クラウドを成功に導く秘訣: 柔軟なキャパシティー・プランニング

クラウド・コンピューティング環境を有効に活用するためのプランニングに必要な要素を明らかにし、そのためのツールを紹介する

クラウド・コンピューティングによって約束されることの 1 つは、仮想化によってサーバーの必要台数を削減できることです。そのため、予想されるユーザー・ニーズを満たすために、どの程度のクラウド・インフラストラクチャーが必要なのか適切なキャパシティーを判断することが不可欠です。この記事では、クラウドのキャパシティーとその計算方法について理解できるように、それらの基本概念を紹介します。また、クラウド環境を有効に活用するために必要とされる最適なリソース・プランニングに役立つツールを紹介します。

Jose Vargas (jivargas@us.ibm.com), Senior Manager, IBM

Jose Vargas は IBM Cloud Labs のシニア・マネージャーであり、IBM Infrastructure Planner for Cloud Computing の実装と導入のリーダーです。その前には、Wuxi のクラウド・コンピューティング・センターにデプロイされた IBM の Blue Cloud ソリューションの開発と実装を指揮していました。さらにそれ以前は、彼のチームは IBM CIO オフィスのIBM Innovation クラウドの実装と管理を行い、また IBM Research と共同で IBM の RC2 (Research Compute Cloud) の最初の実装を行いました。彼は 27 年間の IBM 在籍の中で、ソフトウェアの開発、計画、管理を担当してきました。彼は地元で積極的に活動しており、メンターとしても活躍しています。また、Silicon Valley Latinos クラブのメンバーであり、地域の学校を支援するための教育活動に参加しています。



Clint Sherwood, Senior Editor, IBM

Clint Sherwood は IBM の Cloud Enablement チームのライター兼シニア・エディターです。彼はこのチームで、技術セールス、マーケティング、広報における彼の 20 年を超える経験を生かし、クラウド関係の広報の作成、編集、寄稿を行っています。彼の IBM での最初の仕事は Technology Adoption Program であり、そこで彼は組織のライター兼エディターを務めました。彼は IBM CIO Vision 2015 レポートを共同執筆し、またライターやエディターとして、無数の書籍、ホワイトペーパー、ニュースレター、顧客向けマーケティング資料、ビデオ、ポッドキャスト、ブログに携わってきました。



2012年 1月 06日

クラウド・コンピューティング環境へと移行する企業は、プランニング・プロセスやプランニング・ツールを利用することで、コストの削減、システムのデプロイメントの高速化、システムの可用性の向上を実現しようとします。これらのプロセスやツールにより、システム管理者は環境の管理や将来のコンピューティング・ニーズのプランニングをする上で必要な情報を得ることができます。

クラウド・コンピューティングによって約束されることの 1 つは、仮想化によってサーバーの必要台数を削減できることです。これにより、必要とされるハードウェアやソフトウェア・ライセンス、消費されるエネルギー、そして保守作業を減らすことができます。クラウド・コンピューティングを利用する上では、予想される顧客やユーザーのニーズを満たすためにどの程度のクラウド・インフラストラクチャーを用意するのが最適であるかを判断することが不可欠です。コンピューティング・リソースが少なすぎると、ユーザーがリソースを利用しようと要求してもリソースが解放されるまで待たなければならなかったり、環境にハードウェアが追加されるまで要求が拒否されることになったりするかもしれません。逆にコンピューティング・リソースが多すぎると、ハードウェア・コストやその他の経費により、クラウド・コンピューティングで約束されるコスト削減が帳消しになってしまいます。

過剰な仮想化は悪いことなのか

クラウド・コンピューティングによる仮想化や自動化を大々的に利用することで、不採算モデルを埋め合わせることができるという誤った考えが存在しています。残念ながら、従来のコンピューティング環境を利用した 1 つひとつのトランザクションが損失を出している場合には、クラウド・コンピューティングによる自動化を利用したところで問題を悪化させるだけかもしれません。クラウド・コンピューティングを利用することで、どのような利点がもたらされるのか、必要とされるリソースはどの程度節減できるのか、そしてコストはどれぐらいになるのか、といったことを理解するには、適切なキャパシティー・プランニングをすることが不可欠です。クラウドのプランニングを首尾よく行う上では、そこに魔法はない、ということを理解するのが非常に重要であることを忘れないでください。

クラウド環境のプランニングを首尾よく行うためには、システム管理者は以下の 5 つの質問に答えられなければなりません。

  1. データ・センターではどの程度のキャパシティーを利用できるのか?
  2. 利用可能なキャパシティーのうち、現在どの程度のキャパシティーが利用されているのか?
  3. いつキャパシティーが解放されるのか?
  4. 新たな要求に対してどのような予測を立てているのか?
  5. 投資収益率はどの程度か?

