仮想システム・パターンを使用してトポロジーを管理する

仮想システム・パターンには、何年にもわたるクラウド・インフラストラクチャー管理の専門知識が集結されています

仮想システム・パターンは、IBM PureApplication System 環境に不可欠の要素です。仮想システム・パターンによって、ユーザーはクラウド・ミドルウェア・トポロジーを迅速に構築し、管理することができます。それは、仮想システム・パターンがミドルウェア・トポロジーを記述し、そのトポロジーをクラウドに自動的に構成するためのツールを採用するからです。何年にもわたるインフラストラクチャー管理の経験とベスト・プラクティスが取り込まれた IBM PureApplication System の仮想システム・パターンには、さまざまなミドルウェア・イメージとランタイム構成に基づく再現可能なトポロジー定義がカプセル化されていて、ユーザーがデプロイ対象のミドルウェア全体を制御できるようになっています。この記事では、仮想システム・パターンと、エコシステムでのその位置付けを概説します。そして、仮想システム・パターンを構成するコンポーネントと機能について説明した後、仮想システム・パターンの基本的な作成方法と使用方法を紹介します。

Bobby McChesney, Advisory Software Engineer, IBM

Bobby McChesneyBobby McChesneyは、IBM Software Group の顧問ソフトウェア・エンジニアで、IBM に 23 年間勤務しています。現在は、アプリケーションと統合ミドルウェア、そして IBM Workload Deployer を重点に取り組んでいます。



Joseph Bohn, Senior Software Architect, IBM

Photo of Joe BohnJoseph Bohn は、IBM のシニア・ソフトウェア・アーキテクトです。現在は、テクニカル・エバンジェリストの役割を果たしています。テクニカル・エバンジェリストになる前は、Apache Aries や Apache Geronimo を含め、OSGi Alliance の仕様およびオープンソース・プロジェクトで IBM の代表を務めていました。さらにそれ以前は、IBM 内でアーキテクト、設計者、チーム・リーダー、開発者としての複数の製品分野に取り組み、Integrated Solutions Console、Tivoli Presentation Services、そして複数の Tivoli ソリューションをはじめ、さまざまな IBM 製品を扱ってきました。



James Kochuba, Support Staff Engineer, IBM

James Kochuba photoJames Kochuba は現在、WebSphere Application Server サポート・スタッフ・エンジニアを務める傍ら、IBM サポートを担当するテクニカル・チームのリーダーとして、WebSphere Extended Deployment と WebSphere Application Server を重点に取り組んでいます。この職務には、お客様の問題に焦点を当て、サポート・エンジニアやお客様などが問題の原因と特定して最終的に解決できるよう支援することも含まれます。



2012年 5月 17日

IBM PureSystems 製品ファミリーの導入は、クラウド・コンピューティングを新しいレベルへと引き上げます。IBM PureApplication System および IBM PureFlex System からなる IBM PureSystems は、エンタープライズ・レベルのクラウド環境を統合、デプロイ、保守するためのエキスパート・インテグレーテッド・クラウド・システムです。このシステムには、アプリケーション、サービス、ハードウェアだけでなく、ベスト・プラクティス・パターンという形で提供される専門知識までもが取り込まれています。

IBM PureApplication System アーキテクチャーは、以下の 3 つのワークロード・モデルをサポートします。この異なる 3 つのタイプのワークロードによって、クラウド・ソリューションを実現します。

  • ワークロード・プラットフォーム・サービスを介して仮想アプリケーション・パターンを使用するモデル。仮想アプリケーションとは、アプリケーションのコンポーネント、動作ポリシー、そしてこれらの間の関係を 1 つに集めたものです。このアプリケーション中心のワークロード定義を使用して、IBM PureApplication System はプロビジョニングに必要なインフラストラクチャーおよびミドルウェア・リソースを構成し、その仮想アプリケーションを継続的に管理します。
  • 仮想化されたミドルウェア・サービスを介して仮想システム・パターンを使用するモデル。仮想システム・パターンとは、特定のデプロイメント要件セットに対して再現されるトポロジーの論理的表現です。例えば、「WebSphere Application Server Cluster」パターンには、IBM Deployment Manager、1 つ以上のカスタム・ノード、IBM HTTP Server、そしてアプリケーションをトポロジーにインストールするための構成スクリプトが含まれます。仮想システム・パターンを使用して詳細なミドルウェア構成が明示的に定義されると、IBM PureApplication System がその定義されたシステムを忠実にプロビジョニングします。
  • 仮想化されたインフラストラクチャー・サービスを介して仮想アプライアンスを使用するモデル。仮想アプライアンスは、OVF (Open Virtualization Format) 形式のイメージにインストール済みの必要なミドルウェア要素とアプリケーション要素をはじめとする、事前に構成されたオペレーティング・システム環境からなる単一のサーバー・ワークロード・インスタンスを表します。

developerWorks コミュニティーでは、今後、これらの要素について説明するリソースを提供していく予定です。この記事では、上記に挙げた重要なコンポーネントのうち、仮想システム・パターンを話題に取り上げ、これが IT 専門家に与える影響を説明します。

