レベル: 初級 Jeff Orloff, Technology Coordinator/Consultant, PBCSD/Sequoia Media Services Inc.
2009年 5月 26日 グリーン IT は今日の技術トレンドの中で最もホットなものの 1 つであり、その課題に GNU/Linux® コミュニティーは積極的に取り組んでいます。GNU/Linux オペレーティング・システムは、数社の企業パートナーと共に、消費電力、二酸化炭素排出量、そして E-waste (電気電子機器廃棄物) の問題に対処するためのソリューションを提供しています。
この20 年間、個人や組織が使用するコンピューターの数が爆発的に増加した結果、環境に対して正と負の両面で大きな影響が出ています。環境面でのメリットとして、コンピューターによって多くの組織が「ペーパーレス」になり、コンテンツ配布を印刷ではなく電子的な方法で行うようになっています。またネットワークの進歩によって多くの人々が遠隔で働くことが容易になり、通勤や出張の必要性が低くなっています。
コンピューターを使うことによる環境面でのメリットにはさまざまなものがある一方で、これまでテクノロジーは環境に対して有害な影響を大量に及ぼしてきました。
E-waste (電気電子機器廃棄物)
Forrester Research の推計によると、2008年の時点で、世界では 10 億台を超えるコンピューターが使われています。使用されるコンピューターの台数は、ブラジル、ロシア、インド、中国などの新興市場における増加によって 2015年には 20 億台に達すると予想されています。コンピューターの寿命が平均 3 年であることを考えると、廃棄されるコンピューターの台数は年間 3 億台を超えます。
米国のゴミ廃棄場には 460 万トンもの E-waste が廃棄されていますが、このうち 50 パーセントから 80 パーセントは、中国、インド、メキシコのゴミ廃棄場に向けて輸出されています。バーゼル条約 (Basel Convention) など、さまざまな法律によって E-waste の不正輸出を防止する努力がなされていますが、膨大な電子廃棄物の山への対応はあまり前進しておらず、これらの廃棄物から出る有害物質で世界中の土壌や地下水が汚染されています。
そうした有害物とは、一体どのようなものなのでしょう。Basel Action Network (「参考文献」を参照) は危険な E-waste となりうる重要品目として、以下を挙げています。
- カドミウム、鉛、ベリリウムを含む回路基板
- ブラウン管 (CRT)
- ブラウン管のガラス (処理済み、および未処理)
- 鉛、水銀、カドミウムなどを含む電池 (可燃性または不燃性)
- 水銀、ベリリウム、PCB などを含む材料、部品、ランプ、機器
- 修理または再利用のために輸出される、動作しない部品または完成品または機器 (危険な電子廃棄物 (ブラウン管、電池、水銀灯、または回路基板) が廃棄されないという保証が輸入国に存在しない場合)
消費電力
膨大な量の E-waste の問題に加え、アイドル状態のコンピューターによる消費電力の問題があります。多くのユーザーはマシンをオンにしたまま使用せずに長期間放置することがあるため、こうしたコンピューターによってエネルギーを無駄にすることは、仕事をしている間中水道の蛇口を開けたまま放置しておくことと同じです。Reduce Your CO2 というサイトによると、アイドル状態にある世界中のコンピューターによって 60,000 メガワットの電力が消費され、その結果として年間 4,500 万トンの二酸化炭素が発生しています。比較のための目安として、原子力発電所 1 基の出力は約 1,000 メガワットです。
コンピューターは、アイドル状態での浪費に加え、(他の製品とは異なり) 製造の際には製品重量の 10 倍の化石燃料を使用し、また大量の水を使用します。自動車や冷蔵庫の場合には、製造の際に使用する化石燃料の重量は製品の重量とほとんど同じです。
1 つのソリューションとしてのGNU/Linux
米国の多くの州政府がコンピューター業界を「グリーン化」するための法律を作成してきましたが、こうした法律の強制は簡単ではありません。そうした法律に代わり、E-waste を削減し、資源の過剰使用を抑えるための最も有望な方法が、GNU/Linux コミュニティーから、そしてこの問題にGNU/Linux コミュニティーと協力して取り組もうとする企業から、いくつか提案されています。
GNU/Linux を利用することで廃棄物を削減する
E-waste の問題を解決する方法として、廃棄されるコンピューターの数を減らすことは容易なように思えます。ほとんどの組織が 3 年程度のサイクルでコンピューターを新しくしていますが、多くの家庭、学校、非営利組織では、そうして古くなってリサイクルされたコンピューターの恩恵を受けています。Free Geek (「参考文献」を参照) のような会社は、古いコンピューターを再整備して学校や慈善団体に寄付することで、約 500 トンのコンピューター関連のスクラップをリサイクルしてきました。これらのコンピューターを動作させるために、Free Geek はオペレーティング・システムとして GNU/Linux をインストールしています。Free Geek は単に彼らが FLOSS (Free、Libre、Open Source Software) プログラムをサポートするという理念から GNU/Linux を選んだわけではなく、GNU/Linux を選ぶ必然性もあったのです。GNU/Linux は理論的には表 1 に示すような最低限のハードウェアしか搭載していないコンピューターにもインストールすることができます。
