今やITインフラは「企業活動の道具」という立場から「社会インフラ」へと変貌しつつあります。世界中にコンピューター資源はあふれかえり、アプリケーションもあふれかえっています。アプリケーションはコンピューター資源を不安定に要求するため、大きな要求のあるシステムではピークにあわせて巨大なシステムを用意します。その巨大なシステムを効率よく稼働させることが、最大のコストパフォーマンスを実現する要件となります。

米持 幸寿, テクノロジー・エバンジェリスト, IBM

米持 幸寿の肖像写真1987年に日本アイ・ビー・エム入社。メインフレームOS、ミドルウェアの障害対応、障害解析ソフトウェアの開発、ワークフローシステム開発、オブジェクト指向開発、Web開発など経験。2000年より、ソフトウェアのテクノロジーエバンジェリストとして活動中。



2010年 4月 13日

こうしたIT環境において、ITシステムに対する負荷=ワークロードを適切に管理し、最適化することが求められています。バラバラに存在する多数のシステム、大きなワークロードを実行するために巨大化したシステム、こういった環境を効率よく運用していくために、クラスター構成、負荷分散、分散プログラミング、グリッド・コンピューティング、仮想化、クラウド・コンピューティングと、様々なアーキテクチャーの進化が起ってきました。本連載記事では、ワークロードの最適化をテーマに、様々な分野でのソリューションを鳥瞰します。

大規模トランザクションではコンポーネントの選択がカギ

ITシステムのワークロードに関する課題といえば、大規模トランザクション・システムを思い浮かべる方が大半ではないでしょうか?たった1台の強力なサーバーで大規模トランザクション・システムが構築されているという例はほとんどなく、たくさんのサーバーを様々な意味合いで並べて協調動作させることで大規模なシステムを実現するのが今日のトランザクション・システムの一般的な手法です。

大規模トランザクション・システムへの要求に応える方法はたくさんあります。たとえば、検索サーバーにワークロードがかかりやすく、レスポンスを維持したり向上したりするためにはWebSphereのキャッシングプロキシーDynaキャッシュなどのキャッシュシステムが有効です。アプリケーション・サービスのワークロードを達成するために、複数のサーバーに分散させるにはクラスタリング多層化 (EJBなどの) や分散トランザクション技術が有効です。規模がさらに大きくなれば、WebSphere eXtreme Scale を使って無限にスケールアウトすることもできます。ディスク・システムへのアクセスがボトルネックになるときは、SolidDB のようなオンメモリーDBにより劇的に改善することもできます。

ここで重要となってくるのは、やみくもに技術を統合して使うことではなく、必要に応じて組み合わせを選択することです。そのためには、確かな経験と実績にもとづいてアーキテクチャーの計画・設計を行えるパートナーが必要となるでしょう。


データ爆発への要求は変化してきている

この数年トランザクション量ではなくデータ量に注目しているIT分野が盛んになってきています。インターネット規模でキャッシュしたりインデクシングしたりする機能を実装すると、データ量は天文学的な量になります。このようなデータ保存に利用されるキー・バリュー・ストアは、複数のノードにデータを分散して保存・管理し、効率よく検索や分析処理ができるしくみです。WebSphere eXtreme Scale を使えば、超大規模分散環境でデータを保存し、MapReduceなどの技術を使って分散型で効率的に検索や集計などのデータ処理ができます。

旧来からあるRDBシステムのデータ容量も爆発的に増加しはじめています。そういったニーズに対して、DB2 pureScale は、無限に拡張可能なデータベース環境を提供します。

また今日、街角にある防犯カメラ、家庭にある多くのセンサー、モバイルデバイス、改札システムなどから送られてくる膨大なイベントをリアルタイムで処理しなければなりません。ビデオカメラのストリーミングデータを迅速に分析することにより、犯罪を発見したり、設備の異常を検出したりできます。InfoSphere Streams は、膨大な連続したデータ・ストリームを取り込んでフィルタリングや分析を行ったり関連付けたりするユーザー開発アプリケーションを、実行する環境およびサービス (ディスパッチャーやスケジューラー) を提供します。こういった、大量のデータの処理には、ワークロードの自動配分機能は欠かせないものとなります。

図 1.ストリームの解析
図 1.ストリームの解析

ITリソースは余っていて足りない

システムのサイロ化はコスト爆発の要因のひとつです。それは、システムリソースの余っているサーバーと、足りないサーバーとに偏りが生じたり、時間によって足りなかったり余ったりしている時間が発生したとき、柔軟にリソースが配分できないことに起因します。こういった問題を解決する方法として、仮想化は重要なテーマです。そして、IT資源の仮想化は、プロセッサーとストレージの両面で考える必要があるでしょう。

プロセッサーの仮想化は仮想計算機 (VM) の技術がその中核をなす技術です。プロセッサーを仮想化する場合、VMを導入しただけでは十分な効果を発揮できないかもしれません。

古いサーバーと仮想化可能な新しいサーバーと混在で管理しなくてはいけない場合もあります。IBM Systems Director を利用すれば、仮想化されているマシンと物理マシンを混合しても柔軟に管理することが可能です。プラットフォーム混在環境において、アプリケーションのワークロードを動的に管理し、最適化することは難しい課題です。IBMでは、すべてのサーバー・プラットフォームで仮想化と管理技術を提供しています。