全体像

基本的に、IBM PureApplication System はハードウェアとソフトウェアを統合することにより、仮想化されたワークロードとスケーラブルなインフラストラクチャーを組み合わせています。この統合には、データとラインタイムのミドルウェア・サポートに加え、これらのアクティビティーを効率化および加速化するデプロイメント機能と管理機能も組み込まれ、さらなる効率性の向上が実現されています。

仮想システム・パターンは、再現可能で、デプロイ可能、かつ共有可能なトポロジーを定義することで、システムのミドルウェア層に焦点を当てます。仮想システム・パターンの基礎となるビルディング・ブロックは、仮想イメージで提供されるパーツです。これらのパーツを構成パラメーター、スクリプト、アドオンと併せて複合パターンを作成し、そのパターンを 1 つの単位としてデプロイします。

ミドルウェア・アプリケーション環境を対象としたクラウド・ベースの手法について調べる場合、これらの手法が、デプロイメント時間の短縮、一貫性の強化、アジリティー (俊敏性) の促進といったメリットを持つことを期待するはずです。IBM Workload Deployer とその他の技術を基礎にして作成された IBM PureApplication System ソリューションは、クラウド・ミドルウェア環境を再現可能で迅速かつ効率的な方法でデプロイするという問題に対処します。

パターン・ベースの手法は、IBM PureApplication System の基盤です。この点については、仮想アプリケーション・パターンと仮想システム・パターンとで一貫しています。ユーザーはこのクラウド・アプライアンスを使用して、完全に構成されたアプリケーション環境を表すパターンを作成し、そのパターンをデプロイします。特定のアプリケーション環境を実際に使用する段階になったら、あとはパターンを選択してデプロイするだけです。IBM PureApplication System がそのパターンで表される環境を構成するさまざまな仮想マシンを自動的にデプロイ、構成、統合してくれるため、ものの数分でアプリケーション環境が完成します。


仮想システム・パターンの構成要素と機能

前に触れたように、仮想システム・パターン (別名、トポロジー・パターン) が表すのは、さまざまなミドルウェア仮想イメージおよびランタイム構成に応じて再現可能なトポロジーの定義です。仮想システム・パターンでは、デプロイ対象のミドルウェア・トポロジーを柔軟に制御することができます。

仮想システム・パターンの内部構造

図 1 に、カタログのコンポーネントから仮想システム・パターンを作成する仕組みの概要を示します。

図 1. カタログのコンポーネントから仮想システム・パターンが作成される仕組みを表す概略図
カタログのコンポーネントから仮想システム・パターンが作成される仕組みを表す概略図

1 つ以上の仮想イメージのパーツからなる仮想システムは、IBM PureApplication System の基本的なデプロイメント・モデルです。仮想システムは、仮想システム・パターンによって IBM PureApplication System 内で定義されます。仮想システム・パターンでは、トポロジーを実装するためにインストール、構成、および統合を行う 1 つ以上の仮想イメージを 1 つの単位としてプロビジョニングすることができます。

仮想システム・パターンは、単純に 1 つのサーバー製品のインスタンスにすることも、複数の製品と複数のノードからなる複雑なデプロイメントにすることも可能です。

IBM が提供する、ベスト・プラクティスとしての仮想システム・パターンは、アプライアンスに事前にロードされます。これらのパターンは、IBM が何年にもわたってお客様に協力し、最適な構成を学んできたなかで得た知識の集大成です。仮想システム・パターンは、IBM PureApplication System によってプロビジョニングされた後は、仮想システム・インスタンスと呼ばれます。

仮想システム・パターンをカスタマイズしたり、新しいパターンを作成したりするには、IBM PureApplication System ユーザー・インターフェースの Pattern Editor (パターン・エディター) を使用します。Pattern Editor (パターン・エディター) でのカスタマイズ作業は、(仮想イメージから抽出された) 構成要素、スクリプト・パッケージ、およびアドオンのパレットからドラッグ・アンド・ドロップできる、単純なインターフェースを使って行うことができます。

