったように思えます。もう一歩踏み込んでもコンピュータ管理者から誰かわかればよいという程度のものです。資源をむだ遣いしないようにか実に短い、通常は8文字以下の英数字のみで表現したわけです。

ところが電子メールシステムやグループウェア的アプリケーションの登場によってユーザー名はユーザー本人と対コンピュータや対管理者のものだけではなくなってきました。つまりあるユーザーがその他のユーザーを認識するためにユーザー名を判別する必要がでてきたわけです。ただこれらの新しい流れはシステムの制約などから、あくまで短い名前、せいぜいイニシャルをもじったような名前をユーザー名として使うという程度に留まっていたわけです。インターネットの短い電子メールアドレスはまさにこの名残とも言えるかもしれません。

そしてノーツなどの登場です。ユーザー名は一部のコンピュータに慣れた人のためのものではなくなりました。電子メールユーザーは若手から年配まで、しかも会社の中での職種に関係なく全社員に広がる勢いです。ユーザー名はまさにユーザーの人の名前そのものに代わるものと言ってもよいような状況になってきました。

こんな状況ですからノーツのシステム構築時にユーザー名を何にするか悩むのは当然と言えば当然かもしれません。ユーザー全員が互いにユーザー名で認識できるようにするにはどうしたらいいのでしょうか。欧米人なら迷うことなくユーザー名にアルファベットの名前をそのまま使うこととなります。彼らの悩みはその先の同姓同名をどうするかということです。しかし日本人の私たちは、その前の問題があります。ローマ字をそのまま使えるか、社員番号などで一気に同姓同名のない記号にするか、はたまた掟やぶりの漢字にするかです。

ではノーツの設計者の気持ちはどうでしょう。これは明らかにアルファベットですぐに認識できる名前を望んでいたでしょう。ノーツの設計ではユーザー名が人の名前そのもので、システムからもユーザーからもこの名前でユーザーが識別されたり指定されたりするように作られているからです。ユーザーがユーザー名を使ったり識別したりする場面はそこらじゅうにあります。電子メールの宛先フィールドと差出人フィールド指定、宛先指定ダイアログボックス、ディスカッションや文書データベースの作成者や編集者フィールド、アプリケーションの責任者が使うデータベースのACL指定とかぎりがありません。

一方、普通のユーザーのことを考えれば日本人なら直感的にはローマ字より漢字などのほうが認識しやすいというのも一理あります。ノーツはユーザー名を漢字とすることを公式にサポートはしていませんので、そこで出てくるアイデアが漢字メール、漢字アドレス帳というものです。宛先から差出人、そして宛先選択まですべて漢字で指定できるように工夫されているアプリケーション群です。実際、いろいろなノーツビジネスパートナーからこれらのソリューションが提供されているようです。これによってユーザーはユーザー名を完全に隠して漢字名だけでメールや一部のアプリケーションが使えるようにもできるようです。一見、これで日本人固有の問題は片付いたかのように見えますが実はそうでもなさそうです。

漢字アドレス帳や漢字メールは、たしかにそれらのアプリケーションを社内で使う範囲ではその問題を解決してくれているようです。ただしその他のアプリケーションに関しては、ユーザーに同じ環境を提供するために、すべてこれらのアプリケーションのように漢字が表示できるように必ず作りこまなければならなくなります。ユーザーは一見楽になったように思えますが、実際にはそれらのアプリケーションがモバイル環境ですぐには使えなくなったり、アプリケーションを使うたびに漢字アドレス帳が引かれてレスポンスが遅くなったりする現象が避けられません。またACLの設定はアプリケーションではどうしようもありませんから、漢字名しか扱えないユーザーはセキュリティーの管理はできなくなります。一言で言えば、ユーザー名が人の名前そのもので作られているシステムで、もう一つの名前である漢字名を使うには、システムの構築、開発、運用にすべてコストが加わることを覚悟しなければなりません。

では本当に日本人はユーザー名をどうしても漢字にしなければならないのでしょうか。私の知るかなりの数のお客様でもユーザー名をローマ字にしてそのままメールでもアプリケーションでも使っているところがあります。そんな環境ではノーツの設計の意図どおりに全ての機能を使うことができます。ビュー上のクイック検索でユーザー名などを探すときも実に快適です。漢字では正しく知らない人でも音さえ知っていれば探せるというメリットもでてきます。あと残る観点はぱっと見で誰かわかるかどうかということくらいでしょうか。

またローマ字を使っているところでも漢字アドレス帳を利用しているところも多いようです。ただそれはどちらかというと、ユーザー名で認識される人がどんな組織にいて、どんな役職で、どんな漢字名なのかを知るためにあるようなもののようです。つまり漢字アドレス帳というよりユーザー台帳、ユーザーディレクトリーという性格です。

ある漢字アドレス帳のユーザーはユーザー名やメールはローマ字で使いながらも、アプリケーションによってはボタンを押せば漢字アドレス帳がひかれ自分の漢字名や組織の名前が入力しないで埋められたり、他の人の漢字情報が表示されるという仕組みにしているところもあります。これですとユーザーは基本的にノーツの設計どおりユーザー名などを使いながらも、LANで環境のよい場所では自ら選択して漢字アドレス帳の恩恵にひたることができるという訳です。ちょうど漢字アドレス帳でがちがちに漢字を使わせるという選択と、ノーツそのままの使い方の選択との中間に位置するようなうまい使い方のような気がします。

世の中ではすでにインターネットメールがかなり広がり、取引先のお客様にも短い英数字と記号だけの宛先でメールを打つことが多くなっています。実際ほとんどの人が自分のアドレス帳にいろいろな人のアドレスを登録して使っているのが現実です。いくら社内のやりとりが多いとは言え、メールに限ってはすべて漢字だけで扱えるのはもうすでに過去となりました。ローマ字での名前に慣れながらも、それを分かりやすくするための個人アドレス帳の使用や、程度をわきまえた漢字アドレス帳の使い方こそ、ユーザーの使い勝手を考えながらもコストが安いバランスのよいシステムの一つとなるような気がしています。

ローマ字でユーザー名を使っているあるお客様が言っていた言葉が印象的でした。『今時、会社で働いている社員の中でローマ字の教育をうけていない人はほとんどいません』。『パソコン教育でローマ字入力を覚えさせているのにそれを使わない手はないのではないですか』。

なおノーツの新しいR5ではユーザー別名という漢字の名前をユーザー名に直接対応して定義できる機能が増えました。ただいくら漢字が使えるとは言え、漢字名はソートして表示しても意味がありませんし、また別名が完全にユーザー名と同じように扱われるようにはまだなっていないようです。ユーザー名、ユーザー別名、そして漢字アドレス帳とまだまだその使い分けはどの程度がいいのか考える日々は続きそうです。

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