レベル: 初級 ITmedia, Writer
2007年 04月 27日 インストールが楽になるように、と始まったディストリビューションですが、その開発/配布体制にも発展の流れがありました。ライセンスの話も整理しながら、ポイントをまとめていきましょう。
GPLライセンスと配布
Linuxカーネルは、GPLのライセンスで配布されているので、ユーザーは、
ということが可能です(図1)。
再配布の際は、有償で販売することも、無償で配布することもできます。通常はバイナリとソースが同時に配布されることが多いですが、バイナリだけを入手した場合は、有償もしくは無償で入手元からソース入手の手段を提供してもらえます。
なお、よくある勘違いは、GPLなら誰でもソースを無償で入手できる、ということです。例えば、あるメーカーがGPLのソフトウェアを搭載した製品を発売していたとしても、そのソースを要求できるのは、製品を購入したユーザーのみとなります。メーカーは、製品を購入していない他者に公開する義務を持ちません。また、製品を持っているユーザーが無償でソースを入手できるとも限りません。メーカーは無償でソースを提供する義務はなく、有償でも問題はないのです。以上の点には注意してください。
LinuxディストリビューションはGPLソフトウェアの集合体
Linuxディストリビューションは、前回の連載で触れたように、LinuxカーネルとGNUツールが主な構成要素です。また、たいていはそれに加え、数百、数千のソフトウェアが含まれています。コアとなるLinuxカーネルとGNUツールのライセンスはGPLなので、それぞれの再配布/改良は問題ありません。また多くのソフトウェアもGPL、もしくはオープンソースソフトウェアと呼べる自由なライセンスなので問題ありません。
図1 GPLソフトウェアの配布
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「無償で入手できる」と「再配布できる」は異なる
ただし、ディストリビューション全体の再配布となると一概に言えません。
1つの理由は、ディストリビューションがライセンスの複合物であるということです。無償で入手でき、使用できても、再配布できない、もしくは許可を取ったり契約を締結したりする必要があるソフトウェアが含まれていることがあります。例えば、無償で入手可能なJava2 SDKやAcrobat(Adobe)Reader日本語版は、無条件に再配布してはいけません。Java 2 SDKが雑誌に添付されていることがありますが、これは許諾を得て再配布しているのです。なお、Java2 Runtime Environmentは再配布可能です。
もう1つは、集合としての商標です。例えば、実質的に商標版と同じものが無償で公開されていて、それを他者が入手し、同名でメディアを販売することは商標の侵害に当たります。もちろん、許可を得れば販売は可能です。
少し前のことになるのですが、Red Hat Linux 8/9は、雑誌でのFTP公開版の再配布に契約と対価が必要でした。7以前は無償での配布が可能でしたが、米国で転売されたユーザーからのサポート問い合わせがあったことなどから、再配布に対して厳しくなったのです。FedoraCore登場以降は、Fedora Coreそのものがサポート商品でなく、Foundation管理の自由なディストリビューションでもあるので、再配布は自由に行えます。なお、オープンソースマガジンという雑誌でも商用版と同等のディストリビューションを配布しようと試みたことがありましたが、価格交渉がうまくいかず、実施には至りませんでした。
一方で、無許可の再配布を明示的に許可しているディストリビューションもあります。主にユーザー主体のプロジェクトのもので、Debian GNU/Linux、GentooLinux、そしてFedora Core、openSUSEなどです。
図2 ディストリビューションの再配布はすべてできるとは限らない
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ディストリビューションの開発・販売モデル
ディストリビューションの多くはオープンソースソフトウェアで構成されているため、すぐに誰でも真似ができてしまいます。そこから収益を得るためには集めて調整しただけでなく、何らかの付加価値が必要となります。
当初用いられていた形態は、図3のようなものです。商用ディストリビューターは、図3上のように、オープンソースソフトウェアの集合に商用ソフトウェアをあらかじめ同梱した状態でディストリビューションを整備し、インストールサポートを付加して、パッケージで流通させていました。日本語環境を整備するために、フォントとIM(入力ソフトウェア)が添付されることが一般的です。
その後、世界統一のグローバル開発や、商用ソフトウェアを抜いて公開版を作ることの手間を避けるなどの理由から、図3下のように、はじめから公開版として利用できるものを作成し、商用ソフトウェアはアドインするような形態が取られました。各種ソフトウェアの完成度が高まり、設定のノウハウが蓄積されたこともあり、商用ソフトウェアを後から導入しても、システム全体がうまく動作するようになったこともあります。なお、ユーザープロジェクトの自由なディストリビューションから商用版が作られる際も、図3下のようにアドインで行われることが多いです。
