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オートノミック・コンピューティングの最新動向: オートノミック・システムにおける人の役割

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レベル: 中級

Brent Miller (bamiller@us.ibm.com), Senior Technical Staff Member, IBM

2005年 11月 01日

オートノミック・コンピューティングによって、ITシステムは自分で自分を管理できるようになります。オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーは、自己管理のITシステムを構築するための基礎を提供します。オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーでは、5つの構成ブロックを定義しています。つまりオートノミック・マネージャー、マニュアル・マネージャー、タッチポイント、ナレッジ・ソース、そしてエンタープライズ・サービス・バス用のオートノミック・コンピューティング使用パターン、という5つです。このコラムでは、その内の1つ、マニュアル・マネージャーを取り上げます。そして、自動化された管理機能と人とが、どのように対話動作を行うかを見て行きます。

はじめに

『オートノミック・コンピューティングの最新動向』の前回の記事では、オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーに焦点を当てたシリーズの第3回目でした。そこでは、オートノミック・システムにおけるナレッジの役割を説明しました。今回は、オートノミック・アーキテクチャーに関するシリーズの続きとして、自己管理のオートノミック・システムにおける『人』の役割について、『マニュアル・マネージャー』と呼ばれる構成ブロックを含めて検証します。

ここでは、IT専門家が管理タスクをシステムに任せることによって作業を自動化できること、また、人にとって適切な自動化レベルをどのように決定するのか、そして、マニュアル・マネージャーとオートノミック・マネージャーがどのように対話動作を行うかについて説明します。では、IT専門家が、最新のオートノミック・コンピューティング技術のおかげでいかに有利になるかを見て行きましょう。




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機械で人を置き換えるのではありません

自動化によって、人は退屈で繰り返しの多い作業から解放されます。今日の複雑なITシステムの管理には、こうした、退屈で繰り返しの多い作業を大量に伴うものです(例えばユーザーやユーザーに付随する信用証明情報の追加削除、アクセス制御、増大した作業負荷に対応するための、新しいサーバーの配備や調達、パフォーマンス最適化のための構成パラメーターの調整など)。ITインフラ上で実行するビジネス・アプリケーションの要求に応えるよう、システムを順調に稼働させるためには、IT専門家に充分な知識や経験が要求されます。

IT管理者は多くの場合、エンタープライズ・システムの、ある特定部分(データベースやアプリケーション・サーバー、ネットワーク、あるいはアプリケーション)を管理する専門家です。彼らは管理コンソールを利用して対象リソースを常に監視し、こうしたリソースにおいて観察される状態に応答します。

完全に手動による管理システムは、人による間違いの影響を受けやすいものです(例えば、管理対象リソースに起こり得る重要な状況を見逃す、そうした状況に対して誤ったアクションを取る、など)。それだけではなく、複数の管理者が、自分たちの担当する様々なリソースをお互いに協力し合いながら管理するのは難しく、そのためビジネス・ゴール達成のための全体的なシステム可用性やパフォーマンスの最適化も行いにくくなります。

こうした作業の一部を自動化できれば(例えば適切に実装されたリソースを使用して監視を行い、リソースからレポートされる情報に基づいてシンプトン-症状-を認識し、こうしたリソースに対する適切な修正動作を決定する、などが自律的に行えれば)、システム管理の効率や効果を改善することができます。

これはつまり、オートノミック・コンピューティングによって、人による介入が必要なくなることを意味するのでしょうか。これからこの記事で説明する通り、決してそんなことはありません。むしろ逆であり、退屈で繰り返しの多い、間違いを起こしやすい作業を自動化することによって、IT専門家は、より高い価値を持つ作業に集中できるようになるのです。例えば、自己管理のオートノミック・システムが、決まりきった作業の大部分を自分で管理できるようになれば、管理者は他の管理者やビジネス上のマネージャーと協力して、システム全体を最適化することに集中できるようになり、彼らが自分たちの「サイロ」(彼らが直接管理する限定的なリソース・セット)に閉じこもるのを防ぐことができます。IT専門家は、管理対象リソースをいじり回すために費やすエネルギーを減らすことができ、一部の管理タスクを自動化するためにシステムが使用するポリシーや、その他の形式のナレッジを開発することに、より多くの時間をかけられるようになります。これによってIT専門家の管理するリソースが、ビジネス・ゴール(顧客とのサービスレベル・アグリーメントにコスト効率良く合致する、など)を達成するための全体的なシステム堅牢性に、確実に貢献できるようになります。




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すべてを自動化するのではありません

ほとんどの企業は、企業の中の全管理タスクが完全自動化されるという状態に到達しようとしてオートノミック・コンピューティングを採用することはないでしょう。「An Architectural Blueprint for Autonomic Computing」(参考文献)では、次のように記述されています。