この記事では、クラウドのキャパシティーとその計算方法について理解できるように、それらの概念をいくつか紹介します。さらに、クラウド・コンピューティングに移行するという重要な目的を実現するためのツールとして、IBM Infrastructure Planner for Cloud Computing を紹介します。

クラウドのキャパシティーの概要

クラウド・コンピューティング環境は物理サーバーで構成されており、それらのサーバーに含まれるリソースを多くのユーザーやアプリケーションが共有することができます。各サーバーには、ディスク・ストレージと、メモリーを備えた 1 つまたは複数の CPU (Central Processing Unit: 中央演算処理装置) があります。クラウド環境は仮想化されているため、全体としての CPU、メモリー、ディスク・ストレージのごく一部が各ユーザーからの要求に対して割り当てられます。このように、各ユーザーに割り当てられるリソースはごく一部であるため、最大限の柔軟性を実現することができます。

例えば、一部のアプリケーションは大量のディスク・ストレージを必要とするものの、CPU パワーはそれほど必要としない一方で、他のアプリケーションはそれとは要件が逆で、CPU パワーを大量に使用し、ストレージはわずかしか使用しない、といったことがあります。クラウド・コンピューティングでは、ユーザーは自らのアプリケーションに必要なそれぞれのシステム・リソースの量を指定することができます。

計算の中心となる部分: 仮想 CPU を定義する

クラウド環境のプランニングをする際には、システムの CPU は仮想化された CPU と同じではないことを忘れないでください。最近のシステムでは、処理能力の比較が困難なことがよくあります。例えば、昨年製造されたシステムのプロセッサーは、今年製造されたシステムのプロセッサーよりも実行速度は遅いはずです。また最近の新しいシステムの CPU はマルチコアです。

システム・リソースの割り当てやキャパシティー・プランニングを正確に行う、という難題を少しでも容易なものにするために、一部のクラウド環境では、1GHz の CPU の処理能力をクラウドの 1 CPU 単位として標準化しています。この場合、ユーザーが 2 単位の CPU を要求すると、そのユーザーは 1GHz の CPU 2 基分の処理能力を得ることができます。つまり、例えば 3GHz クアッド・コア CPU を 2 基搭載したシステムは、以下のように 24 CPU 単位の処理能力を持つということです。

2 CPU x 4 コア x 3GHz = 24 CPU 単位

この計算方法を使えば、ユーザーは必要な CPU の数についてプランニングすることができ、パフォーマンスについてもある程度正確に想定できるため、便利です。また管理者は、1 つのシステムが提供するリソースを複数の要求にまたがって容易に共有することができます。全体としての CPU キャパシティーを計算するためには、その環境で使用可能な CPU 単位を加算します。

注意する点: さまざまなプラットフォームでクラウドの CPU 単位を比較する場合、IBM PowerVM プロセッサーのシステムでの 1GHz の CPU の処理能力は Intel ベースのプロセッサーの 1GHz と同じではありません。正確な結果を得るためには、プロセッサーの比較は必ず同じプラットフォームの間で行う必要があります。

物理 CPU の影響

キャパシティー・プランニングをする際には、システム内で使用可能な物理 CPU の数も考慮する必要があります。あるクラウドでは 100 CPU 単位を使用できるかもしれませんが、そのクラウド内で最も強力なシステムに物理 CPU が 20 基しかない場合には、それが仮想マシンへの要求に対する 1 つの制限事項になります。

CPU とメモリー、ストレージとのバランス

適切なキャパシティー・プランニングをするためには CPU パワーのみを考えればよいわけではないことを忘れないでください。キャパシティー・プランニングでは CPU の数に関して適切な判断が必要ですが、各システムに対して購入されるメモリーやディスク・ストレージの量と CPU の数とのバランスを取ることも必要です。