通常、仮想システム・パターンは、完全なアプリケーションに必要なプラットフォームを提供するための 1 つ、または連動する複数のミドルウェア要素で構成されます。例えば、WebSphere 構成を対象とした仮想システム・パターンには複数のパーツが含まれることになり、それぞれのパーツが仮想マシンを表します。仮想マシンには、Linux オペレーティング・システムと、事前にインストールされていて、アクティブにするために有効にされた WebSphere Application Server やその他のミドルウェア・ソフトウェアが組み込まれます。このパターンには、デプロイメント・マネージャー、複数のカスタム・ノード、DB2 データベース、および IBM HTTP Server が組み込まれる場合もあります。

仮想システム・パターンを使用する場合、ミドルウェア・トポロジーをより自由に制御することができますが、それと同時に、特定のアプリケーションの要求に応じてミドルウェアを構成する必要もあります。仮想システム・パターンにスクリプト・パッケージを追加することで、仮想システムのトポロジーに対するさらなるカスタマイズを自動的に行うことができます。そうしたスクリプト・パッケージの一例としては、WebSphere リソースの作成とアプリケーションのインストールを行うスクリプト・パッケージがあります。

仮想システム・パターンがデプロイされると、アプライアンスがトポロジーを作成し、コンポーネント間の関係 (カスタム・ノードをデプロイメント・マネージャーにフェデレートするなど) を構築し、ユーザーが提供するスクリプト・パッケージに応じてミドルウェアを構成します。システム管理者は、必要に応じてシステムにログインして追加のカスタマイズを行うことができます。ただし、ベスト・プラクティスとなっているのは、パターンに含まれるシステムの構成はすべて、イメージ・カスタマイズ、パラメーター、アドオン、および自動スクリプトを使って行うことです。それによって、常にクラウドにデプロイできるパターンを作成することができます。

高可用性および耐障害性の標準的な側面を統合する機能は、トポロジー内に含まれます。

仮想システム・パターンでは、アプリケーション環境に必要なミドルウェア構成のタイプを正確に定義すると、パターンがプライベート・クラウドにデプロイされるときに、IBM PureApplication System がその構成を正確にプロビジョニングします。

仮想システム・パターンのビルディング・ブロックについてはすでに触れましたが、もう少し詳しく検討しましょう。

ハイパーバイザー・エディション・イメージに含まれるパーツ

仮想システム・パターンの最も基本的なビルディング・ブロックは、ハイパーバイザー・エディション・イメージで提供されるパーツです。そこで当然、以下の質問が浮かんできます。

  • ハイパーバイザー・エディション・イメージとは何か?
  • パーツとは何か?

ハイパーバイザー・エディション・イメージとは何か?
一言で言うと、ハイパーバイザー・エディション・イメージとは、OVF (Open Virtualization Format) に従って OVA (Open Virtualization Archive) ファイルにパッケージ化された形のミドルウェア製品です。これらのハイパーバイザー・エディション・イメージは、IBM PureApplication System Application Services 内の仮想イメージ・カタログにインポートされています。

ハイパーバイザー・エディション・イメージは、オペレーティング・システム (通常は Linux) と併せて、事前インストールおよび事前構成が行われたミドルウェア製品 (WebSphere Application Server など) からなり、仮想環境専用に設計されています。一例として、WebSphere Application Server の場合、一般にオペレーティング・システムとしての仮想イメージ、WebSphere Application Server および IBM HTTP Server バイナリー、そして WebSphere Application Server プロファイルの構成を「特殊なソース」で味付けして表現します。

図 2. ハイパーバイザー・エディション・イメージの概要
ハイパーバイザー・エディション・イメージの概要

特殊なソースとは何かと言うと、それは WebSphere Application Server を仮想環境に合わせて最適化するためにイメージに組み込まれたコードとチューニングの組み合わせです。

ハイパーバイザー・エディション・イメージには、以下の主要な要素があります。

  • 事前インストールおよび事前構成が行われたイメージ
  • イメージ固有のチューニング
  • デプロイ時の高速アクティベーション機能

事前インストールという言葉が意味するのは、要素、オペレーティング・システム、ミドルウェア、ミドルウェアの依存関係、およびフィーチャー・パックのすべて、そしてこのすべての要素に必要な保守があらかじめイメージにインストールされるということです。ミドルウェアやオペレーティング・システムをインストールしたり、インストールのためのスクリプトを開発したりする必要はありません。ハイパーバイザー・エディション・イメージを使えば、そのすべてが自動的に処理されます。

