IBM®
本文へジャンプ
    Japan [変更]    ご利用条件
 
 
検索範囲検索:    
    ホーム    製品    サービス & ソリューション    サポート & ダウンロード    マイアカウント    

developerWorks Japan  >  Autonomic computing  >

コンポーネント・ビジネス・モデルを用いたIT組織への価値の付加

IBM Systems Journal: IBM Service Management: Volume 46, Number 3, 2007

developerWorks

情報技術 (IT) の進化は現在、テクノロジー・ベースからサービス・ベースへの移行に主眼が置かれている段階です。このために、ITを先導する企業は、テクノロジーの問題に主に集中することから、ITをビジネスのように管理することに移行しなければならなくなりました。この場合、ITサービスは主要「製品」として顧客によって生産され消費されるものとなります。CBMBoIT (Component Business Modele for the Business of IT) が、戦略的意思決定を支援する手段としての強力かつ柔軟な新しい IT の視点を提供します。CBMBoITの基盤となるのは、プロセス活動の基礎となるフローを記述したPRM-IT (IBM Process Reference Model) です。本稿では、コンポーネント・ビジネス・モデルとPRM-IT について説明し、これらのモデルを使用することで従来の個別のアプローチでは見逃されてしまっていたような戦略的オプションを経営陣が明確に認識できることを示すIT環境の事例を挙げます。


はじめに

情報技術 (IT) は、初のコンピューター・システムの登場以来、常に進化し続けています。この進化は加速するばかりで、特に今日のビジネス環境にはそれが言えます。グローバリゼーション、動的なビジネス・エコシステムの成長、サービス・ベースの経済に向けた加速、多数の従来のビジネス活動のコモディティ化がすべてITの変革の要因となっています。

当初、ITの主な役割は、手動で繰り返し行う作業を自動化してビジネス・プロセスの効率を高めることでした。当時、ITに関する活動の多く (パフォーマンスの評価など) はIT部門向けもので、他の事業部門には理解できないと考えられていました。内向きであるため、IT部門のサービスの提供、顧客とのやりとり、業績の測定の方法はテクノロジー中心でした。この傾向は、サービスレベル・アグリーメント (SLA) の多くに、目標とするビジネス結果を主とするのではなく、テクノロジーの専門用語が満載されていることから明らかなように、現在でも変わっていません。このようにテクノロジーに重きを置くことは、組織の顧客に対するITサービスの真の価値を反映することにも、明示することにもなりません。

テクノロジーの進歩に伴い、ITは単に手動タスクの効率改善の手段としての役割を超えて、ビジネス上で優位に立つために意味のある手段となりましたが、他方では矛盾が生じてきています。ITは (テクノロジーの革新的な応用によって新しいビジネス・サービスを可能にして) 多くの企業の成功に不可欠なものとなる一方で、ITの具体的な価値を見分け、表現するのは依然として難しいことです。その理由として考えられるのは、サービス指向ビジネスの観点からITを管理することを意識した統一されたアプローチがないことです。

今日、CIO(最高情報責任者) は、IT投資から得られる価値を定量化して示すことを求められています。企業の最大の資本投資であることが多いITには、革新的なビジネス・サービスを創出し、社内の協力体制を改善し、動的なビジネス・システムをサポートすることが当然のこととして期待されています。CIOの多くは、新しいITフォーカスに移行するだけの時間もリソースもないという問題に直面しており、意味のある変化をもたらす十分なインパクトが通常はない対処療法的な修正措置に頼らざるを得なくなっています。

これは、IT幹部にとって新しい方策が必要であることを意味します。ITをサービスの提供に重点をおいたビジネスとして運営しなければなりません。もはやITは、ビジネス・プロセスの自動化に止まらず、新しいテクノロジーに対応したビジネス・サービスの製造を担当する「生産ライン」として捉えなければなりません。あらゆるビジネス・リーダーがそうであるように、IT幹部も最重要の顧客、すなわちIT対応ビジネス・サービスの社外利用者とCEOのニーズに機敏に対応すると同時に、既存のサービス提供の質を確保するために厳密なガバナンスと管理を維持しなければなりません。このような新しい課題の解決に役立つツールが存在するのでしょうか。

本稿では、ITの将来の状態に関するビジョンを示し、上級IT幹部を支援してこの変革を可能にするIBMのアプローチを説明します。Component Business Model* for the Business of IT (CBMBoIT)は、IT幹部が情報テクノロジーの計画、管理、構築、運用に不可欠な重要な意思決定の多くを、真のサービス・ベースの提供ビジネスとして行うために役立つ情報技術に対する新しい「レンズ」となります。

サービス・ベースのビジネスとしてのIT

従来のテクノロジー中心のITの視点では、活動または手順の大部分を独立した内部ITサービスと見なします。顧客がこれらの一連のITサービスに価値があると見なすかどうかを判断するために、意味のあるビジネス・ベースのメトリックが用いられることはまれです。実際に、そもそもサービスとは何かということに関してIT部門内で大きな混乱がある場合が多く、その第1の理由はサービス・プロバイダーとサービス利用者の役割が常に変化していることです。たとえば、従来のIT部門では、重要なビジネス・アプリケーションの保守をサービスと考える場合があります。同様に、オペレーティング・システム・パッチの処理やバックアップや回復の活動は個々に利用者が異なりますが、標準ITプロセスの多くと同じようにサービスと呼ばれる場合が多くなっています。この観点からすれば、成功の尺度は個別のテクノロジー、すなわち「垂直型サイロ」の視点から見たものになります。たとえば、クライアント/サーバー・アーキテクチャーでは、ITの成功は、顧客がビジネス・トランザクションを完了できるかどうかではなく、アプリケーション・サーバーの可用性によって測定することが考えられます。

この内部的なテクノロジー中心のサービスのモデルは、ITの顧客にとって十分なものではなくなりました。顧客のビジネス要件が満たされなければ、もはやアプリケーション・サーバーなどの内部サービスが利用可能だというだけでIT部門が認められることはありません。ITサービスの利用者にとっては、ネットワークがダウンしていたり、データベースにアクセスできなかったりというサービスが利用できない理由などどうでもよいのです。利用者はITの問題に関心はありません。すべての顧客と同様に、ITサービスの利用者は要求するサービスを必要なときにどこにいても受けられることを期待しているに過ぎません。

このテクノロジー中心のフォーカスと対照的に、現在のITサービスはその利点と顧客への測定可能な価値の提供に重点を置くように設計されています。ITサービスには、障害の診断に役立てるためにテクノロジー・ベースの垂直フォーカスが含まれますが、ビジネス価値を判断するために水平の「エンドツーエンド」ビューも含まれます。このようなビューは、技術専門用語を用いなくても利用者に対して明確に説明できる、利用可能なサービスの創出に必要な各種構成要素を組み合わせたものです。このサービスは顧客の観点から明確に説明され、その価値は顧客の用語で認識できます。

