SE関のノーツ/ドミノ徒然草: 第1回 ノーツの誕生

『良いソフトウェアには歴史がある』と感じるのは、私のみならず多くのプログラマーやSEの方も共通していることではないでしょうか。しかしながらノーツは意外とその歴史、特に誕生の歴史を知られていません。歴史を知ることは、そのソフトウェアの生いたちを知るだけでなく、さらにそのソフトウェアの発想の原点、さらにどう使うべきかというユーザーとしての大事な視点を教えてくれたりするものです。まずそのノーツの歴史について振り返ってみることにします。

Lotus クライアント テクニカル プロフェッショナルズ, ソフトウェア事業, 日本アイ・ビー・エム株式会社

Lotus クライアント テクニカル プロフェッショナルズ, ソフトウェア事業, 日本アイ・ビー・エム株式会社



2006年 1月 15日

ノーツは多くの人がご存知のように純粋にLotusの中で開発されたソフトウェアではありません。その誕生から現在まで、ノーツの本体はIris Associatesという小さなベンチャー企業(現在はLotusの100%子会社)によって開発されています。そのIrisの現社長であり、かつ創業者であるRay Ozzieがまさにノーツの父と言われている人です。ノーツのそのアイデアの源泉はRay Ozzieの20年以上前の学生時代にさかのぼります。

当時Ray Ozzieはイリノイ大学のコンピューターサイエンスの学生でした。当時はIBM360などの全盛時代で彼もコンピューターサイエンスの学生として、360用のパンチカードと格闘する日々を送っていたようです。しかし彼はそんな大学時代に、のちにノーツの誕生につながるたいへん印象深い経験を記憶しています。当時、彼のようなコンピューターサイエンスの学生でなくとも、イリノイ大学では化学、物理、言語、経済などを専攻する学生が、楽しそうに使っているミニコンのシステムがありました。そのシステムはPLATO(Programmed Logic for Automated Teaching Operations)と呼ばれたシステムです。PLATOは当時の一般のコンピューターシステムとは大変異なり、データ処理といったような用途ではなく、教育に使われたり、ゲームに使われたり、そして人と人とのコミュニケーションに使われていたのです。Ray Ozzie自身もそれを使って全米じゅうの大学の見知らぬ人とのコミュニケーションをしたことを感動とともに記憶しています。

Notesの歴史世の中は80年代に突入しPCの興隆がはじまります。Ray Ozzieはそんな中でPCの表計算ソフトであるVisiCalcの開発に加わっていました。しかし彼はそこで1つの大きな疑問を持ちます。『PCはこんなに一般の人にも使われるのに、何故PLATOのようにコミュニケーションに使えないのか?』。彼の頭には学生時代のPLATOの経験が鮮烈に焼き付いていたのです。そこで彼は同じような考えをもつ学生時代の友人Tim HalvorsenとLen Kawellとともに、PCの世界でPLATO以上のコミュニケーションの道具を作ることを決意します。その後あのLotusの創業者であるMitchell Kaporの絶大なる、思想的、資金的な支えをうけ、またLotusの元会長のJim Manziのビジネス的な支援もうけて、6年の歳月は1989年に遂にノーツを完成へと導きます。

このような経緯で完成したノーツですが、まずノーツのアイデアとして、Ray Ozzieは『人と人とのコミュニケーションをより魅力的に行うことのできるシステム、ビジネスの場面で言い換えれば、それぞれにカストマイズして使う共同作業のための情報共有システムを目標にしていた』と語っています。そこにはコミュニケーションと共有という言葉がキーワードとなっています。これらはその当時まではコンピューターにはあまりやらせていなかったことです。そこに過去の体験をベースにそれらの概念をPCに取り込もうとしたのがRay Ozzieと言えるでしょう。『コミュニケーション』『情報共有』『ビジネス共同作業』まさに現在グループウェアとよばれるエリアのソフトウェアが狙っている機能です。また彼の言葉に出てくるように、ノーツはビジネスで使えることを狙っています。実際6年間の開発期間のうち半分は、25社を超える実際のビジネスユーザーにノーツを使ってもらい、そのフィードバックによってあらゆる改善がなされました。数多くのそのユーザーは、ノーツを熱狂的に受け入れ、社内の自由になった情報の流れ、問題が解決していく様、疑問に対する答えの速さ、などの企業の文化の改革とでも言える変化を驚きととともに語っています。グループウェアの発想を20年前に体験し、それを10年前にPC上に実現したRay Ozzie。ノーツがいかに一本筋のとおったソフトウェアであるかを理解できるエピソードでしょう。

今までお手伝いしたお客様のシステムを振り返ってみます。あるシステムでは一般の社員と役員がノーツでコミュニケーションをはじめ、文化を変えようとしているものもあります。あるシステムでは埋もれていた社内文書が共有され、次第に価値を生みはじめたものもあります。ただ、あるシステムでは今までのコミュニケーションと同等にノーツを考え、今までできなかった役員などとのコミュニケーションを禁止するような方向にすすんだり、今まで以上の文書はいっさい公開しないように、また場合によっては、今まで以上に公開を妨げたりするようなものもあります。道具は使い方ひとつとでもいいましょうか。

『より魅力的なコミュニケーション』のためのシステムとして創り出されたノーツ。この道具はその素性から『コミュニケーション』や『情報共有』することを目的としたものです。道具を使うということは、今まで道具なしでやってきたことを、より速くしたり、より質を高めたりするのが目的です。ノーツという道具の場合は、より速くという側面より、今までになかったコミュニケーションや情報共有を生むための側面、つまり質を高めることがその目的でしょう。それを端的に表しているのがRay Ozzieの『より魅力的なコミュニケーション』のためのシステムという言葉でしょう。

若きRay Ozzieが感じ取ったコンピューターの新しい可能性。そこから始まった道具はやはりその原点の動機を忘れずに使っていきたいものです。

参考文献

コメント

developerWorks: サイン・イン

必須フィールドは(*)で示されます。


IBM ID が必要ですか?
IBM IDをお忘れですか?


パスワードをお忘れですか?
パスワードの変更

「送信する」をクリックすることにより、お客様は developerWorks のご使用条件に同意したことになります。 ご使用条件を読む

 


お客様が developerWorks に初めてサインインすると、お客様のプロフィールが作成されます。会社名を非表示とする選択を行わない限り、プロフィール内の情報(名前、国/地域や会社名)は公開され、投稿するコンテンツと一緒に表示されますが、いつでもこれらの情報を更新できます。

送信されたすべての情報は安全です。

ディスプレイ・ネームを選択してください



developerWorks に初めてサインインするとプロフィールが作成されますので、その際にディスプレイ・ネームを選択する必要があります。ディスプレイ・ネームは、お客様が developerWorks に投稿するコンテンツと一緒に表示されます。

ディスプレイ・ネームは、3文字から31文字の範囲で指定し、かつ developerWorks コミュニティーでユニークである必要があります。また、プライバシー上の理由でお客様の電子メール・アドレスは使用しないでください。

必須フィールドは(*)で示されます。

3文字から31文字の範囲で指定し

「送信する」をクリックすることにより、お客様は developerWorks のご使用条件に同意したことになります。 ご使用条件を読む

 


送信されたすべての情報は安全です。


static.content.url=http://www.ibm.com/developerworks/js/artrating/
SITE_ID=60
Zone=Lotus
ArticleID=339029
ArticleTitle=SE関のノーツ/ドミノ徒然草: 第1回 ノーツの誕生
publish-date=01152006