SE関のノーツ/ドミノ徒然草: 第10回 最も簡単で最も難しい電子メール

ノーツの典型的アプリケーションと言えば情報共有とワークフローのアプリケーション。ということで過去2回はそれらについてとりあげました。ところでもう1つノーツの典型的なアプリケーションを忘れていました。アプリケーションというとつい忘れがちですが、これもノーツの開発環境で作り上げられた、いわば出来合いのアプリケーションです。そうです電子メールです。

Lotus クライアント テクニカル プロフェッショナルズ, ソフトウェア事業, 日本アイ・ビー・エム株式会社

Lotus クライアント テクニカル プロフェッショナルズ, ソフトウェア事業, 日本アイ・ビー・エム株式会社



2006年 2月 01日

電子メールはほとんどの場合、開発をしないでそのまま利用します。つまりノーツを導入したらユーザーがすぐにその日から使える、とても情報システム部門にとってはありがたいアプリケーションとも言えます。つまり"最も簡単な"アプリケーションが電子メールだというわけです。でもどうもいろいろなお客様を訪ねると、そう一概に電子メールが簡単なアプリケーションだとはどうも言えません。多くの担当者が電子メールをめぐっていろいろ悩んでいるのです。今回はちょっとそれをご紹介しましょう。

『電子メールだと社長に直接メールが打ててしまう。なんとかこれを禁止する機能はないですか』。初めて電子メールを入れるお客様でよく聞かれる質問です。実際そのためにメールの設計を改造して、人事のデータベースと結び付けて、社長にはある職位以上でないとメールが打てなくしてしまっている会社もあるようです。また社長だけと言っていただけるお客様はまだよいほうで、場合によっては、『自分の上司以外の管理職にはメールを送れないようにしてくれ』というお客様まであります。

『電子メールは今までの書類のように上司の印鑑がなければ上に情報をあげられないということをなくして、社内での情報の伝達や共有を促進するためのものです。』という説明や、『米国のある有名な半導体の会社では、電子メール利用がたいへん進んでいて、日本から米国の社長の決済が必要な案件を、電子メールで送ると1日か2日で社長から直接返答があったりして、意思決定を大幅に迅速化している例はたいへん有名です』、などという説明は、それらのお客様の前では実にむなしく消えていきます。最後に言われるのは『うちでは無理だよ』とか、『文化が違う』とか、ここでも文化が顔を出します。

最近、大企業トップのパーティとかでは、『電子メールのアドレス持ってますか』などと結構自慢げに話す経営者達が目立つそうです。自社の情報化度の一種のバローメーターとしてお互いに自慢し合っているのでしょうが、社員といったいどれだけのメールやりとりしているのかを是非自慢してもらいたいものです。

さて電子メールと言えば世の中ではインターネットメールでしょう。ノーツとインターネットメールをつなぐことに関してもいろいろと相談を受けます。『社内の秘密が漏れるのでつなぎたくない』、というのを手始めに、『誰が誰にメールを送ったかだけでなく、全てのメールを保存したい』、そして挙げ句の果てには『不心得ものがいるかもしれないので、すべて簡単に検閲できるようにしたい』。ここまでいくと中学校の風紀委員や先生の持ち物検査、掲示板の検閲を思い出してしまうのは私だけでしょうか。

確かに電子メールによって社内の情報を外に漏らしたりする事件も起こっているようです。しかし会社間のやりとりは、コストやスピードからできるだけ電子的な方法で送れるものは送るというニーズが高まっています。ここでそれに逆行するようなことは果たしてできるのでしょうか。インターネットメールに限らず、WWWアクセスに関して、社員の倫理教育に力を入れているという会社も見受けられます。"検閲"に関して言えば、数年前ですが、米国で秘書達が上司の悪口を会社の資産である電子メールでやりとりしていることで、会社が秘書を解雇して、それに対する解雇無効と損害賠償を請求していた訴訟がありました。実はこの上司、なぜ秘書のやっていることが分かったかというと、電子メールを管理者の権限で検閲していたのです。結果はさすがに米国、個人のプライバシーが会社の資産価値に勝って、秘書の全面勝訴でした。果たして日本では個人と会社どっちが勝つのでしょう。

これまでは電子メール導入や接続に関する話でした。では導入後のユーザーからの声を聞いてみましょう。『電子メールを使い始めたけれど、管理職は一言二言の返事しか返せないし、逆に若年層は相手を非難して喧嘩になったりして、かえってコミュニケーションがうまくいっていないような気がする』、というのもよく聞く話です。たしかに年配の方はキーボードにも慣れていないのに、いきなり日本語入力を強いられていて負担となっているようです。お客様によっては管理職向けの定型文が選択してメールにできるメールアプリケーションを開発したりしているところもあります。ただこれも逆に日本語入力の練習の妨げになるのは言うまでもなく、実際部下の評判はよくないようです。