ITマネージャーにとってこのサービスの提供に必要なテクノロジーの全構成要素の理解が重要なことは自明です。ただし、ITの最重要目標はビジネス価値の提供でなければなりません。ビジネス・サービスは、エンド・ユーザーの体験となる、ITにより管理されるエンドツーエンド構成要素を含む「アウトサイド・イン」の観点からITによって測定および追跡する必要がありますが、重点は最終結果に置かれます。IBMではこのビジネス顧客ビューを「IT対応ビジネス・サービス」、または単に「サービス」と呼び、純粋にテクノロジー中心の内部ITサービスと区別しています。

ビジネスのコンポーネント

CIOは、関係するビジネス・コンポーネントのすべてが含まれるビジネスそのものとしてITを創出し直す重要なポジションにあります。各コンポーネントには個別の目的があり、全体が合成されてビジネスの成功に不可欠なものとなります。1つでもコンポーネントが障害を起こすと、各コンポーネントの相互関係によって全体の有効性が影響を受ける場合があります。

表1は、実質的にどの企業にとっても不可欠なビジネス・コンポーネントの例です。これらのコンポーネントをITのビジネスとしての側面に当てはめてみることで、ビジネスとITが結びついて汎用ビジネス・コンポーネントとどのように関わるかを示す例をいくつか示すことができます。


表1 汎用ビジネス・コンポーネントとIT活動
汎用ビジネス・コンポーネントITのビジネスの該当する内容
運用実稼働環境のサービス・デリバリーとサービス・サポート活動の日常保守
サード・パーティー・サービス・プロバイダー管理
法律/遵守Sarbanes-Oxleyの遵守
Basel2
COBIT**
監査能力
文書化
情報ライフ・サイクル管理 (ILM)
製品/サービス開発研究開発 パーベイシブ・コンピューティング 情報収集
品質保証システム試験
リリース管理
サービス品質 (QoS)
スキル・インベントリー
キャリア開発
報酬
お客様の満足度リレーションシップ・マネジメント ビジネス/ITの整合 顧客の要望とニーズ、測定
コミュニケーションコミュニケーション計画
公開ビジネス計画
連絡先リスト
サービス・レベル
会計効率 (調達戦略)
コスト管理
投資
アーキテクチャー/構造テクノロジー標準
サービス開発
エンタープライズ・アーキテクチャー

どのサービス指向ビジネスの場合とも同様に、ITでは各コンポーネントを戦略全体と整合させる必要があります。さらに重要なことは各コンポーネントの相互接続で、これにより総合されたシームレスなサービス・デリバリーが可能になります。ITサービス・プロバイダーが直面している課題は、他のビジネスと類似しています。顧客中心のITビジネスを構築する上でCIOが対処しなければならない問いの中には次のものがあります。どの顧客セグメントを追求すればよいのか。この顧客の要望やニーズは何か。顧客が支払うことをいとわない価格で、あるいは社内組織の場合は企業が対応できるコストで要望とニーズを効果的に満たせるのか。このコンポーネント・ベースの観点では、どのコンポーネントが自社を競合他社から差別化するのか。予算のうちいくらが各コンポーネントに割り当てられており、それは適切な額か。効率を改善できる余地はどこにあるか。差別化ではない活動の一部において他のサプライヤーと提携を考えるべきか。Component Business Model for the Business of IT (CBMBoIT) は、これらの問いの大半の回答に役立つ堅固な分析フレームワークとなります。

コンポーネント・ベース・ビューの採用

特許を取得したIBMコンポーネント・ビジネス・モデル (CBM) 技法は、新しいビジネスの評価と設計の方法です。これは、事業単位、機能、地域、プロセス・ビューなどの従来のビジネスの見方が進化したものです。

コンポーネント・ビジネス・モデル方法論では、水平統合と垂直統合を組み合わせることによってビジネスの基本ビルディング・ブロックを特定します。

ビジネス・コンポーネントは互換性のある製造部品に相当しますが、プロセス、機能、活動、およびサービスから構成され、これらを総称して能力と呼びます。 1

各ビルディング・ブロックには、他のコンポーネントまたは外部顧客に評価されるサービスを創出するリソース (人材を含む)、活動、およびテクノロジーが含まれます。各ビジネスの構成を包括的に分析した後、個々のビルディング・ブロック、すなわちコンポーネントを1ページにマッピングします。

コンポーネント・マップは、ビジネスの2次元ビューです。コンポーネント・マップの行はさまざまな事象の範囲と「説明責任レベル」を表します。説明責任レベルは、監督、管理、および実行のレベルです。通常はレベルが異なると固有のスキルが必要で、多くの場合実施する期間の長さが異なります。コンポーネント・マップの列は中核となる能力を表し、成功するために組織に欠かせない能力を定義したものです。どのような能力が必要となるかは、業界と企業のビジネス戦略によって決まります。

CBM技法をITに適用した場合、IT機能それ自体をビジネスと見ることになるので、CIOにとってこの技法はより基本的な問題にアプローチする新しい方法となります。コンポーネントを検討するとで、このような「ビジネス」の運営を改善できる具体的な方法の見極めに役立てることができます。CBM技法は、ITサービス・マネジメント (ITSM) インフラストラクチャーがどの程度効率的に運用されているか、ITサービス「ビジネス」がどの程度ビジネス上の価値をサポートし推進しているのかをCIOが判断するためのフレームワークです。

企業の他の部門で使用されているものと同じコンポーネント・ベースの方法論を適用することによって、IT機能を固有でしかも統合された一連のコンポーネントに分解します。CBMBoITモデルは、商品やサービスの授受によって相互に作用する複数のコンポーネントによって構成されており、コンポーネントの中には外部顧客に対して価値のある商品やサービスを提供するものもあります。

このコンポーネント・ベースの観点の例としては、「E-Gov」Webサイトに記載されているFederal Enterprise Architectureのサービス・コンポーネント・リファレンス・モデルがあります。「サービス・コンポーネント・リファレンス・モデル (SRM) は、ビジネスやパフォーマンスの目標の達成にどの程度役立つかによってサービス・コンポーネントを分類する、ビジネスおよびパフォーマンス駆動型機能フレームワークです。」 2


上に戻る



COMPONENT BUSINESS MODEL FOR THE BUSINESS OF IT

CBMBoIT 3 は、IT 機能全体を1つの単純な2次元ビジネス・フレームワークに簡約したものです。従来のITに対する見方が進化したCBMBoITではITビジネスの基本的なビルディング・ブロックが明確にされています。

前述したように、コンポーネント・マップの列はマップの中核となる能力を表します。図1は、CBMBoITマップの中核となる能力を3つのライフ・サイクルに基づく上位カテゴリーにまとめたもので、従来のIT機能で容易に判別できます。(1) 計画および管理のカテゴリーで、ビジネス、標準、カスタマー・リレーションシップ、サービス・ポートフォリオ、情報の定義と継続的管理が関係します。(2) 構築のカテゴリーで、ソリューション開発とソリューション・デプロイメントが関係します。(3) 実行のカテゴリーで、サービス・デリバリーとサービス・サポートが関係します。コンポーネント・マップの行はさまざまな事象の範囲と説明責任レベルを表します。