WebSphere Virtual Enterprise では、メインフレーム、POWER、IAシステムの仮想化環境を幅広くサポートし、アプリケーション・インフラストラクチャーを仮想化し、ワークロードをアプリケーション・サーバー・リソースのプール内で動的に配置および移動できます。

仮想化された環境は共有ITリソースの会計を管理したり、プロビジョンなどの操作を自動化することでより高いコストパフォーマンスを実現できます。また、システムごとのワークロードによって自動的にリソースの配分を変更したりする必要があります。こういったプロセッサー負荷やストレージ容量の管理を自動化することで、より少ないリソースによって最大のワークロードを達成することができます。これが Tivoliソフトウェアが提供するサービス・マネジメント の考え方です。こうして適切に仮想化され管理されたITシステムは、企業のITコスト体質を大幅に改善できます。

また、ストレージを集めて仮想化しただけでは、適切なデータが適切な場所に正しく保管されないかもしれません。ストレージの仮想化では、ディスクアレイなどを仮想化するだけでなく、高速なディスクアレイ、テープや光ディスクなどオフラインの永続媒体も含めて仮想化することもできます。迅速に取り出したいデータは高速なストレージに、アクセス頻度の少ないデータは、安価なオフラインストレージに移動する必要があります。Tivoli のストレージ管理ソリューションを使えば、ストレージ全体を最適化することができます。


セルフサービスとリサイクルを実現するクラウド・コンピューティング

サービス・マネジメントをつきつめたシステム環境のひとつにクラウド・コンピューティングがあります。クラウド・コンピューティングでは、技術者、システム運用者、システム利用者に対し、リサイクル可能なITリソースを、セルフサービス型で提供します。IBM CloudBurst は、迅速にクラウド環境を構築できるプリビルドのハードウェアです。WebSphere CloudBurst アプライアンス を使えば、仮想化されたシステム環境に対して、迅速にWebアプリケーション環境のプロビジョニングを行うことができます。MCCSComputing On Demandなどのインフラストラクチャーサービス、LotusLiveMy developerWorks などのSaaSといったパブリッククラウドでは、性急に必要となるコンピューティング・リソースを迅速に利用し始められます。クラウド・コンピューティングを取り入れることで、ITワークロードを迅速に手に入れることができ、企業ビジネスに対する俊敏性を向上させられます。

図 2.プリビルドのクラウドシステム「IBM CloudBurst」
図 2.プリビルドのクラウドシステム「IBM CloudBurst」

このように、IBMソフトウェアを用途にあわせて組み合わせることで、ITシステムで最適なワークロードを実現できます。

参考文献

学ぶために

製品や技術を入手するために

  • WebSphere アプリケーション・インフラストラクチャー: 優れたセキュリティー機能を備え、標準化されたWebサービスなどの最新テクノロジーを基盤とする2つのアプリケーション環境により、お客様の主幹業務アプリケーションのために大容量のトランザクション処理を実現します。
  • WebSphere eXtreme Scale: 柔軟なスケーラビリティーと次世代クラウド環境の構築に不可欠な製品です。
  • インメモリー・データベース (solidDB): IBM solidDB は、超高速のデータ・アクセスと究極の可用性で世界的に有名です。その使用実績は、通信ネットワーク、エンタープライズ・アプリケーション、組込ソフトウェア、組込システムなど、合計 300 万を超えています。
  • DB2 pureScale: オンライン・トランザクションのデータ処理量が増加しても、容易に確実に拡張できます。
  • InfoSphere: IBM InfoSphere (インフォスフィア) software は、情報統合、マスター・データ管理、データウェアハウス、業種別データモデルの4つのセグメントで構成される製品ファミリーです。
  • InfoSphere Streams: IBM InfoSphere Streamsによって、大容量の変動する情報を継続的かつ非常に迅速に分析することが可能になり、ビジネス分析と意思決定を改善することができるようになります。
  • IBM Systems Director: 仮想化の複雑さを軽減してシンプルな管理を提供する、マルチシステム環境向けの次世代プラットフォーム管理です。
  • WebSphere Virtual Enterprise: WebSphere Virtual Enterpriseは、コスト削減につながるアプリケーション・インフラストラクチャー仮想化機能を提供します。
  • Tivoliソフトウェアが提供するサービス・マネジメント: IBM サービス・マネジメントは、仮想化環境を効果的に管理するために必要となる、可視化、コントロール、オートメーションを提供し、高品質のサービス・デリバリー、リスクの緩和、運用コストの削減を可能にします。
  • IBM CloudBurst: クラウド機能の開発とテストが綿密に行なわれた製品を用いて、お客様は、クラウド・コンピューティング・モデルをパイロット運用してその有用性を実証し、提供されるツールを用いてクラウド製品を実動環境へ展開できます。
  • WebSphere CloudBurst アプライアンス: WebSphere仮想イメージとパターンを管理する新しいハードウェア・アプライアンス製品です。プライベート・クラウドでアプリケーション環境を素早く簡単に構築し、それらを安全に展開および管理できます。
  • LotusLive: LotusLiveは、シームレスな“企業間コラボレーション”をクラウド型サービスとしてご提供。Webブラウザーによって、いつでも、どこからでも、Web会議や情報共有、Webメール&スケジューリングなどの機能が利用でき、「よりスマートな働き方」を実現します。

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Zone=Information Management, Tivoli (service management), WebSphere, Cloud computing
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ArticleTitle=ワークロードを最適化する: 第 1 回
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