ミドルウェアとその下層にあるオペレーティング・システムは、両方とも IBM が事前にインストールするため、イメージはベスト・プラクティスに従って、仮想環境で最適なパフォーマンスとなるようにチューニングされています。さらに、前もってインストールと最適化が行われていることから、イメージを極めて短時間でデプロイすることができます。デプロイ中に必要な作業は、構成を微調整してアクティベーション・ロジックを実行することだけです。また、保守作業も単純化されています。それは、完全なソリューションのために完全にインストールされたイメージとして、保守を利用できるようになっているためです。

パーツとは何か?
ミドルウェアの要素は、ハイパーバイザー・イメージにパーツとして提供されています。例えば、WebSphere Application Server ハイパーバイザー・エディション・イメージには、デプロイメント・マネージャー、カスタム・ノード、スタンドアロン・ノード、ジョブ・マネージャーなどのパーツがあります。これらの共通プロファイルはイメージに事前に構成されていることから、スクリプトによって後からプロファイルを作成する従来のデプロイメント・プロセスに比べ、デプロイメントの時間が大幅に短縮されます。

特定の目的に合わせた詳細なミドルウェアの構成とプロビジョニングは、アクティベーション・エージェントによって処理されます。事前にインストール、構成、チューニングされることも素晴らしい点ですが、ハイパーバイザー・エディション・イメージの真の「隠し味」はアクティベーションであると考えられます。

WebSphereでは、アクティベーション機能によって、この 1 つのイメージが最初の起動時にさまざまな WebSphere Application Server の構成に変換されます。そのため、1 つのテンプレート・イメージをコピーして、別の WebSphere Application Server 環境を極めて迅速にプロビジョニングするために簡単に再構成することができます。これを可能にしているのは、イメージに組み込まれたアクティベーション・コードです。このアクティベーション・コードが入力パラメーターを読み取り、これらのパラメーターを事前構成された各種プロファイルにマッピングして再構成を行います。

具体的に説明すると、アクティベーション中に、イメージ内の再構成スクリプトが新しいネットワーク設定 (IP アドレス、ホスト名、パスワードなど) を注入し、WebSphere Application Server パラメーター (セル名、ノード名など) を再構成し、サーバー・タイプに応じた WebSphere Application Server プロファイルを起動します。OS と WebSphere Application Server のプロファイル両方の構成メタデータが置換あるいは注入されることで、相当な時間の節約になります。このアクティベーションにより、イメージはすぐに新しいネットワーク設定、パスワード、WebSphere Application Server のカスタマイズを前提とし、それに合わせてデプロイメント・マネージャーからカスタム・ノード、そしてジョブ・マネージャーに至るまでの構成要素を調整することができます。

パーツは、すべての仮想システム・パターンに共通する主要なビルディング・ブロックです。その一方、詳細なカスタマイズをサポートするために必要な仮想システム・パターンの基本要素は他にあります。それは、スクリプト・パッケージとアドオンです。

スクリプト・パッケージ
IBM PureApplication System 仮想システム・パターンでは、スクリプト・パッケージがミドルウェアの構成をカスタマイズする手段となります。カスタマイズとは、アプリケーションのインストール、アプリケーション依存関係の構成、あるいはミドルウェア層のチューニングを意味する場合があります。

スクリプト・パッケージは基本的に ZIP ファイルで、このファイルには実行可能ファイル (シェル・スクリプト、wsadmin スクリプト、Java プログラムなど) と、スクリプトの実行をサポートする成果物がオプションで含まれます。お気付きのとおり、スクリプトに唯一の必須フォーマットというものはありません。従来のデプロイメントで使用しているスクリプトの多くを再利用できることがわかるはずです

スクリプト・パッケージを使用すれば、スクリプト・パッケージが本来意図するとおり、ユーザーはほとんどどんなことでも実現できるため、必要に応じて柔軟で創造的になることができます。スクリプトはパラメーター化できることから、デプロイ時の構成を指定することができます。そのため、共通のスクリプトをさまざまなパーツにさまざまな目的で適用することができます。スクリプトは IBM PureApplication System スクリプト・カタログにインポートされてから、仮想システム・パターンに含まれるパーツに関連付けられるようになります。

アドオン
アドオンは、仮想マシンの構成をカスタマイズするために特化されたスクリプトです。アドオンを使うことで、イメージの構成を変更して新しい構成として保存しなくても、デプロイメント中に仮想マシンの構成を変更することができます。アドオンは、仮想マシンのハードウェアおよび OS の構成を増補する手段として使用することができます。