図 1. CBMBoITマップの中核となる能力

コンポーネントには個別の境界があり、入力として使用するサービスと出力として提供するサービスによって範囲が決まります。コンポーネントの明示には、価値のある商品やサービスの提供に必要な人材、テクノロジー、知識などの指定が含まれます。これらのサービスの中には、IT対応ビジネス・サービスの特定のクラスを表すものがあります。顧客の観点では、このコンポーネントのビジネス活動が見える必要も、明確である必要もありません。顧客が関心を持つのは結果、すなわちサービス自体であり、サービスがどのように作られるかではありません。

コンポーネント・モデルは他のフレームワークに取って変わるものではなく、拡充するものです。IT Infrastructure Library ** (ITIL ** ) 4 などのベスト・プラクティス集、国際標準化機構 (ISO) 5 が定めた規格、リーン・シックス・シグマ ** 6 などの測定に基づく品質プログラムをコンポーネント・モデルと組み合わせて用いることができます。コンポーネント・モデルの重要な要素の1つは、その中で実行される活動です。プロセス活動に基づくすべての技法は継続的に適用可能です。その結果として、コンポーネント・モデルの視点から他の種類のフレームワークのコンテキストが得られます。

CBMBoITの場合、モデルの活動はIBM Process Reference Model for IT (PRM-IT) から得られます。このIT参照モデルは、ITILベスト・プラクティスを基礎として用い、次にこれらの上位独立プロセス定義に、サービス・エンジニアリングに不可欠となる厳密に作成されたワークフローが追加されます。ITILと同様にCBMBoITとPRM-ITは進化するフレームワークです。本稿ではCBMBoITおよびPRM-IT Version 1を取り上げていますが、これらのVersion 2が現在開発中で、この進化は継続すると予想されます。

図2は、より上位となるCBMコンテキストにおけるコンポーネント (CBMの基礎概念要素) の位置を示します。ITは、業界CBMマップの1コンポーネントです (右下隅)。このインフラストラクチャー・テクノロジー・コンポーネントがCBMBoITの50のコンポーネント・マップに展開されています。さらにインフラストラクチャー運用コンポーネントが拡張されて、活動ワークフロー、リソースなどが示されています。図2に示すCBMBoITワークフローは、他のビジネス機能を自動化するアプリケーションをプログラマーが仮に開発する場合に適用するであろう同じ方法で自動化に使用できます。サービス指向アーキテクチャー (SOA) プログラミング・モデルと組み合わせれば、CBMBoITによって、他の業界向けのプログラミング・モデルと同じ機能を果たすIT業界向けの統合アプリケーション群を開発することが可能です。これは、管理対象のテクノロジーに向けたポイント・ソリューションとヘルプ・デスクなどの単一プロセスまたは単一分野の自動化からの大きな変化です。


図 2. CBMコンポーネントの例

分析の観点からすると、各コンポーネントの管理の境界は通常、図2に示すように論理境界で区切ることができます。この場合、インフラストラクチャーの運用に用いるコンポーネントは別に示されています。また、各コンポーネントには、コスト、リソース消費、効率、有効性、ビジネス目標達成の重要度などの属性があります。必要であっても顧客には見えない 1つ以上のコンポーネントにより生成されるサービスは、「内部サービス」と呼ばれます。逆に、顧客に見えるサービスは「外部サービス」と呼ばれ、通常はサービスレベル・アグリーメントで規定されます。前述したように、「内部」および「外部」の概念はコンテキストに基づきます。誰がプロバイダーと利用者の役割を果たすのかを最初に見極めなければ、これらの概念を正しく適用することはできません。CBM-BoITモデルは、ある状況のコンテキストを明示するために役立ちます。

CBMBoITの中核となる能力

コンポーネント・マップ (図3) から分かる用に、CBMBoITの中核となる能力は、ITカスタマー・リレーションシップ・マネジメント (CRM)、ITビジネス・マネジメント、ビジネス回復力、情報および知識の管理、サービスおよびソリューションの開発、サービスおよびソリューションのデプロイメント、サービスのデリバリーおよびサポートから成ります。この図のコンポーネントの背景色は、コンポーネントのグループ分け、すなわち『CIO の新しいレンズ』のセクションで説明している「ウェーブ」を表します。枠が太いオレンジ色のコンポーネントは、『CBMBoITコンポーネント』のセクションで説明しています。CBMBoITの中核となる能力は、以下のサブセクションで詳しく説明します。


図 3. ITビジネスのコンポーネント・マップ

ITカスタマー・リレーションシップ・マネジメント

IT CRMの中核となる能力は、ITサービス・プロバイダーとその顧客間のコミュニケーションと対話の管理および最適化に重点を置いています。この関係がうまくいくことが、IT部門の成功と企業全体にとって重要です。

この中核となる能力は多面的です。ビジネス要件の収集と要求されたソリューションに対する顧客での理由付けの支援が含まれます。CRMの中核となる能力では、ソリューションを設計し、その開発、デプロイメント、継続サポートに関するお客様の満足度を監視するアーキテクトのチームとの初期のやりとりの方法も整えます。顧客とITサービス・プロバイダー間のコラボレーションは繰り返し行われ、コミュニケーションはソリューションのライフ・サイクルを通じて行われます。

IT CRMの主要目標を以下にいくつか挙げます。プロバイダーはビジネス・コミュニティーを理解し、ビジネス・コンテキストを定め、顧客の要望とニーズを見極める必要があります。また、コミュニティーをセグメントに分け、市場情報戦略を策定し、主な要件の出所を明らかにして、対応する必要のあるセグメントを見極める必要があります。サービスの分類、顧客の要望とニーズの把握および評価、マクロ・サービスの定義を含めた市場計画を作成する必要があります。

ITビジネス・マネジメント

企業は、人材、資金、設備、装置、カスタマー・リレーションシップ、情報などの多数の資産を管理しています。情報を収集、保存、周知する技術的能力は、あらゆる管理の問題の中でも往々にして最も難しいことです。ビジネスのニーズは常に変化するのに対し、設置されたシステムは比較的固定化されています。ITの実装では、初期投資と継続した投資が必要ですが、その結果は誰も正確に予想できません。

過去には、IT管理能力が低いにもかかわらず成功を収めた企業がありました。しかし現在では、情報およびその収集と処理に用いるテクノロジーが、ますますビジネスの製品やサービスの重要な要素となりつつあります。多くの場合、企業が所有する資産の中で情報が最も重要です。ITとITによって管理される情報からより大きな価値を生み出せるかどうかは、ITビジネス・マネジメントの高い能力にかかっています。

