レベル: 初級 木村 桂 (kimuc@jp.ibm.com), ソフトウェア事業, IBM
2007年 3月 30日 スーパー・カブロボ・コンテストは2006年末に第1回大会の表彰式が行われてから約3ヶ月経ちました。この間、最優秀ロボットに選ばれた10体のカブロボ達による実運用が始まるなど、株式投資の新しい実用方法に向けた未知の世界への一歩も踏み出しました。また2007年春には第2回スーパー・カブロボ・コンテストの開催が予定されており、更なる優秀な投資アルゴリズムの発掘が再スタートします。
IBM developerWorks では、この実運用に挑んでいるカブロボ開発者の皆さんにご協力をいただき、普段どのような生活されているのか?ロボット・トレーディングに対する想いなどをインタビュー形式で紹介させていただきます。
記念すべき第一回目には、第一回スーパー・カブロボ・コンテストにて IBM 特別賞を獲得された大阪府立大学大学院の長尾優さんにインタビューしました。長尾さんは最優秀ロボットの作者 10 名中、唯一の現役(修士)学生さんでもあります。私自身にとっても慣れないインタビューですが、ご覧ください。 このインタビューは 2007 年3月15日に実施しました。
なお、以下のインタビュー内の発言は個人の感想や考えであり、有効な投資戦略の推奨ではありません。投資判断は自己責任にてお願いします。
インタビュー
木村 まずは自己紹介をお願いします。
長尾 長尾 優(ながお まさる)、大阪府立大学大学院工学研究科 電気・情報系専攻知能情報工学分野でソフトウェアシステム研究グループという研究室に所属しています。
木村 修士課程に在籍中とのことですが、年度末のお忙しい中でインタビューに協力いただいてありがとうございます。
長尾 現在は就職活動が非常に忙しいです(涙)。いろいろやっているのですがまだまだ先は長いような気がしています。今の感じですとはやくて4月の後半ぐらいからは解放されるとうれしいといったところです。
長尾さん近影
木村 大学院ではどのような研究をされているのでしょうか?
長尾 エージェント技術をテーマに、シミュレーションと現実に適用した場合の両方で研究をしています。
具体的には、Web上から大量の株式情報を収集し、そのデータを計算機に処理しやすい形に整形してから、計算機上で 株式市場を再現します。そして再現した市場でエージェントに仮想取引をさせることで有効な戦略の生成、獲得を行います。
最終的には、戦略の生成部分に遺伝的プログラミングを用いることで環境の変化に最適な行動をするエージェントを作成したいと思っています。
木村 ・・・すいません、理解にちょっと時間がかかりました(苦笑)。本当にカブロボに近いことをテーマに研究されているんですね。私が偉そうにインタビューしている立場ではないような気もしてきました・・・ カブロボの実運用が始まりましたが、今の率直な感想を聞かせてください。
長尾 毎日どきどきしながら見ています(笑)。全体の株価が下がっている今(注 2007年3月15日時点のインタビューです)、空売りが真価を発揮しているようです。
木村 ちなみに私自身は株はカブロボ専門で実際に売買したことはないのですが、長尾さん自身の株式投資経験を聞いてもいいですか?
長尾 大学の学部に在籍していた頃から株式取引を始めたので丸2年になると思います。現在はまだ少額での現物取引しかしておらず、僕自身は空売りをした経験がありません。ですから空売りによってカブロボが好成績を収めているのは不思議な気分です。
木村 そろそろ核心を伺いたいのですが(笑)、差し支えのない範囲で入賞したロボットのポイントを教えていただけますか?
長尾 シンプルな逆張り戦略と短期売買を目標として実装を行いました。使用したテクニカル指標は移動平均だけです。
製作のポイントとしては、難しすぎるアルゴリズムよりも単純なもののほうが効果的かつ使用する上で安全だと考えた点と、リスクを抑えるには短期売買が有効であるという点です。
また、苦労したことは使用するパラメータをどうするかということです。値が少し変わるだけでアルゴリズムの性能が大きく異なってくるため、どの値を使用するかはかなり悩みました。
木村 かなりシンプルなロボットだった、ということですね?意外でした。 長尾さんは Java プログラムで参加されたのですよね?
長尾 はい。そのせいか、思わぬところでエラーが発生することもありました。
木村 長尾さんは大学院でもシステムトレーディングを研究されているようですが、長尾さん自身のシステムトレーディングに対する考えを教えてください。
長尾 システムによる株式の自動取引は現在の日本ではまだ一般的ではありません。ですが大きな可能性を秘めていると思います。
というのも僕個人に関してですが自分で売買するよりもはるかに作成したロボットのほうが優秀です。
木村 自分自身よりもロボットの方が優秀、というのは不思議だし、ちょっと悔しいけど、その一方でシステム・トレーディングの説得力も感じますね。
長尾 あと話は変わりますが空売りは重要なようです。株価が下がっているときにも儲けられるというのはいいものです。
木村 最後に、第2回大会へ参加を考えている皆さんにメッセージをいただけますか?
長尾 実は僕が第一回目の大会に参加したのは本当に大会の最後のあたりでした。
理由としては、大学が忙しくあまり大会にかけられる時間が取れなかったことと出場してもたぶん無理だろうと考えていたためです。
ですがとにかく出場してみようと思いたち参加した結果、こんなにも素晴らしい賞をいただくことができました。
僕と同じような考えで出場を諦めていた人は多かったと思います。ですがとにかく参加してみることに大きな意味があります。難しいアルゴリズムである必要は必ずしもありません。
なんでもいいというのは言い過ぎかもしれませんが、とにかくロボットを作って出場してみてください。そのロボットは想像以上の力を秘めていると思います。
木村 お忙しい中、ありがとうございました。
まとめ
いかがでしたか? 最近は大学内の勉強テーマとしてもシステム・トレーディングの研究が進んでいる、ということを思い知らされるインタビューでした。既知の手法に捕らわれない新しい考えを吹き込むことによって、次回大会以降でも学生の作るロボットは台風の目どころか大本命になってもおかしくない、そう感じました。
システムトレーディングに興味のある学生の皆さん、ご自身の技量を社会人プログラマーと競い合えるチャンスでもあります。(学業に支障のない範囲で)是非第2回大会に参加してみてください!
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