表 1. GNU/Linux ディストリビューションの最小ハードウェア要件
| ディストリビューション | 最小ハードウェア要件 |
|---|
| Ubuntu |
- 300MHz の x86 プロセッサーまたは相当品
- 64MB の RAM
- 4GB 以上のディスク容量
- 640 x 480 の解像度に対応した VGA (Video Graphics Array) グラフィック・カード
- CD-ROM ドライブまたはネットワーク・アダプター
| | X ウィンドウ・システムを実行する DSL (Damn Small Linux) |
- Intel® Pentium® 200MHz プロセッサー
- 64MB の RAM
- 8x CD-ROM ドライブ
- 16 ビット・カラー対応のビデオ・カード
- 1.44MB フロッピーディスク・ドライブ (ブート・フロッピーが必要な場合)
- ホイール・マウス
| | Fedora 10 (グラフィカル・モード) |
- Pentium 400MHz プロセッサーまたは相当品
- 192MB の RAM
- 9GB 以上のディスク容量
- DVD ドライブ
| | Puppy Linux |
- Intel Pentium 166MMX プロセッサー
- 128MB の RAM
- 20x CD-ROM ドライブ
| | Zenwalk |
- Intel Pentium III プロセッサーまたは相当品
- 128MB の RAM
- 2GB 以上のディスク容量
|
GNU/Linux を実行するための最小要件を見ると、古いコンピューターならばどれでもリサイクルしたくなりますが、再整備プログラムで受け入れられないハードウェアもあります。Free Linux PC (「参考文献」を参照) の活動は Free Geek が行っている活動と似ており、コンピューターを必要とする人達にリサイクルしたコンピューターを提供していますが、Free Linux PC は彼らに寄付する場合の要件を設定しており、寄付されるすべてのコンピューターが特定の基準を必ず満たすことを要求しています。Free Geek は Free Linux PC の基準を満たさない古いコンピューターや部品を受け入れ、そうした E-waste が必ず、部品を安全に廃棄するリサイクル業者に送られるようにし、米国や海外のゴミ廃棄場に送られることがないようにしています。
古いコンピューターを寄付する場合の準備
GNU/Linux を使用するリサイクル・プログラムにコンピューターを寄付することを検討している組織であれば、このプログラムに参加することに大きなメリットがあります。税制面での優遇の他に、古いコンピューターをリサイクルする企業は、環境に優しくするという努力に対して好意的な報道を受けることができます。
しかしリサイクル・プログラムでは、適切にプロセスが行われないと、コンピューターの寄付は悲惨な結果になりかねません。コンピューターがリサイクル会社に送られるか、あるいは再整備されて寄付されるかにかかわわらず、廃棄されるすべてのコンピューターのハード・ディスクからすべてのデータが削除されるよう、充分に注意する必要があります。単純にデータを消去しても単にそのデータが表示されなくなるだけであり、決してハード・ディスクからデータが削除されるわけではありません。ディスクをフォーマットしても (それがローレベル・フォーマットであっても)、やはりデータはディスクから削除されません。コンピューターのディスクから何かを削除しても、それはオペレーティング・システムに対して、そのデータがあった場所が利用可能となり、そこに書き込むことができる、ということを伝えるにすぎません。消去、フォーマット、さらには上書きされたコンピューターのハード・ディスクから、誰でもデータを回復できる無料のプログラムはたくさんあるのです。
古いディスクからデータを回復するために使用できるプログラムはありますが、そうしたプログラムを使用してもデータを抽出できないことを確実に保証するプログラムも、それらと同じくらいの数あります。Center for Magnetic Recording Research では、米国の NIST (National Institute for Standards and Technology: 国立標準技術研究所) の標準に従ってデータをサニタイズする Secure Erase を提供しています。Secure Erase は Center for Magnetic Recording Research のサイトから無料でダウンロードすることができます (「参考文献」を参照)。
DBAN (Darik's Boot and Nuke) は GEEP (Global Electric Electronic Processing) 社が資金を提供しているプロジェクトです (「参考文献」を参照)。DBAN が提供するソフトウェアは無料でダウンロードすることができ、機密データを持つハード・ディスクをサニタイズすることができます。大企業の場合には、保証と免責の付いた有料の EBAN (「参考文献」を参照) を利用することができます。
仮想化