アドオンは、OS 構成の詳細を変更する作業を大幅に単純化します。例えば、「Add disk (ディスク追加)」アドオンの場合、「Pattern Editor (パターン・エディター)」のパレットからこのアドオンを該当するパーツにドラッグ・アンド・ドロップするだけで、パラメーターを構成することができます。

アドオンの使い方は、カスタム・スクリプトと同様です。つまり、必要に応じて、アドオンを作成してアプライアンスのカタログ内に複製し、それから仮想システムの Pattern Editor (パターン・エディター) でアドオンをパーツにドラッグします。主な違いは、アドオンはカスタム・スクリプトの前に実行され、そのターゲットは仮想マシンの構成であることです。

アドオンはスクリプトと似ている一方、この 2 つには大きな違いがあります。まず、アドオンはカスタム・スクリプトと一緒には記載されません。カタログ内には、アドオン固有のカテゴリーがあります。次に、アドオンは、デプロイ時にパーツに対してカスタム・スクリプトが実行される前に実行されます。カスタム・スクリプトとは異なり、パーツでのアドオンの実行順序を指定することはできません。アドオンはシステムの作成中にのみ実行されます。つまり、オンデマンドでアドオンを開始することはできないということです。アドオンはデプロイ時に、ハイパーバイザー・レベルの API を使用して仮想マシン内に新しいハードウェアを構成します。

仮想システム・パターンを編集するためのビューとパーツ

以上の要素から作成された仮想システム・パターンについて、もう少し説明しておきます。IBM PureApplication System には多数の定義済み仮想システム・パターンが含まれています。これらの定義済み仮想システム・パターンは、IBM が何年にもわたってお客様と協力してきた経験から得たベスト・プラクティスを形にしたものです。これらのパターンは、単純なものから複雑なものに至るまでの WebSphere 環境の一般的な構成、Enterprise から Express までの各種 DB2 構成、そして WebSphere Portal、WebSphere Message Broker、WebSphere MQ の他、多数の共通トポロジーを表します。

定義済みパターンが要求を完全に満たす場合、そのパターンを一切変更せずにそのままデプロイすることができます。けれども、それよりも可能性として高いのは、パターンを複製して拡張する必要がある場合や、独自のカスタム・パターンを一から作成しなければならない場合です。そこで、仮想システム・パターンを編集および作成するメカニズムについて説明しておきます。

図 3. 「Virtual System Patterns (仮想システム・パターン)」ビュー
「Virtual System Patterns (仮想システム・パターン)」ビュー

「Patterns (パターン)」ウィンドウ
「Patterns (パターン)」ウィンドウで編集対象の仮想システム・パターンを選択すると、その仮想システム・パターンに関する詳細情報が表示されます。「Patterns (パターン)」ウィンドウの右側のパネルには、パターンのトポロジーを表示するビューが配置されています。

仮想システム・パターンのトポロジーは、編集用にグラフィックで表されます。編集キャンバスに仮想イメージのパーツ、アドオン、スクリプト・パッケージをドロップすることで、トポロジーを定義するパーツ間の関係を作成したり、変更したりすることができます。その作業はすべて、Pattern Editor (パターン・エディター) で行います。

「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウ
「Patterns (パターン)」ウィンドウの右上にあるパネルで編集アイコンをクリックすると、選択した仮想システム・パターンの「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウが開きます。「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウには、仮想イメージのパーツ、アドオン、スクリプト・パッケージの選択リストが表示されます。

図 4. 「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウに表示された仮想システム・パターン
「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウに表示された仮想システム・パターン

仮想イメージのパーツ
「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウの「Parts (パーツ)」リストを選択すると、仮想システム・パターンのキャンバスにドロップすることができるパーツのリストが表示されます。仮想システム・パターンのキャンバスは、「Patterns (パターン)」ウィンドウの右側のパネルにあります。仮想イメージの共通パーツには、以下のものがあります。

  • 管理エージェント
  • カスタム・ノード
  • デプロイメント・マネージャー
  • HTTP サーバー
  • ジョブ・マネージャー
  • スタンドアロン・サーバー
  • オンデマンド・ルーター
  • DB2 サーバー
  • その他多数

使用している仮想イメージによって、パーツは異なります。仮想イメージのパーツには、複数のインスタンスを表すものもあります。その場合には、編集キャンバスに各パーツのインスタンスの数を示すバッジが表示されます。

パーツのプロパティーは、仮想システム・パターンをデプロイするときに構成することも、Pattern Editor (パターン・エディター) に配置したパーツから直接構成することもできます。パーツをデプロイする前に構成するには、編集キャンバスで、該当するパーツの「Edit Properties (プロパティーの編集)」アイコンをクリックします。デプロイメント中にプロパティーを変更できないようにするには、そのプロパティーをロックしてください。