ITビジネス・マネジメントの主要な目標は、ビジネスの戦略および優先事項と整合した ITの使用とガバナンス (すなわちIT戦略) の戦略的方向性の設定、戦略的方向性をビジネス・プロセス・アーキテクチャー/情報アーキテクチャー/サービスおよびアプリケーション・アーキテクチャー/インフラストラクチャー・アーキテクチャーの観点から示す企業アーキテクチャーの確立、ビジネス上の優先事項と戦略的に整合させてバランスを取ったITポートフォリオの価値の最大化、ビジネス・テクノロジーのパフォーマンスと価値の測定/分析/報告などがあります。

ビジネスの回復力

ビジネス機能とそれをサポートするITは、実質的に切り離せなくなりました。日常のビジネスの運営はITへの依存度を増しています。その結果、回復力のあるビジネスを実現するために、回復力のあるITインフラストラクチャーの分析、計画、実装を継続しなければなりません。以前、災害時復旧として知られていた対策は、今日のIT対応ビジネス・サービスの環境では不十分です。

同時に、コンプライアンス要件がビジネス計画の推進要因となり始めています。組織は、その垂直市場に特有の多数の要求事項を満たすと共に、業界全体に適用される Sarbanes-Oxley Act (SOX) 7 などの法律に対応する責任があります。これらの課題は幅広く複雑であるため、組織が戦略的で統一された見地から回復力とコンプライアンスにアプローチしなければならない場合が多くなっています。

ビジネス回復力があれば、企業が内外の機会、需要、混乱、または脅威に迅速に適応、対応して、ビジネスに大きな影響を与えず運営を継続することが可能です。戦略、組織、プロセス、アプリケーションとデータ、テクノロジー、設備を含めた回復力のあるビジネスのすべての層を全体論的アプローチを用いて分析します。次に、業界特有の要件、既存のインフラストラクチャー、現在のビジネス・モデルと望ましいビジネス・モデル、競合、予算の制約、その他のさまざまな要因に基づいて改善ソリューションを設計します。さらに、ビジネス要件とインフラストラクチャー要件の両方に対応する、一元化された回復力戦略を策定します。

この中核となる能力により、義務的なコンプライアンスの管理に対するより動的かつ戦略的で統一されたアプローチを取ることも可能になります。組織の内部統制機能は、リソースの保護、運営と財務の情報の信頼性、法規制の遵守が十分確実に行われるように設計します。十分に確実という概念は、統制のコストが統制から派生する利点を超えないことが前提となっています。また、妥協のない誠実さ、優れたビジネス上の判断、優れた統制慣例の文化が必要であることも織り込まれています。中核のインフラストラクチャー機能が特定されると、企業がコンプライアンス要件に対応するために(その機能を)デプロイできるようになります。

ビジネス回復力の主要な目標には以下のものが含まれます。

  1. 企業のインフラストラクチャー全体で俊敏性と保護を築く。
  2. 世界各地のすべてのビジネス・グループ、事業部、子会社、部門全体で業績のベースラインを遵守し、一貫した内部統制を実現するための戦略的方向性を設定する。
  3. 従来は過小評価されていたテクノロジーとビジネスが直面している多様なリスクを突き止める、IT リスク管理への全体的な統一されたアプローチを確立する。
  4. 回復力があり規制を遵守した企業アーキテクチャーの構築と、リスク許容度と利点のトレードオフ分析に基づいて改善への投資に優先順位を付けるインフラストラクチャー機能の構築に影響力を発揮する。

情報と知識の管理

今日の経済では、情報 (人が何をいつ知ったのか) は成功への重要な推進要因の1つです。情報は企業の最も価値のある資産の1つであることが多く、競合における差別化の材料となることが増えています。

情報管理の分野では、他の資産と同様に厳格に目的を持って管理しなければならない組織の資産として情報を取り扱います。まず企業にとって重要な情報を明確にし、戦略的目標を設定し、ビジネス戦略と優先事項に整合した情報に優先順位を付けます。この情報収集の方法、情報源、および適時性も決定する必要があります。収集した情報は一貫した方法で整理し、体系化しなければなりません。情報の取得と利用のためのポリシーと統制が設定されていなければなりません。

情報管理では、情報を管理し、特定の主題に関する情報収集の「データ管理人」を指名する組織の役割と責任を設定できるガバナンス・システムも必要です。情報管理規則では、情報と情報ポリシーの正式な定義と変更管理の仕組みも確立し、企業の意図とポリシーに従って情報が定義、収集、使用されているかどうかを検証する必要があります。

サービスとソリューションの開発

新しいITサービスおよびITソリューションの開発による恩恵は多大であり、新しいビジネス・プロセスが使用可能になり、新市場への参入、効率を高めてコストを下げて生産性を高めることが可能になります。したがって新しいITサービスは、競合で優位に立つために非常に重要です。不十分な設計の生産ラインがメーカーの足を引っ張るのと全く同様に、この中核となる能力の低調なパフォーマンスと不備が、プロジェクト・コストの超過、要件と整合しないソリューション、市場での機会の逸失につながる場合があります。

サービスおよびソリューションを開発する中核となる能力が、企業全体でのIT開発活動を支配します。この中核となる能力の役割はコーディングとデータベース・スキーマに止まらず、ITインフラストラクチャーの開発も含みます。開発の取り組みの結果は、ビジネス・プロセス (ITプロセスを含む) を可能にし、容易にする新しいサービス、ソリューション、またはサービスとソリューションの組み合わせとなります。さらに、開発の発想をこの考え方で拡大した結果、中核となる能力には、ソリューションとサービスのライフ・サイクル全体を対象とし、ソリューション稼働後の保守活動、ソリューションのライフ・サイクル完了後の停止活動を含みます。

通常の開発活動 (たとえば、要件分析、ソリューション設計、開発、統合、ユニットおよびシステム試験) はこの中核となる能力の中心です。これらの活動は社内で行っても、別のサービス・プロバイダーが提供してもかまいません。ITビジネス・マネジメントの中核となる能力では、ベンダーとの関係を幅広いレベルで管理する必要のある場合があるため、活動を構築するのか購入するのかの決定を、必要に応じてサービスとソリューションの開発チームに委任して、調整することができます。

サービスとソリューションのデプロイメント

IT 環境の変化は健全で、ほぼ一定した現象です。決して変化しないインフラストラクチャーは安定していますが、その価値は急速に低下します。しかし、変更はサービス停止の主原因でもあるため、IT部門の中核となる能力として、適切なタイミングでリスクと中断を最小限に抑えて作動環境に変更を導入することが求められます。

サービスとソリューションのデプロイメントの中核となる能力に関わる各コンポーネントは、問題なく機能しているサービス・デリバリーに影響する可能性があるすべての変化に対して実行する必要があります。これには通常、ソフトウェア、ハードウェア、管理メカニズム、構成、設備、データベース、ビジネス・アプリケーションが含まれます。含まれることはさほど多くなくても重要なのは組織とプロセスの変更で、これがスキルの利用可能性とパフォーマンスに影響する場合があります。

サービスとソリューションのデプロイメントの中核となる能力に関連する各コンポーネントは、割り当て、予定、承認、配布、同期、設置、監視、活動化などの変更とリリースの活動の全側面に対応します。変更活動は他のどのプロセスからも開始できますが、サービスとソリューションの開発の中核となる能力では通常、デプロイする変更またはリリースの内容が定義されます。