研究者達の予測によると、2010年には、サーバーを稼働するのに必要な電力のコストがサーバーを購入するコストを上回るとのことです。米国 EPA (Environmental Protection Agency: 環境保護庁) によると、米国内のデータ・センターのみで毎年 45 億キロワット時 (kWh) を消費しており、この数字が 2012年までに 2 倍になると予測されています。多くの概算で GNU/Linux サーバーがサーバー市場で 27 パーセントから 35 パーセントのシェアを占めていることを考えると (UNIX® を含めれば、さらに占める割合は増えます)、GNU/Linux をグリーン化すれば、GNU/Linux を使用することによって世界全体で消費されるエネルギーと排出される二酸化炭素の量を大幅に削減することができます。
多くの組織はデータ・センターの拡大を緩和するために、サーバー・ファームの増加を抑える手段として、メインフレームで使用されている「仮想化」と呼ばれる IBM の古い技術を真剣に検討し始めています。EPA の調査によると、一部のサーバーは最大 85 パーセントの時間アイドル状態にありながら、プロセッサーは相変わらず動作を続けています。言い換えれば、プロセッサーは常に、場合によると毎秒最大 1000 回も、仕事を探し続けています。プロセッサーは既にアクティブであるため、仮想化を行ってもパフォーマンスはそれほど影響を受けません。その結果、最近のデータ・センターでは仮想化が必須となっています。
消費電力を削減するための仮想化
GNU/Linux を実行するサーバーで仮想化を行うと、アイドル状態に置かれることで浪費される電力を大幅に削減することができます。1 台の物理マシン上に複数の仮想サーバーを組み合わせることにより、VM (仮想マシン) 1 台当たりの電力使用量を年間で推定 7000 kWh 削減することができます。また二酸化炭素排出量も、仮想的に実行されるサーバー当たり年間最大 4 トン削減することができます。物理サーバーによっては最大 30 台の仮想サーバーを収納できることを考慮すると、削減されるエネルギー使用量と二酸化炭素排出量は非常に大きなものになります。
これを不可能だと思う人は IBM の「Big Green Linux」構想を見てください。この構想では、GNU/Linux を実行する 30 台の IBM System z® メインフレームに 3,900 台のサーバーが集約され、年間エネルギー使用量を約 80 パーセント削減できると期待されています。この構想における取り組みとして、例えば IBM は同社の顧客に対して、集約と効率的なリソース利用によるエネルギー要件の削減手段として、IT (情報技術) サービスに Linux を採用するよう奨励しています。
E-waste を削減するための仮想化
GNU/Linux による仮想化戦略によって、サーバーの使用電力を削減できるだけではなく、製造されるコンピューターの数も減らすこともできます。製造されるサーバーの台数を減らすことができれば、製造中に使用される化石燃料と水の量も減らすことができます。それだけではなく、物理的なコンピューターの必要台数が減るため、仮想化は E-waste の削減にも寄与します。データ・センターに置かれるサーバーの台数が減るということは、廃棄されるハードウェアも減るということです。
消費電力管理のソリューション
データ・センターに仮想化が採用される傾向に合わせて、多くの企業が仮想マシンの消費電力管理に特化したソフトウェアを設計しています。VMware DPM (VMware Distributed Power Management)(「参考文献」を参照) は、必要ない場合にサーバーの電源をオフにすることで、さらに消費電力を削減します。また、現状よりも多くのリソースが必要になると、プールの中で利用できるサーバーの数を増加させます。消費電力管理はすべてリアルタイムで行われるため、サービス・レベルに悪影響を与えることはありません。
グリーン GNU/Linux とコミュニティー
これまでも現在も、GNU/Linux の大きな魅力は GNU/Linux をサポートするコミュニティーにあります。IBM や Red Hat などの企業パートナーによる取り組みと合わせるように、GNU/Linux コミュニティーは Green Linux Workgroup (「参考文献」を参照) をとおして、このオペレーティング・システムのグリーン化を大きく進めてきました。
ティックレス・カーネル
Green Linux Workgroup とそのパートナーによって開発された重要な事項の 1 つとして、ティックレス・カーネルがあります。先ほど触れたように、GNU/Linux カーネルはアイドル状態にある場合、常に何か仕事を探しています。カーネルは通常、約 4 ミリ秒ごとにタイマー割り込みをかけ、新しいタスクのスケジューリングが必要かどうかをチェックします。これに対し、カーネル 2.6.21 ではティックレス・カーネルが導入されています。このカーネルは、いつ新しいタスクをスケジューリングする必要があるかを計算し、その時刻にタイマー割り込みを設定します。これによって、プロセッサーはこれまでよりもはるかに長い期間 (何秒間か) 省電力状態を維持できるため、消費電力を減らすことができます。
ティックレス・カーネルはデフォルトで有効にされる場合が多いのですが、有効になっているかどうかは次のコマンドで確認することができます。
cat /boot/config-$(uname -r) | grep CONFIG_NO_HZ
|
出力が CONFIG_NO_HZ=y であればティックレス・カーネルが有効です。CONFIG_NO_HZ=n は無効であるということです。
消費電力を意識する