例えば、システムを購入する場合、処理能力が 24 CPU 単位でメモリーは 2GB のみ、というシステムはクラウド環境ではほとんど意味がありません。この場合、2 CPU 単位と 2GB のメモリーを持つ仮想マシンをユーザーが要求すると、この 1 つの要求に応えるためにサーバーが完全に割り当てられてしまいます。割り当てられていない 22 CPU 単位を他のユーザーが利用することはできないため、この要求が継続される間は 22 CPU 単位がアイドル状態になってしまいます。

クラウド環境のためのハードウェアを購入する場合には、システム・リソースを適切にバランスさせる必要があります。


IT サービスに対する要求が及ぼす影響

キャパシティー・プランニングの一番の目的は、IT のキャパシティーがどの時点においても確実にその瞬間に応じた適切な能力を提供できるようにすることです。それは、その瞬間が今であっても明日であっても、あるいは今から 20 年後であっても言えることです。そのため、効果的なキャパシティー・プランニングを実現するために使える重要な手段の 1 つは、IT サービスに対する要求がどのような形でデータ・センターに届くのかを調べることです。

従来のデータ・センターの場合

従来のデータ・センターの場合、システム管理者は予定されている開発プロジェクトのソフトウェア技術者から IT リソースに対する要求を受け取ります。管理者は一般に、週に 1 回の頻度で要求の内容を精査し、それらの要求に対してどのリソースを使用することができ、またどのプロジェクトの優先順位が最も高いかを判断します。通常、優先度の高いプロジェクトから順に要求への対応がなされます。

多くの場合、従来のデータ・センターは優先度の高い要求に対し、リソースの割り当てが決定された時点から、早ければ 3 週間程度で対応することができます。ただし、IT リソースの購入が必要な場合には、要求に対応できるまでに何ヶ月かを要することもあります。

優先度の低いプロジェクトは、予算やリソースの状況によっては、要求への対応がなされるまで長期間待たなければならない可能性があります。場合によっては、要求への対応がまったくなされない可能性もあります。

このようにプロセスは長く、不確実なため、ユーザーは可能な限り大量のコンピューティング・リソースを要求するようになります。残念なことに、そうした要求は多くの場合、ユーザーが実際に必要とする量を上回っています。いったんプロビジョニングされると、これらのリソースはユーザーによってしっかりと保持され、たとえプロジェクトが終了しても、強制的にそのユーザーに解放させない限り解放されません。こうした態度は、従来の IT のパラダイムの制約の中では理解することができます。結局のところ、現在のプロジェクト、そして次のプロジェクトが成功するかどうかは、十分な IT リソースを得られるかどうかにかかっているのです。

しかし、この従来のモデルからは悲しい教訓を学ぶことができます。その教訓は明らかで、多くの場合、開発サイクルの終盤にならないと十分なリソースは割り当てられず、そのことが生産性と競争力に影響を及ぼしています。そしてプロジェクトが終了すると、それらのリソースが今度はユーザーによって抱え込まれた、利用率の低い、無駄なキャパシティーとなってしまいます。

クラウドの場合

クラウド・コンピューティングでは、従来のデータ・センターの場合とは非常に異なるシナリオになります。

  • 開発者は IT リソース (サーバー、ソフトウェア、ストレージなど) への要求を入力できる Web サイトにアクセスします。
  • ユーザーは、リソースを使用できるかどうかを即座に知ることができます。
  • リソースが使用できる場合、要求は即座に送信され、自動的にクラウド管理者にルーティングされて承認を受けます。
  • このプロセスは自動化されているため、要求は多くの場合、提出されてから 1 時間以内に対応されます。
  • プロジェクトが終了するか、あるいは終了に近くなると、クラウドを利用する開発者はもうコンピューティング・リソースを抱え込みません。彼らは、将来必要になった場合にも同じリソースに素早く簡単にアクセスできることを理解しています。

将来のプロジェクトでクラウドを利用する開発者は、従来、IT リソースの割り当てを要求する際にいつも行っていたように過剰なプロビジョニングを要求するのではなく、今と同様に必要なリソースのみを要求するはずです。また、クラウド・ユーザーは通常、プロジェクトの終了日を指定しなければなりません。この終了日を延長しない限り、クラウド・リソースはその終了日になると自動的に、使用可能なリソースのプールに返されます。そのため、たとえユーザーが意図的にリソースを解放しなくても、他のユーザーはそれらのリソースを使用できるようになります。