サービスのデリバリーとサポート

サービスのデリバリーとサポートの中核となる能力は、ITサービス・カタログで定義されたITサービスの提供を担当します。予算内に収めるというサービス要件を満たしながら、高い顧客満足度を達成しなければなりません。この中核となる能力には、どの活動を社内で実行し、どの活動を外部サービス・プロバイダーに委託するのかを (ポリシー・ガイドラインの範囲内で) 決定する柔軟性があります。採用するモデルに関係なく、提供するサービスの質とサービス・レベルの全目標の達成にこの中核となる能力が責任を負います。

サービスとサポートを提供するため、この中核となる能力では、インシデント管理、問題管理、構成管理、ライセンス管理、ワークロード管理、テクノロジー更新、パフォーマンス管理、インベントリー (資産) 管理、運用文書管理などの幅広い分野の管理を行わなければなりません。この中核となる能力ではこれらの分野を管理するだけでなく、ツールを特定、実装、維持管理し、これらの機能の実行に必要なスキルを持つスタッフも揃えます。

この中核となる能力の管理の範囲は、定常サービスの運用に限られています。新しいサービス、インフラストラクチャー、および機能は開発プロセスを経て、組織のデプロイメント・ポリシーに従って実稼働環境に導入しなければなりません。交換技術は開発プロセスを経ないで修理処置の一環として導入できますが、それでも変更管理の部分を経る必要があります。緊急事態の場合は、修理後に行うことができますが、それでも構成管理データベースの完全性を保つために行う必要はあります。

サービス・デリバリーの一環として、この中核となる能力では、ハウスキーピング活動と保守活動 (バックアップ機能と復元機能のためのオフサイト・テープ管理、出力管理のための印刷と紙供給、稼働環境の環境および電気仕様の充足、上げ床環境のケーブル図とラベル表示など) も行います。

CBMBoITコンポーネント

コンポーネントのすべてが、ITの能力を問題なく提供するために最終的に寄与するサービスを創出します。説明のために、ITSMの実装の成功に欠かせないコンポーネントの一部について見ていきましょう。

サービス・デリバリーおよびサポートの中核となる能力には以下のコンポーネントがあります。サポート・サービス管理、インフラストラクチャー・リソース管理、インフラストラクチャー運用です。図3の右下隅に太いオレンジ色の枠で示してあります。

サポート・サービス管理

このコンポーネントの主眼は、IT環境における日常操作のサポートです。その特長は、サービス・レベル目標の達成とエンド・ユーザーのITサービスに対する認識の管理にあります。このコンポーネントはITの使用で顧客を補助し、合意したサービス・レベルを満たすパフォーマンスITリソースを利用可能にします。サポート・サービス・マネジメントの機能には、要求管理、問題管理、ITサービス継続性管理、エンド・ユーザー・サポート、デスクサイド・サポート、インシデント管理などがあります。

インフラストラクチャー・リソース管理

このコンポーネントは、組織の物理的コンピューティング資産とネットワークの管理と保守を担当します。このコンポーネントはハードウェアとソフトウェアの両方を管理します。インフラストラクチャー・リソース管理の機能には、予防保守、設備管理、構成管理、インベントリー (資産管理) などがあります。

インフラストラクチャーの運用

このコンポーネントは、ワークロードの実行と組織の物理的資産の運用 (物理的場所に関係なく) を担当します。このコンポーネントの目的は、要求されたサービスを提供し、実行することです。インフラストラクチャー運用の機能には、作動監視、動的パフォーマンス管理、ワークロード管理、出力管理、エラー・リカバリー管理などがあります。

これらのコンポーネントは、環境の日常保守に必要な活動を記述したものです。これらのコンポーネントの効果と効率は、ソリューション・デリバリー/ソリューション・サポート戦略、および運用/インフラストラクチャー/リソース/サポート・サービスの計画が周知徹底されるかどうかに左右されます。


上に戻る



CIOの新しいレンズ

IT分析アプローチは確かに不足していないかも知れません。Microsoft Infrastructure Assessment Framework 8 など、これらのアプローチのほとんどがプロセス、組織、およびテクノロジーの共通要素を評価するものです。それらの多くには、元来 IBM Infrastructure Service Management Architecture (ISMA) モデル 9 で定義されたプロセスのバリエーションが含まれています。

IT Governance Instituteが発行し、現在第4版のCOBIT 10 も分析フレームワークとして一般的に使用されるようになっています。COBITは、ITとビジネス目標を整合させて価値を生み出し、関連リスクを管理する、国際的に適用可能で認知されたITガバナンスおよび管理フレームワークです。COBITは、管理者、ユーザー、およびIS (Information Systems) 監査/管理/セキュリティー実務者向けのリファレンス・フレームワークを提供します。COBITが手引きとなって、企業全体に渡る、固有のITに対するガバナンスを効果的に企業が実装することができます。

同様に、CBMBoITもプロセス活動、組織、およびテクノロジーに基づいています。ただし、IT組織をコンポーネントに区分する機能は独自のものです。各コンポーネントの評価は、独立して行うことも全体の一部として行うこともできます。CBMBoITマップの大きな利点は、一貫した基準を各コンポーネントに適用することが可能で、戦略的計画立案の仕組みが得られることです。コンポーネントを中核構造体として使用するため、IT組織のビジネス戦略を達成する上で消費されるリソースとその価値をCIOが判断することができます。コンポーネントの区分により、現在機能を実行している組織単位、必要な役割に割り当てられている人員数、割り当てられた人材の人件費、コンポーネントをサポートするテクノロジーのコスト、コンポーネントが提供するサービスの有効性などの識別の問題にCIOが対処できます。

前の問い合わせから得られた情報に基づき、複数のマップを作成してITビジネスの現状の特性を評価することができます。このデータを用いることで、広範囲な改善の余地に関する説得力のある新たな知見をCIOが得ることができます。さらにCIOがCBMフレームワークを用いて特定の改善目標の達成に役立てることもできます。

IT組織の現在の健全性の把握に用いるマップの作成は、CBMBoIT Discovery Workshop と呼ばれる容易に使用できるワークショップで行うのが最善です。このワークショップにより、経験豊富なアドバイザーが組織内のコンポーネントを評価して有効性と企業にとっての重要性を確認するプロセスを紹介します。参加者が各コンポーネントの有効性と戦略的価値について投票します。IBMが開発したComponent Assessment Advisor (CAA)ツールを用いて、参加者が自信の評価に対する見解を追加します。このワークショップでは、各コンポーネントを検討して、ITサービスの価値に相対的にどの程度寄与しているかを考慮します。「差別化」と「非差別化」というカテゴリーを用いて、コンポーネントの分析が容易になり、重要であっても差別化はできないコンポーネントと競合における差別化が可能なコンポーネントの区別が可能になります。重要でも差別化ができない活動の例としてはネットワークの可用性が考えられます。この可用性はビジネスの成功に不可欠ですが、消費者の目には競合での差別化には不十分と映る可能性があります。