スクリプト・パッケージ
「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウの「Scripts (スクリプト)」リストには、仮想イメージのパーツ上にドロップすることが可能なスクリプト・パッケージのリストが表示されます。このリストには、使用している仮想イメージに関連付けられたスクリプト・パッケージと、IBM PureApplication System で使用するために定義したスクリプト・パッケージが表示されます。

アドオン
編集キャンバスでは、パーツに共通アドオンを追加することができます。例えば以下の共通アドオンがあります。

  • デフォルト・ディスク追加: 仮想ディスクを仮想マシンに追加し、オプションでディスクのフォーマットおよびマウントを行います。
  • デフォルト NIC 追加: 仮想ネットワーク・インターフェース・コントローラー (仮想 NIC) を仮想マシンに追加し、その IP アドレス情報を構成して NIC を起動します。
  • デフォルト・ユーザー追加: 仮想マシンに追加のユーザーを定義します。
  • デフォルト・ロー・ディスク追加: 仮想ディスクを仮想マシンに追加しますが、ディスクのフォーマットおよびマウントは行いません。

アドオンのカスタマイズ・バージョンを作成してカタログに追加し、特定の必要を満たすために選択できるようにすることも可能です。アドオンは一から作成することも、デフォルトのセットに含まれるアドオンを複製して変更することもできます。

仮想イメージのパーツ間の相互作用
仮想イメージのパーツは、他の仮想イメージのパーツと相互作用するように定義することができます。1 つの仮想システム・パターンに相互に作用する複数の仮想イメージ・パーツを組み込むと、多重構成という結果になります。例えば、カスタム・ノードとデプロイメント・マネージャーを同じ仮想システム・パターンに配置した場合、この 2 つは自動的に多重構成されます。その結果、カスタム・ノードはデプロイメント・マネージャーにフェデレートされることになります。同様に、管理エージェント (またはデプロイメント・マネージャー) は、ジョブ・マネージャーに登録されます。

仮想イメージ・パーツを多重構成できるのは、仮想システムの Pattern Editor (パターン・エディター) が一意の関係を判断することができる場合です。それが不可能な場合、多重構成は行われません。例えば、カスタム・ノードを 2 つのデプロイメント・マネージャーを持つ仮想システム・パターンに追加した場合には、フェデレートは行われません。ただし、後で一方のデプロイメント・マネージャーが削除されると、一意の関係が存在することになるため、多重構成が行われます。

パーツがカタログ内の同じバージョンの仮想イメージを参照していることを確実にするには、パーツでバージョン・インジケーターを使用することができます。パーツのバージョンが誤っている場合には、編集キャンバス上のパーツでバージョンを変更することができます。パーツの名前をマウスでホバリングすると、ウィンドウが開き、その仮想イメージに関する追加情報が表示されます。


仮想システム・パターンを作成する

仮想システム・パターンは、一から作成することも、既存の仮想システム・パターンを複製することによって作成することもできます。

後からカスタマイズできる仮想システム・パターンを複製する

まず、要求に最もよく合う既存のパターンを選択します (IBM Workload Deployer のパターンを参照してください)。

続いて、複製するためのボタンをクリックして、パターンの名前を変更すれば、その複製を「Pattern Editor (パターン・エディター)」ウィンドウでカスタマイズすることができます。カスタマイズは、パーツの追加/削除/編集、スクリプト・パッケージまたはアドオンの追加/削除、パーツのプロパティーの構成、スクリプト・パッケージのパラメーターの構成、パーツの起動順序の設定など、さまざまな操作を実行することで行います。

この手順についての詳細は、「既存仮想システム・パターンの複製」を参照してください。

仮想システム・パターンを一から作成する

驚くことに、仮想システム・パターンを一から作成するのは、仮想システム・パターンを複製して作成する場合と同じくらいに簡単です。一から作成する場合には、新しいパターンの追加が最初のステップとなります。その後の手順は、仮想システム・パターンを複製する場合と同じです。

この手順についての詳細は、「仮想システム・パターンの作成」を参照してください。

できる限り、定義済み仮想システム・パターンを再利用するか、定義済み仮想システム・パターンを出発点として使用してください。そうすることで、かなりの時間を節約することができます。また、定義済み仮想システム・パターンをカスタマイズする必要がなければ、カスタム・バージョンのパターンを保守する必要もなくなります。