IT 環境へ自己管理機能を組み込むことは、進化するプロセスです。自己管理オートノミック・テクノロジーは、プロセスとスキルをサポートし、最終的には各組織によって実装されます。この進化の過程を通して、コンピューター業界はさらに自己管理機能テクノロジーを発展させて、引き続きスタッフの生産性を向上させ、ビジネスの回復力を高め、最終的には運用コストを削減することを支援します。

多くのITサービス管理タスクは、アクションを承認し、レポートを解釈し、そしてこうしたプロセスに関わる他の人(企業内の他のIT専門家やサプライヤー、顧客など)とコミュニケーションするために、人の介在を要求します。多くの企業では、こうした作業は、人の介在によって処理することが最善な場合が多いのです。

オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーでは、こうした管理タスクに責任を持つ人が、システムにタスクを委任しようとした時にタスクを自動化できるようになっています。この自動化は、システムを管理するIT専門家の効率と効果を改善するために行われるのであって、IT専門家を捨て去るための、自動化のための自動化ではありません。




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ITサービス管理タスクを委任するのです

「An Architectural Blueprint for Autonomic Computing」では、次のように記述されています。

高度なオートノミック機能に向かうこの進化は、次に示すように、オートノミック・コンピューティングの適用モデルを使用して説明することができます。図1はオートノミック・コンピューティングの採用モデルを示しています。

図1.オートノミック・コンピューティングの適用モデル
図1.オートノミック・コンピューティングの適用モデル
オートノミック・コンピューティングの適用モデルは、IBM グローバル・サービスで作成されたものです。それは、ビジネスが現在のインフラストラクチャーと組織の持つオートノミック機能の度合いを調整し、 オートノミックの可能性を伸ばすためのアクション計画を立てるための方法論を提供します。

図1の中に示す『サービス・フロー(service flows)』は、ITサービス管理タスク(インシデント管理や問題管理、変更管理など)を表します。こうしたプロセスはアクティビティーから構成されており、アクティビティーはタスクから構成されています。前のセクションで説明したように、こうしたプロセスの管理に責任を持つIT専門家は、オートノミック・システムにタスクを委任することを選択できるのです。

しかしIT専門家は、どのタスクを自動化すべきか(つまり、どのタスクを委任すべきか)を、どのように選択するのでしょう。プロセスや顧客でのインストールはそれぞれ異なるものですが、一般的に言ってIT専門家は、タスクの自動化による価値と、自動化の実現可能性を考慮する必要があります。自動化による価値は、当然ながら、自動化によって実現される改善に基づいて、ビジネスによって判断されます。実現可能性は、タスクの自動化に必要なデータを監視するための適切な実装が用意されているかどうか、ある適当なオートノミック・マネージャーが使用できるようなナレッジが存在するかどうかに基づいて判断されます(ナレッジに関しては、『オートノミック・コンピューティングの最新動向』の、前回の記事で詳細に説明されています)。

ITサービス管理タスクの委任プロセスがどのように動作するかを理解するために、「An Architectural Blueprint for Autonomic Computing」から引用した次の例を考えてみましょう。この例では、ある状況における変更管理プロセスの「実装変更(implement change)」タスクを、どのように自動化するかを記述しています。

システムで影響を受ける可能性がある変更の 1 つに、新しいリソースのプロビジョニング (配置) があります。IT プロフェッショナルは、このようなタスクをプロビジョニング・システムに委任することを選択できます。 このシステムは、サーバーとネットワーク・リソースのプロビジョニングだけでなく、 ソフトウェアの配布とインストールも自動化できるので、 変更管理プロセスの「変更の実装」タスクを自動化することができます。 管理タスクをシステムに委任したい場合、IT プロフェッショナルのオートノミック管理機能に対する信頼度が高くなければなりません。・・・つまり、オートノミック・マネージャーが、IT プロフェッショナルが定期的に実行しているアクションを一貫して推奨すれば、 IT プロフェッショナルは対応するタスクをオートノミック・マネージャーに任せることによってこれらのアクションを自動化する気持ちになります。

従ってこれは、ITサービス管理タスクの委任に関する問題なのです。次のセクションでは、オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーによって、この委任を実現する方法を検証します。




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マニュアル・マネージャー構成ブロック

「An Architectural Blueprint for Autonomic Computing」では以下のように言っています。

マニュアル・マネージャーは、IT プロフェッショナルが管理機能を手動で実行することを可能にするユーザー・インターフェースの実装です。 マニュアル・マネージャーは同じレベルの他のオートノミック・マネージャーと連携したり、 「低い」レベルで動作しているオートノミック・マネージャーや他の IT プロフェッショナルのオーケストレーションを行ったりすることができます。 マニュアル・マネージャーという構成要素は、アーキテクチャー面で人的な活動を表現したもので、一般に管理コンソールを使用するユーザーが含まれます。マニュアル・マネージャーによって、 IT プロフェッショナルは管理機能をオートノミック・マネージャーに任せることができます。