図3 一般的なディストリビューションの形態
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ディストリビューション開発でもオープン化へ
インターネットが普及し、情報の流通コストが限りなく0になった現在、情報サービス産業は大きく変わってきています。ソフトウェア開発も例外ではありません。物理的制約を受けるハードウェアが二次産業、ソフトウェア開発を三次産業と見ると、分かりやすい構造です。
オープンな開発形態の成功例として、LinuxカーネルやWebサーバApacheなどのアプリケーションがあります。それぞれの発展は、それぞれの作業量/複雑さ以上に、ユーザーからの要望/開発支援を迅速に得られたからでもあります。1998年にNetscapeCommunicatorのソースが公開されオープンな開発が試みられたのですが、当時うまくいかなかったのは、常時接続が普及しきっていない背景があったからでしょう。
LinuxカーネルやApacheがオープンソースのモデルで成功したように、ソフトウェアの集合であるディストリビューションも、多少の時間が掛かるにしても、その方向に進むのは自然のなりゆきです。イメージとしては図4のようになるだでしょう。より多様なものも、開発が進み、こなれてくることによって、真似されたり、勝手に利用されたりしてしまうと危惧するよりも、オープンにして発展の速度を上げた方が効率が良くなります。将来的には、ビジネスワークそのものもオープンソースの文化が取り入れられていくでしょう。
図4 水面が下がるように情報流通が敷居を下げ、開発・利用が進むほど目的がはっきりしてきて、泡が浮いてくるようにオープンソースモデルの適用範囲が広がる
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外部団体で開発し、商用化する方向へ
Red Hatは2002年に、Red Hat Linuxを無償のFedora Coreと、商用版のRed Hat Enterprise Linuxに分割しました。ユーザーからの協力を得てFedoraCoreで新機能の開発を行い、それをRed Hat Enterprise Linuxに反映させていくという流れです。Novellも2005年にopenSUSEプロジェクトを用意し、ユーザー開発者の取り込みを狙っています。
しかし、先行するFedora Coreでは一般の開発者があまり集まらず、Red Hatは2005年6月に、Fedora Foundationを設立してプロジェクトを自社から独立させることを発表しています。単なるプロジェクトの場合は、ディストリビューター内の開発が外部にも解放される状態だけですが、Foundation(財団)となることで、著作権管理なども移管する独立した存在になります(図5)。成功しているApacheやMozillaも、Foundationによるプロジェクトでの開発です。
図5 財団で開発し、製品化する
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サブスクリプション=定期購読
Red Hatは現在、サブスクリプション方式のライセンス形態を取っています。サブスクリプションとは、もともと寄付金や会費、雑誌などの定期購読を意味するものです。定期購読は一般に何らかの割引があり、サブスクリプションはお得感のあるイメージの良い言葉です。
IT業界でサブスクリプションというと、代表的なものは、マイクロソフトのMSDN
*など開発者向けの情報提供プログラムや、ソフトウェアの技術サポートです。この形態は従来からあり、Red Hatが特段珍しいわけではありません。保守/サポート/商用製品に対する一時対価としていたLinuxディストリビューション事業において、サブスクリプションのみを柱に置いたことがポイントなのです。ソフトウェア自体に実質的に対価を求めず、一定期間(通常1年)の間、アップデートなどのサポートが得られる権利を得るという形態です。
この形態によるモデルはいまのところうまく機能しており、今後は、ディストリビューション購入といえばサブスクリプション購入という形態が一般化、そして一般に認知されていく可能性は高いでしょう。
このページで出てきた専門用語
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MSDN
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Microsoft Developer Network。Windowsなどの技術情報、インストールメディアなどを入手できる。
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