|  | レベル: 中級 高安 啓至, オートノミック・コンピューティング担当技術理事, IBM
2006年 9月 15日 今回は、IBMのオートノミック・コンピューティングのブループリントで紹介されている、ACのコア技術について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。
はじめに
こんにちは。IBMの高安です。今回は、IBMのオートノミック・コンピューティングのブループリントで紹介されている、ACのコア技術について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。
オートノミック・コンピューティングの実現に必要な機能
IBMのオートノミック開発チーム率いる全社的なACイニシアティブが取り組んでいるのが、IBM全製品に共通のコア技術の設計・開発・テストです。このコア技術を各製品開発グループ (OS, Tivoli, WAS, DB2 UDBなど)に提供することにより、ACブループリントに基づいたAC技術実装製品の早期出荷に役立てようとしています。さらに、このような標準に則ったAC技術をソフトウェア・ベンダーやシステム・インテグレータにもオープンにしてACの推進をしていきます。ACイニシアチブでは、「Solution Knowledge」、「Common System Administration」、「Problem Determination」、「Autonomic Monitoring」、「Complex Analysis」、「Policy for Autonomic Managers」、「Transaction Measurements」の7つをAC推進の前提機能と定義して、この製品化のためのコア技術を開発しています。
-
Solution Knowledge(ソリューション・インストールと展開のための技術)
現在、ばらばらの導入ツール、構成情報がシステムを管理するネックとなっています。共通のSolution Knowledgeは、あらゆる種類のソフトウェア製品の導入にプラットフォームの違いを越えて一貫した導入技術を提供し、導入構成時のエラーを減らし、導入時間を短縮します。さらに、導入情報や構成情報を一貫した形で収集することにより、問題判別や最適化など、導入以降にオートノミック・マネージャーが必要とする知識を生成しようというものです。
-
Common System Administration(共通システム管理)
プラットフォームごとのばらばらのコンソールが正確な監視を阻害しています。ユーザーが個々のシステムや製品を管理するのではなく、ソリューションを管理できるよう、サーバー、ソフトウェア、およびストレージ製品のすべての管理コンソール機能を収容できるポータルを提供します。これにはWebベースの表示スタイルとポートレット技術を採用されています。統合ソリューション・コンソール上の表示と動作の一貫性は、ACシステムの管理効率改善の鍵であり、この実現には継続的な努力と多くの製品開発者の協調が必要です。
-
Problem Determination(問題判別)
ここでもばらばらのログ/トレース情報の形式と内容が問題です。ACの自己修復機能と自己最適化機能を実現するのに重要なログとトレースの標準インターフェースおよびフォーマットを導入します。これにより収集データの形式、内容、構成などが標準化され、共通の問題判別アーキテクチャーが実現されます。複数データソースの関連付けを可能とし、問題分析時間を短縮し、根本原因追求がしやすくなります。標準化された新規システムを待つのではなく、導入済みのレガシー・システムのデータを標準フォーマットに変換するログ/トレース・ツール(アダプター/エージェント)をコア技術として開発しました。
-
Autonomic Monitoring(オートノミック・マネージメント)
Tivoliのモニタリング・エンジンとなるものです。CIM (Common Information Model), SNMP (Simple Networking Management Protocol), WMI (Windows Management Instrumentation), JMX(Java Management Extensions)といった業界標準のセンサーから情報を収集し、繰り返し発生する問題を選別し(Monitor)、複数データソースの関連付け、根本原因の特定(Analyze)、修正アクションの開始・自動化(PlanとExecute)するAC制御ループを完結させる機能が提供されます。他のISVパッケージ開発者が、このコア技術を利用して特定のアプリケーションやリソースを効率的に管理するオートノミック・マネージャーを組み込むことが可能となります。
-
Complex Analysis(高度な分析)
オートノミック・マネージャー開発には、高速で再利用可能な拡張性のある学習判断コンポーネントが必要です。そのために既に10年近くの実績ある「ABLE (IBM Agent Building and Learning Environment)」ルール・エンジンが利用できます。このルール・エンジンを使用して、さまざまな知識の獲得・共有、経験から学習し将来の状況を予測、イベントを関連付けたりポリシーを適用して実行するオートノミック・マネージャーが開発できます。
-
Policy for Autonomic Managers(ポリシー・ベースの管理)
ポリシーはオートノミック・マネージャーが決定を行う際に使用する知識の重要な部分であり、AC制御ループの「計画」部分を制御します。ACには様々なオートノミック・マネージャーが存在し、これらを緊密に動作させるためには、標準的な一貫したポリシーを規定する必要があります。コア技術としてのポリシー・ツールは、複数製品に適用可能なポリシー定義と管理インフラストラクチャーを提供し、オートノミック・マネージャー間でポリシー共用を実現します。
-
Transaction Measurements(異機種間ワークロード管理)
オートノミック・マネージャーが異機種混合システムのリソースを統合して、分散トランザクション環境を管理するには、システム境界を越えたトランザクション測定機能が必要です。この計測を実現する鍵となるのがARM (Application Response Measurement) APIです。このARMをWASなどのミドルウェアに実装したのが、ビジネス・ワークロード管理技術です。サービス・クラスを定義し、優先順位を決定し、その処理に使用されるシステムを把握し、それらを適切に計測します。この技術により、オートノミック・マネージャーはリソース割り振りを分析し、ポリシーに基づいて複数システム間のパフォーマンスを最適化し、システム内に潜在するボトルネックを特定します。
これらのコア技術が提供するAC機能により、お客様はオンデマンドなビジネス環境にダイナミックに対応できる、エンド・ツー・エンドのオートノミック・コンピューティングを早期に実現することができます。また、既存の資産を保護し、オートノミック環境に移行することができるようになります。一方、開発ベンダーは、各製品のオートノミック化を促進することが出来ます。これらのコア技術の一部は、すでにdeveloperWorksからダウンロード可能となっています。
著者について  | 
|  | 1970年、日本IBM社に入社。お客様担当SEとして大型汎用機によるOLTPシステム、中小型機による分散処理システム、PCオフィスシステムなどのシステム構築に携わる。その後、ITアーキテクトとしてSIプロジェクトの高性能、高可用性基盤設計を担当。長野オリンピックのチーフ・アーキテクト、シドニー・オリンピックのパフォーマンス・アーキテクトを歴任。2001年、Distinguished Engineerに任命。2002年から日本IBMのオートノミック・コンピューティング・ドメインリーダーを担当。 |
記事の評価
|  |
|