管理者の観点から見ると、クラウド環境を利用することで、手作業での時間のかかるプロセスがワンクリックの自動承認プロセスへと変わります。データ・センターのクラウド・インフラストラクチャーとリソースについての使用可能なキャパシティーに関する情報は、ほぼリアルタイムで提供され、管理者はクラウド環境の合計キャパシティーとリソース残量を瞬時に把握することができます。


リソースの必要性を判断する

では、一般的な開発組織のシナリオを使用してリソースの必要性を検証しましょう。

ある企業は 150 人のソフトウェア技術者で構成される、開発とテストを行う組織のために、新しいクラウド環境を実装しつつあります。100 人のソフトウェア技術者はソフトウェアを開発し、40 人はソフトウェアの品質保証を行い、10 人は本番環境の実行と保守を担当します。

この組織のコンピューティング需要を満たすために、どの程度の規模のクラウドが必要なのでしょう?この質問に答えるためには、ユーザーの要件とシステムのリソースという 2 つの重要な情報が必要です (もちろん、それらの情報を副次的な情報に分解する必要があります)。この情報は以下のようなものです。

  1. ユーザーの要件
    1. ソフトウェア開発者にとっての平均的なリソース要件
      1. 平均して開発者 1 人当たり 2 つの VM
      2. CPU: 6 CPU 単位、メモリー: 2GB、ディスク・ストレージ: 100GB
      3. 環境は平均して 90 日間必要
    2. ソフトウェアの品質保証技術者にとっての平均的なリソース要件
      1. 平均して開発者 1 人当たり 3 つの VM
      2. CPU: 4 CPU 単位、メモリー: 2GB、ディスク・ストレージ: 50GB
      3. 環境は平均して 30 日間必要
    3. 本番環境にとっての平均的なリソース要件
      1. アプリケーション環境ごとに 1 つの VM
      2. CPU: 12 CPU 単位、メモリー: 16GB、ディスク・ストレージ: 500GB
      3. 環境は平均して 1 年間必要
  2. システム・リソース
    1. 使用されるシステム: IBM BladeCenter HS22 8-way 2.8GHz ブレード・サーバー
    2. サーバー 1 台当たりのメモリー: 48GB
    3. サーバー 1 台当たりのディスク・ストレージ: 1,200GB

図 1 には、キャパシティー・プランニングによる見積りの結果、このブレード・サーバーが平均で 113 台必要であることが示されています。また、この環境が常時すべての要求を確実に満たすようにリソースを提供するためには、124 台のサーバーを用意することが推奨されています。つまりキャパシティー・プランニングにより、この組織をサポートするために必要なシステムの数を判断することができます。(この記事では後ほど、キャパシティー・プランニングを単純化するツールとして IBM Infrastructure Planner for Cloud Computing を紹介します。図 1 の画像は、このシナリオのキャパシティー・プランニングをそのツールで行った結果をキャプチャーしたものです。)

図 1. このシナリオに対する見積もり
このシナリオに対する見積もり

仮想化によってキャパシティーを高める

IBM Infrastructure Planner for Cloud Computing ツールを紹介する前に、仮想化によってどのようにしてキャパシティーを高められるのかを調べてみましょう。

従来のデータ・センターの場合、管理者にとって共通の悩みは IT リソースの使用率が低いことであり、10 パーセントから 20 パーセントという低さであることも珍しくありません。つまり平均すると、サーバーのコンピューティング能力の 80 パーセントから 90 パーセントは使われていないということです。そのため、従来の状況では追加のリソースを要求すると、リソースを浪費することにつながります。

また、データ・センターは多くの場合、システムのためのフロア面積が限られており、たとえその部門が機器を追加購入する財政的余裕がある場合であっても、システムを追加するための物理的なスペースを確保できない可能性があります。

対照的にクラウド・コンピューティングでは、その重要要素である仮想化によって、1 つのシステムが多くのサーバーで構成されて見えるようになります。この技術では、ホスト・コンピューターのオペレーティング・システム上で実行されるハイパーバイザーにより、複数のオペレーティング・システムを同時に実行させることができます。従来のコンピューティング環境のように貴重なコンピューティング・リソースを 80 パーセントも浪費する代わりに、ハイパーバイザーによって、すべてのサーバーが最も効率的かつ生産的なレベルで動作するようになります。大量のメモリーとディスク・ストレージを持つ最新のハイパフォーマンスなマルチコア・プロセッサー・システムでは、そうした効率が一層高くなります。