この活動の結果は即座に現れます。有効性または差別化の程度が高い部分と低い部分を強調したコンポーネント・マップを参加者が見ることができます。CAAツールは多変量問題分析に対応し、複数の要因を同時に考慮することができます。この情報を支出と人員配置に相関させると、投資決定に対する影響が明確になります。有効性が低い分野でも戦略的に差別化する性質のものであれば、人員と支出を増やすことにメリットがある可能性があります。戦略的価値を生まず、特定の社内機能に依存しないコンポーネントは、特に不釣り合いな量のリソースが割り当てられていることが分かった場合には、代替候補にふさわしいでしょう。

ここで登場するのは「ヒート・マップ」で、これは図3でコンポーネントの背景色で示してあるように、類似した特性を示すコンポーネントを明確にしたものです。共通する特性に基づいて、修正措置がこれらのコンポーネントに対して決定されます。たとえば、差別化できることが分かった場合でも (競合での優位性で重要)、有効性が低い状態で実行されているコンポーネント (ウェーブ1コンポーネント) は、すべて優先させることができます。次に優先度が高いもの (ウェーブ2コンポーネント) は差別化ができず効果も小さく、ウェーブ3コンポーネントには、差別化はできなくても多額の予算を消費するものが含まれます。状況に応じて、組織によっては予算金額を自由にして他の優先事項に対処するため、ウェーブ3コンポーネントを選択する場合もあります。

CAAの出力はそれ自体が、新しい方向性の必要性を伝達するために使用するか、主要目標を達成する措置計画を補助できるコミュニケーション・ツールです。

サービスのカテゴリー化

前述のように、戦略的意思決定の重要要因の1つは差別化です。以下のシナリオでは、架空の金融サービス組織であるABC社を取り上げ、差別化コンポーネントの考え方を示します。この企業は、革新的な金融商品の開発と提供では業界のリーダーです。

差別化コンポーネント

競合他社と比較して、ABC社は金融商品を市場に提供する上でイノベーターとしての明確な差別化を行っています。ITにより基幹業務において新しい独自の方法で情報を組み合わせて分析できるため、この企業の製品開発の下支えとしてITが重要な役割を果たしています。この中には、顧客情報ファイル (CIF) およびその他の情報リポジトリーの活用も含まれています。このように個別のデータ・ソースを相乗的に組み合わせて価値のある情報を生み出すことにより、顧客の購入パターンに関する重要な知見が得られます。ABC 社の場合は、「サービス」はITとともにあり、ITがそれ自体を内部的な成功要因として差別化しています。さらに、ABC社は自社を市場で競合他社から差別化することができます。この場合の重要な成功要因は、管理対象のデータ・リポジトリーから価値を生み出すITの革新的な能力です。

CBMBoITの観点からすると、ABC社はITの情報と知識を管理する中核となる能力によって自社を差別化しています。この中核となる能力は明らかに差別化要因であり、この能力に含まれる一部のコンポーネントがこの企業に高い価値を付加していますが、この能力を企業全体に提供するために必要なコンポーネントのすべてが差別化要因とは限りません。CIOがITの各種コンポーネントを外部に委託しようとすれば、差別化されたITサービスの提供のために重要なコンポーネントは何なのかを理解することが欠かせないでしょう。ABC社のCIOは、これらのコンポーネントに割り当てられているリソースを特定し、そのリソースにIT予算全体の中から大きな割合を投資すればよいでしょう。これを行う場合、差別化に寄与しない活動を特定して、低コストの調達オプションに基づいて経費を節約するためにCBMが役立ちます。この節約した部分を差別化要因となるコンポーネントに投資することが可能になります。

非差別化コンポーネント

CBMBoITを用いれば、各コンポーネントを分解して、役割、テクノロジー、およびサービスの生成に用いられるプロセスとコストを明らかにすることができます。このレベルまで分解することにより、ITのビジネスがどのように運営されているかを確認できる独自の「レンズ」が得られます。ABC社の場合、差別化要因となる中核となる能力の1例を挙げています。その他の中核となる能力と関連コンポーネントを検討すると、人材 (HR) 管理と日常運用の中核となる能力が ABC 社を差別化しないものであることが分かりました。ここでは、組織のIT戦略によって、一部の環境ではこれらの能力が差別化要因となるコンポーネントになることに注意することが重要です。

CBMBoITを用いれば、これらのコンポーネントを個別に検討できます。CIOがITビジネス管理の中核となる能力を用いて、人材コンポーネントが差別化要因となっているかどうかを判断できます。このコンポーネントの目的は、予算内で適切なスキル・バランスを保つキャリア・パス、職務、および職務体系などのIT特定の人材管理活動を行うことです。ABC社のCIOは、人材管理機能はITのビジネスの成功に重要ですが、この組織の中核となる能力ではないという結論に達するでしょう。人材管理計画や予算の立案などの活動はITのビジネスを直接差別化するものではないため、CIOは社内の現レベルのITリソースと関連コストは別の項目で用いるのが適切で、したがって利点の再評価が必要と結論付けます。自社内の他の部門に委託するなどの選択肢も検討されるでしょう。

インフラストラクチャー運用コンポーネントは、組織のワークロードの実行と運用および物理的資産の運用 (物理的場所に関係なく) を担当します。このコンポーネントの目的は、要求されたサービスを提供し、実行することです。より具体的には、作動監視、動的パフォーマンス管理、ワークロード管理、出力管理、インフラストラクチャー・リカバリー管理に関連するプロセス、テクノロジー、および役割を記述したものです。

CIOは、このコンポーネントがサービスの提供に重要で、サービスは最低限のコストと最大限の効率で提供する必要があることを理解しています。ただしこの場合には、差別化要因ではありません。CIOは、世界に通用する外部サービス・プロバイダーによって、より低いコストで現在と同じかより高いサービスのレベルでコンポーネントを提供することができる外注の選択肢が多数あることを認識しました。この情報により、外注の選択肢をさらに調査することになりました。

CBMBoITフレームワークに関連する概念を用いて、各コンポーネントに活動、役割、情報、およびテクノロジーの特有の集合があることをCIOは理解しました。全体としては、複数のコンポーネントが相互に作用してIT対応ビジネス・サービスを実現します。CIOは CBMBoITマップを用いて、組織が説明責任を保つ必要があるコンポーネントと考えられる代替サプライヤーとの間の相互接続点を特定できます。この交差部分は、実行責任と説明責任の決定に役立つような明確かつ具体的な方法で明示することができます。コンポーネントの差別化的な性質は、ITサービス・デリバリーとITサービスの顧客の整合が明確に理解されて初めて現れます。

ITとビジネスの整合

戦略は、顧客のニーズに基づく統合された一連の選択項目の作成と実行と定義されます。戦略とは、本質的な位置付け、競合上の優位性、および持続する価値 (競合上の優位性) と動的な環境での利益の創出に必要な活動の構成、を明らかにしたものです。