仮想システム・パターンを使用する

皆さんは今、「どのような場合に、IBM PureApplication System の仮想アプリケーション・パターンではなく、仮想システム・パターンを使用したほうが適切なのか」を考えていることでしょう。その答えを明らかにするために、ここではこの問題についてもっと詳しく検討してみましょう。

本質的に、仮想システム・パターンと仮想アプリケーション・パターンは、どちらもクラウドにデプロイするための仮想アプリケーションのモデルを表すという点で似ています。クラウドのコンテキストで言うパターンとは、クラウドに環境をデプロイして管理する作業を大幅に簡易化する、インストール、構成、統合作業のカプセル化を意味します。最終的にどのタイプのパターンを使用するかに関わらず、潜在的に複雑なミドルウェア・インフラストラクチャー環境あるいはミドルウェア・アプリケーションを、その作成、デプロイ、管理のライフサイクル全体を通して 1 つのアトミック単位として扱うことにはメリットがあります。

まずは、仮想アプリケーション・パターンと仮想システム・パターンのデプロイメントの違いを理解するために、クラウドの一連のトレードオフについて検討しましょう (ここでも、IBM Workload Deployer を使用しています。その理由は、これは IBM PureApplication System の前身となった技術であり、豊富なデータがあること、そして私たちは IBM Workload Deployer の使用経験を積んでいるためです)。

図 5. クラウドのトレードオフを示すグラフ
クラウドのトレードオフを示すグラフ
  • X 軸は、最終的な環境のカスタマイズに対して、ユーザーがどれだけの制御レベルを持てるのかを表します。制御レベルは、X 軸を左から右へ行くにつれて低くなります。
  • 左側の Y 軸は総保有コスト (TCO) を表し、Y 軸を下から上に行くにつれてコストが下がります。
  • 右側の Y 軸は価値を生み出すまでの時間を表し、同じく Y 軸を下から上に行くにつれて時間が短くなります。

当然、企業は Y 軸を上に進むことを目指しますが、それと引き換えに制御を手放すこと (X 軸を右に行くこと) に消極的なこともあります。

この図で示しているのは、2 つのパターン・ベースの手法についてさらに検討を始める際の基準点です。

仮想システム・パターンを使用するシナリオ

クラウドにデプロイしようとしている Web サービス・アプリケーションが、かなり単純なものであるとします。仮想システム・パターンを使用して、このアプリケーションをクラウドにデプロイするとしたら、その作業はおそらく、WebSphere Application Server Hypervisor Edition イメージのパーツを使ってトポロジーをレイアウトするところから始まります。これらのパーツには、デプロイメント・マネージャー、2 つのカスタム・ノード、そして Web サーバーが考えられます。

トポロジーを確立した後、カスタム・スクリプト・パッケージを追加して Web サービス・アプリケーションをインストールし、それからアプリケーションが依存するリソースを構成します。仮想システム・パターンをデプロイすることにしたユーザーは、仮想システム・パターンにアクセスし、構成の詳細 (WebSphere Application Server のセル名、ノード名、仮想リソースの割り当て、カスタム・スクリプトのパラメーターなど) を指定した上で、パターンをデプロイすることになります。

デプロイメントが完了すると、ユーザーは普段と同じように、この環境とミドルウェア・インフラストラクチャーにアクセスできるようになります。つまり、管理スクリプトを実行したり、デプロイされたミドルウェア・ソフトウェアが提供する管理コンソールにアクセスしたり、通常実行する必要がある構成操作を行ったりすることができます。

上記と同じシナリオで、仮想アプリケーション・パターンを使用する

上記と同じ Web サービス・アプリケーションをサポートするために仮想アプリケーション・パターンを使用する場合、デプロイメントの点でも、管理の点でも、まったく異なるものになってきます。

仮想アプリケーション・パターンの手法を使用する場合には、ユーザーはまず、アプリケーションのタイプに応じた適切な仮想アプリケーション・パターン・タイプを選択するところから始めます。この場合、Web アプリケーション用の「IBM Workload Deployer」パターンなど、IBM が提供するパターン・タイプを選択することも、アプライアンスに組み込まれた拡張メカニズムを使ってユーザーがパターンを作成することもできます。

適切なパターンを選択した後、ユーザーは Web アプリケーションを提供し、そのアプリケーションの機能要件と非機能要件をポリシーによって定義してからデプロイします。

ミドルウェア・インフラストラクチャー、そしてアプリケーション自体をインストール、構成、統合するために必要な情報は、仮想アプリケーション・パターンと IBM PureApplication System が提供します。デプロイメントが完了すると、ユーザーは PureApplication System が提供する極めて単純化されたレンズを通して最終的なアプリケーション環境を管理します。このレンズの内側では、PureApplication System がアプリケーションに適切なコンテキストで環境を監視し、継続的に管理します。