またメールでの喧嘩は実によく聞く話です。米国の研究者によると電子メールでは顔を合わせたやりとりより、3倍から4倍の感情的な意見が出やすいといった研究が90年頃されています。そんな背景もあってか、米国の書店では随分前から、メールのエチケットや効果的な文書の書き方などの本が随分売り出されてビジネス書のコーナーでたくさん並べられています。

こんな声も聞かれます。『電子メールは本当に会議の削減とかコミニケーションの改善に役に立つのでしょうか。電子メール導入後は実に会議のお知らせメールで増えて、実際は会議が増えているようですが』。それで私も自分の過去何年間かのメールボックスを見直してみました。実際、電子メール導入直後の人たちからは実に会議案内のメールが多いのです。また一部の特定の人たち(特に管理職が多いのですが)からは今でもメールのほとんどが会議案内や掲示板的なお知らせでした。

さきほど紹介した米国の半導体メーカーの話からは実に程遠い話です。考えてみれば国際的な企業では、そう簡単に互いが会議で会うことはできません。彼らは電話会議などももちろん使うようですが、最終的には記録の残る電子メール。電子メールで時間と場所を超えて意思決定、まさにこれが本当の意味での電子メールを入れる究極の目的だと思いませんか。私も10年くらい前、既に電子メール先進国の米国IBMの人たちと仕事をしたことが思い出されます。平社員の私が上司に出した状況に関するメールが、上司から米国のエグゼクティブに転送され、そのエグゼクティブから上司にcc:が入りながらも直接私に次のステップの指示が返答で返ってくる。たった1日か2日の出来事です。それ以降は私が上司にcc:を入れて直接そのエグゼクティブにメールを返すのが習慣となりました。

いかがでしょうか。恐らく皆さんの周りにも電子メールにまつわる似たような話がたくさんあることでしょう。他のアプリケーションは比較的、現在の業務の延長線上にありがちですが、電子メールはまさに新しいアプリケーションで"最も難しい"と言えるかもしれません。書類より書きやすくインフォーマルで、電話よりもっと自由な意見を言えて、かつ時間と場所に関係なく伝えられるコミニケーションのアプリケーションです。

電子メールというアプリケーションはほとんど既製品なのにもかかわらず、それを使うための会社の電子メールへの正式な文書としての考え方の定義、そしてそれを使うための個人への道徳的、倫理的、日常的な教育、これらがほとんどの会社でなされていないのが実態のようです。つまりアプリケーションはできていても、アプリケーション教育や運用の仕組みはできていないのです。この役割は情報システム部門にある、とはなかなか言い切れないかもしれません。ただそう言った検討や実施が必要であることを喚起して関連部門に実施を求めたりするのは、やはりそのアプリケーションを入れた情報システム部門に役割があるような気がしています。

あと数年後、日本の企業の新入社員教育で、社内文書の書き方ならぬ電子メールの書き方講座がどの会社にもあり、管理職は電子メールで色々な案件を決済するようになる日がきっとやってくることを願いたいものです。その時はきっと皆さんのメールボックスに会議通知がほとんどなくなっているときでしょう。

参考文献

コメント

developerWorks: サイン・イン

必須フィールドは(*)で示されます。


IBM ID が必要ですか?
IBM IDをお忘れですか?


パスワードをお忘れですか?
パスワードの変更

「送信する」をクリックすることにより、お客様は developerWorks のご使用条件に同意したことになります。 ご使用条件を読む

 


お客様が developerWorks に初めてサインインすると、お客様のプロフィールが作成されます。会社名を非表示とする選択を行わない限り、プロフィール内の情報(名前、国/地域や会社名)は公開され、投稿するコンテンツと一緒に表示されますが、いつでもこれらの情報を更新できます。

送信されたすべての情報は安全です。

ディスプレイ・ネームを選択してください



developerWorks に初めてサインインするとプロフィールが作成されますので、その際にディスプレイ・ネームを選択する必要があります。ディスプレイ・ネームは、お客様が developerWorks に投稿するコンテンツと一緒に表示されます。

ディスプレイ・ネームは、3文字から31文字の範囲で指定し、かつ developerWorks コミュニティーでユニークである必要があります。また、プライバシー上の理由でお客様の電子メール・アドレスは使用しないでください。

必須フィールドは(*)で示されます。

3文字から31文字の範囲で指定し

「送信する」をクリックすることにより、お客様は developerWorks のご使用条件に同意したことになります。 ご使用条件を読む

 


送信されたすべての情報は安全です。


static.content.url=http://www.ibm.com/developerworks/js/artrating/
SITE_ID=60
Zone=Lotus
ArticleID=339067
ArticleTitle=SE関のノーツ/ドミノ徒然草: 第10回 最も簡単で最も難しい電子メール
publish-date=02012006