従って、ある意味では、オートノミック・マネージャーとマニュアル・マネージャーは同じような機能を実行すると考えることもできますが、潜在的には、両者の提供するサービスの品質は異なる可能性があります。例えば、オートノミック・マネージャーは管理対象リソースによるイベント・レポートをサブスクライブすることによって管理対象リソースを監視することができ、マニュアル・マネージャーも同じことができます。必要なナレッジとロジックを備えさえすれば、オートノミック・マネージャーはこうしたイベントを相関させ、自律的な手段によってシンプトン(症状)を認識できます。マニュアル・マネージャーも同じことができますが、マニュアル・マネージャーの場合は、結果として起こるシンプトン(症状)を判断するために、管理者という「人」に頼る必要があるかも知れません(この「人」が、コンソールでイベントを観察し、頭の中にある知識を使って頭の中でイベントを相関させるのです)。どちらの場合も、結果は同じかも知れませんが、マニュアル・マネージャーの方が、結果に至るまでの時間が長いかも知れません。逆に、オートノミック・マネージャーに必要なナレッジがまだ開発されていない場合には、マニュアル・マネージャーに委任するのは不適当かも知れません。先に書いた通り、あまり自動化に向いておらず、人が行った方が適切なタスク、言い換えればアーキテクチャー的にマニュアル・マネージャーに最適なタスクも幾つかあるのです。

マニュアル・マネージャーとオートノミック・マネージャーのアイコン表現を図2に示します。


図2.マニュアル・マネージャーとオートノミック・マネージャーの構成ブロックアイコン
図2.マニュアル・マネージャーとオートノミック・マネージャーの構成ブロックアイコン

どちらのアイコンにも、下の方に青い楕円があることに注意してください。この青い楕円は、管理サービス・インターフェースを表します。オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーの考え方からすると、概念的に(そして、極端に言って、ある実装の中でインスタンス化される場合には)、これら2つの青い楕円は等価です。つまり、マニュアル・マネージャーがリソースやオートノミック・マネージャーを管理するために使用するインターフェースやオペレーションは、オートノミック・マネージャーがリソースや他のオートノミック・マネージャーを管理するために使用するインターフェースやオペレーションと同じであるべきなのです。これによって透明な委任、つまり、リソースがマニュアル・マネージャー(「人」である管理者)によって管理されるのか、オートノミック・マネージャー(IT専門家が委任した、自動化されたタスク管理)によって管理されるのか、リソースは関知せずに済むような委任が可能になります。

この、共通な管理インターフェースによって、マニュアル・マネージャーはオートノミック・マネージャーを管理できるようになり、しかも、こうしたオートノミック・マネージャーにどのITサービス管理タスクを委任するかを、いつでも選択できるようになるのです。オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーでは、(マニュアル・マネージャーとオートノミック・マネージャーを別々に扱うのではなく)全ての場合に同じ標準管理インターフェースを使うことによって、こうした委任を継ぎ目なしに行うことができます。つまるところオートノミック・マネージャーは、「人」が委任しようと決めた管理タスクを、単純に自動化するのです。




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まとめ

オートノミック・コンピューティングは、自動化によって人を置き換えようとするものではなく、標準に基づくアーキテクチャーを提供するものです。それによって、一定の管理タスクをシステムに委任できるようになり、自己管理のオートノミック・システムを実現することができます。その結果、IT専門家は退屈な作業から解放され、ビジネス・ゴールの実現に直結した、より価値の高い作業に集中できるのです。

今後の『オートノミック・コンピューティングの最新動向』では、この記事や、これまで3回の記事の中で説明したアーキテクチャー構成ブロックによって実現される、オートノミック・コンピューティングでの他の先進的な側面を取り上げる予定です。



参考文献

  • Whitepaper(白書)「An Architectural Blueprint for Autonomic Computing」(IBM Corporation, 2004年10月)は、オートノミック・コンピューティング・アーキテクチャーの概要を、マニュアル・マネージャーやその他の構成ブロックに関する情報を含めて解説しています。

  • developerWorksに掲載されている『オートノミック・コンピューティングの最新動向』の前回の記事を読んで、ナレッジについて学んでください。


著者について

Brent A. MillerはIBMのオートノミック・コンピューティング・アーキテクチャー・チームの一員であり、自己修復アーキテクチャー開発のリーダーです。IBMでの勤務は21年にわたり、プリンター開発、モバイル・クライアント、モバイル・ソフトウェア、パーベイシブ・コンピューティングなどに従事してきています。




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