したがって、ITおよびビジネスの整合コンポーネントはIT戦略とビジネス戦略の整合に取り組みます。多くの場合、ビジネス戦略と整合する明文化されたIT戦略の欠如が、解決すべき問題の主要原因の1つとなります。効果的な転換活動を開始するには、最低限ITに関する組織の戦略的意図 (競合における差別化を達成するためにどのように利用するか) を意識することが重要です。例えるならば、弓の射手が的を射抜く能力を的を与えずに批評しようとするようなものです。最低限、射手が正しい方向を指しているかを確認すればよいでしょう。ITに関する戦略的意図を理解することは、CBMBoITを分析フレームワークとして用いた場合に各コンポーネントに差別化要因があるのか、ないのか判断する上で非常に重要な要素です。したがってCIOは、適切なIT戦略を立案できるまで待つか、当座の間はITに関する代用の戦略フレームワークを利用して、他の転換活動を開始できるようにするかを選択しなければなりません。

カスタマー・リレーションシップ・プロファイル 11 は、整合性を当面理解するための代用フレームワークとなります。サービス・プロバイダー・プロファイルをIT担当役員とビジネス担当役員と共同して作成すれば、カスタマー・リレーションシップ・プロファイルはビジネス戦略と緊密に統合された適切なIT戦略を作成できるまで、実際のIT戦略の代用の役割を果たします。これによって、統一された IT 戦略を策定する取り組みと並行して組織の分析を進めることができます。より厳密な戦略ができれば、カスタマー・リレーションシップ・プロファイルに基づいて作成された推奨事項と構想を確認するか、修正して整合性を高めることができますが、最低限「弓の射手」が最初に狙った方向が分かる訳です。

カスタマー・リレーションシップ・プロファイル

カスタマー・リレーションシップ・プロファイルは、企業がIT機能を採用する意図を把握したものです。IT部門の能力は、汎用品 (最低限のコストでの基本ITサービス)、公共サービス (基本サービスであるが、サービスの質に重点が置かれ、汎用品よりもコストが恐らく高い)、パートナー (ビジネス・サービスの提供に不可欠な構成要素としてのITサービス)、またはイネーブラー (競合における差別化の基盤を提供することを期待されるIT 部門)のいずれかとして採用できます。これらの選択肢の個々が、有効なカスタマー・リレーションシップ・プロファイルとなり得ます。適切なIT戦略がまだ決まっていない場合には、カスタマー・リレーションシップがCBMBoITを用いて分析を始める手段となります。表2は、各種カスタマー・リレーションシップ・プロファイルの特性を示したものです。


表2 カスタマー・リレーションシップ・プロファイルの特性
汎用品公共サービスパートナーイネーブラー
企業/IT投資戦略プロジェクト・ベースポートフォリオ管理ベース拡張されたポートフォリオ・ベース選択肢ベース
ITと関わる企業管理者ITユーザー事業単位管理者上級役員チーム取締役会
企業から見た ITの寄与技術サービスの提供者サービス・レベルの観点ITの寄与のより高い評価、戦略の達成競合の姿勢
ITの企業での役割基本的管理機能を最低限のコストで自動化ITビジネスの実現手段企業の境界の拡大企業のリーダー、同程度の重要性
企業から見たIT技術的機能の提供者、必要悪組織的効率の基礎組織の境界拡大を可能にする実現手段企業ビジョンの実現手段
ITリーダー副社長/情報サービス役員の役職、社長やCEOの直属ではない社長やCEOの直属ではないCIOの役職事業単位と同レベル、組織上の重要性は異なる場合がある組織の上級役員、社長またはCEOの直属
IT管理アプローチ経費中心サービス中心利益中心価値中心
IT管理フォーカス組織の効率組織の有効性ビジネス目標を支える明確なビジョン/使命
有効性/効率
組織の影響範囲
組織の戦略と競争力
IT測定予算ベースお客様の満足度調査お客様の満足度調査、ITサービス調査、バランス・スコアカード投資収益率 (またはその派生項目)

ほとんどの環境で、適切なカスタマー・リレーションシップ・プロファイルとはどうあるべきかについて明確なコンセンサスは得られないでしょう。企業内の各事業部がIT機能をさまざまなやり方で導入しようとします。汎用品サービス、公共サービス、またはパートナー・サービスを望む事業部もあれば、イネーブラー・サービスを望む事業部もあります。ほとんどの環境に複数のプロファイルの特性がありますが、通常はあるプロファイルが支配的になり、その他のプロファイルはさまざまな程度に影響を与えるだけになります。CIOにとっての課題は、サポートを受けるさまざまな顧客を満足させる一連のサービスをどのように定義し、提供するかです。

カスタマー・リレーションシップ・プロファイルを見極めるプロセスからITと企業の他の部分との関係に関する知見が得られますが、主な目的は整合の問題を明らかにすることです。すなわち、採用するITについてビジネス幹部とIT幹部間での合意があるかどうかを確認することです。既存のプロファイルの洞察は組織の構造の中に見て取れますが、最も明示的なのはITが提供するサービスの種類と、それとは重要性は変わらないITが提供しないサービスです。


上に戻る



ITのビジネスとしての側面のためのITプロセス

IBMは、CBMBoITフレームワークの各コンポーネントに対して特定のプロセス活動を定義しています。PRM-IT 12 によって定義されたプロセス活動は、ITILなどの実質的なITプロセス標準に基づいています。

PRM-ITモデルの観点

すべてのIT活動の焦点、またITの価値に責任を負う幹部 は、CIOです。したがって、PRM-ITはITの範囲内の活動をCIOの視点から見たものです。ITの全側面が見えるのはこの視点だけです。PRM-ITプロセスはあらゆる意味で真のプロセスであるため、代表的な活動の役割を検討することができます。すなわち各活動の定義、管理、実行、および測定を誰が行うのかということです。

IBMは、その幅広いIT管理の経験を元に、ITIL Version 2の内容をPRM-ITモデルで補完しました。ITILで定義されたベスト・プラクティスの精神と内容を尊重しつつ、PRM-ITではプロセス・モデルを厳密に設計し、運用の範囲を超えるために必要な一連のIT管理プロセスを明らかにしています。PRM-ITは、変化するビジネスとテクノロジーの状態に対応すると同時に、既存のシステムの複雑さ管理する理にかなった意思決定を用いる管理フレームワークを定義するのに役立ちます。

サービス・ポートフォリオの変更を事前に可視化することで、IT管理者は顧客が十分な知識を持った上で消費の決定を行うことができるように支援し、インフラストラクチャーの需要予測をよりよく行えます。すべての分野で効率が高まるため、混成調達モデルからコストを大幅に節減するために優れた運用手順の作成と標準化をIT管理者が促進できます。集中化された専門スタッフからシームレスなオンデマンド・グローバル調達まで、IT管理者は企業に対して新しい選択肢を提供できます。