つまり、一般に管理コンソールはなく、ユーザーが変更できるのは明確に定義された環境の側面だけです。これは、ミドルウェア・アプリケーションのデプロイメントと管理の考え方における大々的な転換です。

どちらを使用するべきか

以上のシナリオの要点をまとめると、仮想システム・パターンを使用してソフトウェアをデプロイする場合、その環境を管理する方法は、今までその特定のソフトウェアを管理してきた方法とほとんど変わりません (通常は、管理コンソールを使用します)。仮想システム・パターンを使用するユーザーは、ソフトウェアの操作や管理方法の変更に気を取られることなく、主にそのソフトウェアを実現する方法の改善に取り組むことになります。

仮想アプリケーション・パターンの場合には、環境に関するすべての側面が抜本的に変わります。ユーザーが扱っているのは、高度に最適化および自動化されたソリューションです。高可用性や、変化する条件への動的対応などを管理する作業は、そのパターン・タイプのソリューションに組み込まれます。したがって、ユーザーに必要な作業は、ビジネス・レベルの要件を指定することだけとなります。環境の管理および運用は、完全に IBM PureApplication System ユーザー・インターフェースに統合されています。このように、あらゆるものが統合され、特定のアプリケーション・タイプに応じて高度に特化されます。

仮想システム・パターンと仮想アプリケーション・パターンのどちらを使用するかの決定は、検討対象としている特定のアプリケーションの要件、そしてそのアプリケーションを管理する必要性に基づいて行う必要があります。

仮想システム・パターンのミドルウェア・インフラストラクチャーを中心とした手法を採るか、それとも仮想アプリケーション・パターンのアプリケーションを中心として手法を採るかは、アプリケーションごとに決定する必要があります。その決定は、サポートする必要がある構成によって左右されることもあります。例えば、構成が極めて特有で、現在用意されている仮想アプリケーション・パターン・タイプに当てはめるのが難しい場合には、独自の仮想アプリケーション・パターン・タイプを作成するか、あるいは仮想システム・パターンを使ってアプリケーションの要件と完全に一致するトポロジーを作成し、場合によっては以前に実装した物理環境を複製するという方法を選べます。このような場合を抜かせば、用意されている既存の仮想アプリケーション・パターン・タイプのなかから、アプリケーションによく適したパターンが見つかるはずです。

できる限り、仮想アプリケーション・パターンの最適化と利便性を利用するように努めてください。そうすることで必ず、総所有コストが最小限になり、価値をもたらすまでの時間が最短になります。一方、極めて詳細な構成が必要であることから、細かいところまで制御できる仮想システム・パターンを選ぶというシナリオも当然考えられます。

最も重要なことは、すべての選択肢を理解し、十分な情報に基づいて決定を下すことです。それぞれの使用ケースを調べ、その使用ケースを実現するために利用できる選択肢を理解した上で、最終的に、目標とするユーザー・エクスペリエンスを決定してください。

最後に、もう 1 つの重要な点として、IBM PureApplication System は、この 2 つのモデルを同時にサポートします。したがって、仮想アプリケーションと仮想システム、さらには仮想アプライアンスをすべて同じクラウド・リソースのプールにデプロイすることができます。この多種多様なデプロイメントを可能にするのは、IBM PureApplication System に組み込まれている堅牢な機能の数々です。これらの機能のおかげで、アプリケーションごとにデプロイメント・モデルを選択することができるため、その最善の組み合わせを最大限の投資収益率で実現することができます。


まとめ

この記事では、仮想システム・パターンと、IBM PureApplication System エコシステムでのその位置付け (そして、仮想アプリケーション・パターンと仮想システム・パターンとの違い) を紹介しました。さらに、仮想システム・パターンのコンポーネントと機能を説明し、基本的な仮想システム・パターンの作成方法と使い方を検討しました。

パターン中心のクラウド・デプロイメントについてさらに詳しく学ぶには、「参考文献」セクションの関連するコミュニティー、フォーラム、記事、および動画を調べてください。

参考文献

学ぶために

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ディスプレイ・ネームは、3文字から31文字の範囲で指定し、かつ developerWorks コミュニティーでユニークである必要があります。また、プライバシー上の理由でお客様の電子メール・アドレスは使用しないでください。

必須フィールドは(*)で示されます。

3文字から31文字の範囲で指定し

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ArticleTitle=仮想システム・パターンを使用してトポロジーを管理する
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