仮想化により、クラウド管理者はより多くの要求をより少ない台数のシステムで処理することができるようになります。


現実の世界の実際の傾向

何事においても、過去を理解することによって未来をより正確に予想できるようになります。キャパシティー・プランニングの場合、過去 6 ヶ月間にわたる IT リソースの使用状況を正確に把握していれば、組織のコンピューティング・ニーズを容易に予測することができます。過去の使用パターンや傾向を見ることで、IT 管理者はリソースを追加する時期や必要なリソースの量を見積もることができます。

例えば、米国のオンライン・ショッピング・サイトでは、以下のことを認識しています。

  • オンライン・ショッピング・サイトは、(11 月と 12 月の) ホリデー・シーズンに Web サイトの訪問者が一時的に急増すること。
  • ホリデー・シーズンの買い物ラッシュの期間に、どういった商品が最も人気が出るか。
  • ホリデー・シーズンには注文した商品の状況を確認するためにサイトを訪問する人の数も増加すること。

トラフィックの増加により、1 年の最後の 2 ヶ月間は、より多くのコンピューティング・リソースが要求されます。ただし、新しい年が始まるとユーザー・トラフィックは通常の量へと戻っていく傾向にあります。

パターンを知ることで、管理者は今後起こると予想される季節的な急増に対して適切なプランニングをすることができます。時間を横軸にとってトラフィックをプロットしていくことで、本当に一時的な急増なのか、あるいは全体的な Web トラフィックが増加した可能性があるのかを区別することができます。

時間と共に変化する需要は、一時的な急増 (spike) ではなく傾向 (trend) と見なすことができます (図 2)。

図 2. 一時的な急増 (spike) なのか傾向 (trend) なのか
一時的な急増 (spike) なのか傾向 (trend) なのか

ある成功した会社が、成長に対応するためにより多くのリソースを必要としている、というシナリオを考えてみてください。管理者は IT の需要増加率の情報を使用することで追加リソースの必要性を予測できるため、追加リソースの要求はタイムリーに行われます。適切に管理されたクラウド・コンピューティング環境では、この機能が自動的に提供されます。この環境は本質的に弾力的な IT サプライ・モデルであるため、環境が最新ニーズに対応することができます。

需要増加率を理解することは重要です。クラウド・ツールを利用すると、増加傾向に基づき、いつ追加リソースが必要になるかを予測することができます。この情報により、管理者は必要な追加キャパシティーと、いつそれが必要になるかを正確に見積もることができます。

正確な予測を行うために、管理者は以下の情報をモニターする必要があります。

  • ユーザー・リクエストの数
  • 要求された仮想マシンの数
  • 割り当てられた CPU、メモリー、ディスクのキャパシティー
  • 実際に使用された CPU、メモリー、ディスクのキャパシティー
  • クラウド全体としてのキャパシティー

割り当てられたリソースと使用されたリソースとの関係を理解することが重要です。経験から判断する限り、ユーザーは実際に必要なリソースをはるかに上回るリソースを要求しがちです。そのため、例えば特定の仮想マシンの CPU 使用率が一貫して 10 パーセント以下の場合には、管理者は割り当てる CPU 量を減らすことを検討するのが妥当です。

図 3 はキャパシティー・プランニングに関する判断のために傾向を示すデータを利用する方法を示しています。

図 3. CPU の割り当て量と実際の使用量の傾向
CPU の割り当て量と実際の使用量の傾向

ツールの選択肢: IBM Infrastructure Planner for Cloud Computing

IBM Infrastructure Planner for Cloud Computing ツールを利用すると、IT 管理者は実際のハードウェア、ソフトウェア、インフラストラクチャーを確実に提供することが容易になるため、クラウド・ユーザーは際限なくコンピューティング・リソースを利用できると感じられるようになります。現在、このツールでキャパシティーを見積もることができる環境は、IBM Smart Business Development and Test Cloud、IBM WebSphere CloudBurst、そして IBM Tivoli Service Automation Manager (TSAM) です。管理者はこのツールを利用することで、以下のことを行えるようになります。