PRM-ITモデルの手引き原則

PRM-ITの背景にある主要な概念の1つは、採用された組織やテクノロジーに関係なく、どのIT環境を管理する場合でも必要な一連の基本的プロセスがあるということです。これらのプロセスは単独では存在も機能もしませんが、相互に関係し、作用します。これが正しいというただ1つのプロセスの分解方法も、特定のITプロセスの処理方法が別の処理方法より優れていることを実証する手段もありません。これらの判断を下すためには、実装特定のコンテキストが必ず必要とされます。

主要な設計特性を満たすため、図4に示すようにPRM-ITモデルは、包括的、全体的で、中立 (テクノロジーと組織構造に関し)であり、拡張性を備えかつ柔軟に設計されています。ITILベスト・プラクティス事例との整合のため、PRM-ITはITILサービス・マネジメントと整合が取れており、他のITIL標準の関連する側面が組み込まれています。


図 4. PRM-ITモデル

PRM-ITは、IBM内のプロセス・モデルの第3世代です。PRM-ITはIBM IT Process Model (ITPM) が進化したもので、IBM IT Process Modelは1970年代後期に文書化されたIBM Information Systems Management Architecture (ISMA) が進化したものです。PRM-ITには、30年以上に渡るIBMのIT管理での経験が盛り込まれています。


上に戻る



結論

業界を問わず、ITの役割と目的は時間とともに常に進化しています。この進化の大部分はテクノロジーの進歩に根ざしており、目標はより速い、より回復力のある統合度の高いソリューションをお客様に提供することです。これらの条件は依然として密接に関係していますが、進化の現段階の焦点はテクノロジー・ベースのフォーカスからサービス・ベースのフォーカスへの移行です。そのために、ITSMの中核となる観点でのこの移行の特長は、ITをビジネスのように管理し、サービスを顧客が生産し消費する主要製品とすることです。

CBMBoITは、強力で柔軟性のある新しいITの観点が戦略的意思決定を支援する手段となります。CBMBoITは、固有の目的を持つビジネス活動 (すなわちコンポーネント) の個別の集合を介したサービス・デリバリーのバリュー・チェーンです。このコンポーネント・ベースのアプローチにより、企業の内部または外部のいずれで作動するかに関係なく各個別エンティティーの分析、また共通プロセス、情報システム、およびSLAを通じたあるコンポーネントとその他のコンポーネントの関係の分析が可能です。

架空のIT環境の分析例により概念を明確にし、CBMBoITの観点から考えられる結果を取り上げ、従来の個別のアプローチでは見逃される可能性がある戦略の選択肢を明らかにする上でCBMBoIT Discovery Workshopがどのように幹部を支援するのかを示しました。

疑いなく、ISO 20000などのIT管理プロセス標準と同様に、サービス・エンジニアリングの分野も進化します。CBMBoITとPRM-ITの将来のリリースには、これらの分野の内容の進化と、世界各地で大小規模のIT導入の管理を行ったIBMの経験の両方を盛り込む予定です。

*IBM Corporation の米国およびその他の国における商標または登録商標です。
**Information Systems Audit and Control Association、United Kingdom Office of Government Commerce、または Motorola, Inc の米国およびその他の国における商標または登録商標です。

引用文献

  1. L. S. Sanford、D. Taylor 共著、「Let Go to Grow: Escaping the Commodity Trap」、Prentice Hall, Englewood Cliffs, NJ (2005 年)
  2. Service Component Reference Model, E-Gov, Federal Enterprise Architecture
  3. The Component Model for the Business of IT」、IBM Corporation
  4. IT Infrastructure Library, IT Service Management」、Office of Government Commerce
  5. ISO 20000 IT Service Management Standards」、Standards Direct, International Standards and Documentation
  6. G. Byrne、D. Lubowe、A. Blitz 共著、「Driving Operational Innovation Using Lean Six Sigma」、IBM Global Business Services (2007 年 1 月)
  7. Accounting Oversight Information Center, Sarbanes- Oxley, Financial and Accounting Disclosure Information
  8. Infrastructure Assessment Framework」、Microsoft Corporation (2007 年)
  9. IBM Service Management: Practical Solutions for Today Based on 25 Years of Continuous Thought Leadership」、IBM Global Services (2007 年 3 月)
  10. COBIT」、Information Systems Audit and Control Association (ISACA)
  11. M. Porter 著、「Competitive Advantage」Free Press, New York (1985 年)
  12. IBM Service Management—Glossary」、IBM Corporation

2007 年 3 月 10 日に発表許可
2007 年 7 月 11 日に オンライン公開

Mark Ernest
IBM Global Technology Services, 903 Israel Creek Court, Knoxville MD 21758 (lernest@us.ibm.com).Ernest 氏は、Global Technology Services (GTS) の Server Service Product Line (SPL) の最高技術責任者です。また、Ernest 氏は IBM Academy of Technology および GTS Architecture Board のメンバーであり、IT Optimization, Enterprise Systems Management および IT Cost and Value 慣例委員会の中核チームに関わっています。これらのグループは、IT コンサルティング関連の作業製品、ツール、および技法の作成を担当しています。Server SPL の CTO に任命される以前には、Ernest 氏の主な職務は IT 最適化方法論の開発、展開、および応用を担当するチームのリーダーでした。Ernest 氏は、CBMBoIT とその前身である IBM IT Process Model を作成したチームのリーダーでした。また、認定 ITIL 実務者でもあります。Ernest 氏は、29 年に及ぶ IBM でのキャリアをフィールド・エンジニアリング事業部で技術員としてスタートし、その後プログラム・サポート担当者となりました。また Washington Systems Center に配属され、1992 年には IBM IT コンサルティング・コンピテンシーの設立メンバーとなることを要請されました。2001 年 4 月に IBM Corporate Technology Council により Distinguished Engineer に選ばれました。

John M. Nisavic
IBM Global Technology Services, 50 Bathurst St., Waterloo, Ontario, Canada, N2V 2C5 (johnn@ca.ibm.com).Nisavic 氏は、ビジネスとしての IT 管理を専門とするマネージング・コンサルタントです。Global Technology Services の IT Strategy and Architecture SPL (Service Product Line) で勤務しています。IT 分野で従事した 25 年間に、Nisavic 氏はボトムアップ (テクノロジーとプロセス) およびトップダウン (戦略的) を経験し、これを効率的かつ効果的な IT サービスのより適切な定義、設計、および提供を求めている IT 幹部に提供しています。また、IT 最適化方法論、CBMBoIT、および IT サービス・マネジメント・コンサルティングの主導的実務者です。Nisavic 氏は、実現のためのツールおよび技法の開発を主導して、この取り組みに参加しています。また、認定 ITIL 実務者であり、IT 最適化実践コミュニティーの共同リーダーでもあります。

目次へ戻る



上に戻る


ページオプション

JavaScript を要するドキュメントオプションは表示されません

原文はこちら

原文はこちら




    日本IBMについて プライバシー お問い合わせ