ティックレス・カーネルによってプロセッサーのスリープ状態を大幅に長くすることができますが、一部のイベントは相変わらず不必要にプロセッサーをスリープ状態からウェイクアップさせます。グリーンな GNU/Linux の世界 (LessWatts.org) に進出した Intel は、そうしたイベントを探し出す機能として PowerTOP の使用を奨励しています。PowerTOP は、何がプロセッサーをウェイクアップさせているかを特定するために Intel が設計したユーティリティーです (「参考文献」を参照)。
PowerTOP は無料でダウンロードすることができ、FLOSS の精神に従い、Linux カーネルで動作します。PowerTOP は Intel のプロセッサー専用ではないため、AMD のユーザーも、このユーティリティーを利用することができます。PowerTOP をインストールすると、端末から PowerTOP を実行して情報を得ることができます。得られる情報には、プロセッサーが C-state (スリープ状態) と P-state (プロセッサー周波数) を最長でどのくらいの期間維持しているか、ウェイクアップを引き起こした原因の上位何件か、などがあります。PowerTOP はウェイクアップ要因を分析した後、より効率を高めるための助言を表示します。
ハイバネーション
GNU/Linux で採用されている多くの省電力手法は主に、サーバー市場を対象にしています。その理由は、1 つには GNU/Linux がサーバー市場で最大のシェアを占めていることがあり、また 1 つにはサーバーの余分な電力消費を削減した方がデスクトップの余分な電力消費を削減するよりも効果が顕著であるということがあります。しかしサーバーをグリーン化した方が投資効果ははるかに高いとはいえ、GNU/Linux コミュニティーの中でグリーン化に積極的な人達は、デスクトップも無視していません。
ティックレス・カーネルと PowerTOP はどちらも GNU/Linux のデスクトップ・ディストリビューションにも利用できますが、一定期間アクティビティーがない場合にコンピューターがハイバネーション状態になるようにユーザーが設定することでも消費電力を削減することができます。大部分のディストリビューションでは、ハイバネーション・ユーティリティーがカーネルに組み込まれています。しかし GNOME や KDE (K Desktop Environment) などの GUI (Graphical User Interface) デスクトップ環境を使用する場合には、グラフィカル環境専用に作成された電力管理アプリケーションを使用した方が簡単です。
GNOME ユーザーの場合は (ディストリビューションの一部として既にバンドルされているのでなければ) GNOME Power Manager をインストールし、省電力用のオプションを構成することができます。使用していない場合にハード・ディスクの電源をオフにする、コンピューターがアイドル状態の場合にモニターの表示を暗くする、コンピューターをハイバネーション状態にする、あるいはディスプレイの表示を消す、といった設定は、端末を使って構成しなくても単純な GUI で行うことができます。KDE ユーザーの場合、KPowersave を使うことで、これと同様の設定を GNOME 同様の容易な方法で行うことができます。
まとめ
GNU/Linux や FLOSS のコミュニティー、そしてその企業パートナーによる進歩は、グリーン・コンピューティングのプラクティスにも続いています。この記事ではグリーンな GNU/Linux に貢献する重要なプロジェクトの一部しか説明できませんでしたが、これはより地球に優しい作業環境を構築するために行われていることのほんの一部でしかありません。
参考文献 学ぶために
製品や技術を入手するために
- PowerTOP をダウンロードし、皆さんの GNU/Linux マシンで省電力機能を試してみてください。
- コンピューターを寄付する前に、DBAN または EBAN をダウンロードしてデータをサニタイズしてください。
- コンピューターを寄付する前に、Center for Magnetic Recording Research の Secure Erase をダウンロードし、コンピューターから完全にデータを削除してください。
- developerWorks から直接ダウンロードできる IBM ソフトウェアの試用版を利用して、皆さんの次期 Linux 開発プロジェクトを構築してください。
議論するために
- My developerWorks community に参加してください。個人プロファイルとカスタムのホームページを利用することで、皆さんの関心事項に合わせて developerWorks をカスタマイズすることができ、また他の developerWorks ユーザーとやり取りすることができます。
著者について  | |  | Jeff Orloff はパームビーチ郡学区 (School District of Palm Beach County) の技術コーディネーターです。彼は Sequoia Media Services Inc. のコンサルタントでもあり、コラボレーションや情報共有のためにソーシャル・メディアをビジネスに実装する企業へのコンサルティングを専門にしています。現在は Packt Publishing から出版予定の『MediaWiki: A Beginner's Guide』を執筆中です。 |
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