  • 製品の本番展開の計画に関連付けられた独特のユーザー・クラス・テンプレート・セットを使用して、クラウドのキャパシティー・プランニングをモデル化することができます。
  • 従来のコンピューティング環境とクラウド・コンピューティング環境の両方のさまざまな種類を対象とした、一般的なビジネス・アプリケーションとカスタム・ビジネス・アプリケーションのパフォーマンスをモデル化することができます。

図 3 は以下の内容を示しています。

  • 全体としての CPU キャパシティー (Total Capacity: 青い線)
  • 割り当てられた CPU キャパシティー (Allocated: 赤い線)
  • 実際に使用された CPU リソース (Used: 緑の線)

9 月までの全体としての CPU キャパシティーは 500 CPU 単位でした。10 月には、環境にシステムが追加されたことにより、さらに 300 CPU 単位が使用できるようになりました。「Allocated (割り当てられた CPU キャパシティー)」の線は、ユーザー要求に応じて継続的に CPU キャパシティーが追加されていることを示しています (新しいクラウド・コンピューティング・センターのシナリオとしては典型的です)。

「Used (実際に使用された CPU リソース)」の線は実際にどの程度のリソースが使用されたのかを示しています。実際の使用量は 100 CPU 単位あたりにとどまっていますが、その割に CPU リソースに対する要求は増加し続けています。 管理者はこの情報を利用することで、どの程度 CPU リソースをオーバーコミットすべきかを判断することができます。例えば、リソース要求が使用可能なリソースの 100 パーセントを上回りながらも、ユーザーのリソース需要は使用可能なリソースの 100 パーセントを常に下回っている場合には、管理者は使用可能なリソースの 100 パーセントを上回るリソースを提供する約束をしようと判断するかもしれません。その場合、CPU リソースは大幅にオーバーコミットされるかもしれませんが、それでもユーザーの需要に対応することができます。

また、「Allocated (割り当てられた CPU キャパシティー)」の傾向を示す線に従うならば、10 月にリソースを追加したことは妥当に思えます。しかし「Used (実際に使用された CPU リソース)」の傾向を示す線を見ると話が変わります。10 月のリソース追加前にシステム全体としてのキャパシティーの限界は 500 でしたが、それでもユーザーの需要に十分対応できるだけのキャパシティーがあったのです。

クラウド・リソースのモニタリングとレポーティングを自動化すると、傾向の把握とキャパシティー・プランニングが容易かつ正確に行えるようになります。こういった処理を実行するツール (例えば IBM Infrastructure Planner for Cloud Computing など) は多くの場合に非常に役に立ちます。これらのツールを利用すると、モニタリングやレポーティングの自動化プロセスは容易になり、管理者は必要なリソースを素早くプロビジョニングすることができるからです。


まとめ

次のステップ

この記事の最後に挙げた参考文献を利用する他に、developerWorks の検索結果も参照してください。コンピューティング・リソースのキャパシティー・プランニングは以前から話題になっており、この内容は developerWorks で取り上げる技術的な内容に一貫して含まれています。

クラウド・コンピューティングではキャパシティーを管理することが極めて重要になります。キャパシティー・プランニングを適切に行うことで、革新的なソリューションの作成に必要なコンピューティング・リソースをユーザーに提供することができ、ビジネス・アプリケーションのパフォーマンスの目標を達成できると同時に、組織の財政的な目標にも貢献することができます。

今日のハイパフォーマンスのマルチコア・サーバーは大量のメモリーと巨大なディスク・ストレージキャパシティーを備えており、クラウド・コンピューティングの重要要素である仮想化技術を使用することで、それらのリソースを最も適切にフル活用することができます。この豊富なリソースを備えた IT 環境によって、より優れた新しい方法で最適なリソース割り当てのプランニングを行えるようになります。

クラウド・コンピューティング環境では、コンピューティング・リソースに容易にアクセスすることができます。注意深くプランニングすることで、クラウド環境は際限なくコンピューティング・リソースを提供してくれると思えるようになります。適切なプロセスを用い、IT リソースに関して使用状況のモニタリングとプランニングを行うことにより、組織はクラウド・コンピューティングを利用することで約束されるメリットを活用できるようになります。

参考文献

学ぶために

製品や技術を入手するために

議論するために

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