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オートノミック・コンピューティングの最新動向: オートノミック・コンピューティングにおける「標準化」動向

オートノミック・コンピューティングにおける標準技術の利用

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レベル: 初級

Brent Miller (bamiller@us.ibm.com), Senior Technical Staff Member, IBM 

2005年 3月 29日

IT業界全体で、オートノミック・コンピューティング技術が勢いを得ています。この記事では、オートノミック・コンピューティング技術で鍵となる領域の標準化が、なぜ重要なのかを説明議論します。そして、オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーを支える標準化の状況や最近の動きを、既存の標準と新たに開発された標準とを含めて解説、検証して行きます。

はじめに

先月、オートノミック・コンピューティングの最新動向の第1回では、日本でのオートノミック・コンピューティング採用の動きを検証しました。この第2回では、オートノミック・コンピューティング技術に関する標準について、単に標準そのものだけではなく、なぜそうした標準が重要なのかについても合わせて説明します。

「オートノミック・コンピューティングの最新動向」は、オートノミック・コンピューティング技術を取り巻く最先端の話題を、直接的、そして簡潔に、皆さんに伝えるシリーズです。事実を伝えることに加えて、一部の意見も紹介して行きます。

この記事では、オートノミック・コンピューティング技術での標準の役割について議論します。オートノミック・コンピューティング技術とは、つまるところオートノミックな管理機能を、異機種混合のITインフラ全体に幅広く展開することです。従ってオートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーは、標準化されたアーキテクチャー基盤の上に構築されることが必須なのです。

IBMでのオートノミック・コンピューティング・アーキテクチャーは、そうした基盤を表現しています。しかしIBMはまた、業界で広く採用されるためには、オープンな業界標準に基づく必要があることも、よく認識しています。従って、伝統的なオープン・スタンダード推進者であるIBMは、様々な領域での標準化に積極的に参加しています。こうした領域には、オートノミック・コンピューティングの技術基盤である、インターフェースやプロトコル、分類法などが含まれています。




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何が標準なのか

まず、『標準』という表現から始めましょう。私の好きなオンライン辞書で見つけた、『標準』の定義として最も適切に思えるものは、「優れていることを大きな理由として、広く認識あるいは使用されている、習慣あるいは製品など」です。(私が好きなオンライン辞書については、参考文献をご覧ください。)

IT業界での『標準』は多くの場合、『ある会社独自』への代替と考えられています。『ある会社独自』の実装は、ごくわずかの提供者(通常は1社です)による場合がほとんどです。そのため多くのITユーザーは、ある特定のベンダー独自のソリューションによる束縛を避けるため、標準ベースのソリューションの方が好ましい、と見ています。標準の価値として一般的に考えられているのは、多くのベンダーすべてが、標準に基づいたソリューションを提供できるという点です。ユーザーは、そうした中から選択することができるわけです。この選択をオートノミック管理の観点から見ると、あるサプライヤー・グループから購入した製品や提供物が、別のサプライヤー・グループから購入した管理ソフトウェアと相互運用できる、ということです。そのためユーザーは、その異機種混合システムは相互運用可能という保証を得た上で、自分の環境に最適なソリューションを見つけられるのです。

IT業界の中で成功したソリューションの多くは、標準に基づいています。インターネットとWorldwide Webは、その明白な例です。両者はそれぞれ、IETF(Internet Engineering Task Force)とW3C(World Wide Web Consortium)による、様々なプロトコル・フォーマットやコンテンツ・フォーマットの上に構築されています。

ただし、これらのよく知られた標準や標準化団体は、氷山の一角に過ぎません。アメリカ政府のNIST(National Institute of Standards and Technology、米国標準技術局)では、次のように言っています。

「標準は、IT技術のハードウェア、ソフトウェア、ネットワークにとって、必須要素です。例えば標準インターフェースによって、本質的に異なるデバイスやアプリケーションが通信し合い、一緒に動作できるようになります。また標準は、コンピューター・セキュリティーや情報プライバシーを下から支えるものであり、電子商取引やモバイル商取引の進歩がもたらすと期待されている、広範に及ぶ恩恵を実現する上で必須なものです。」

よく知られたIT標準化団体は幾つかありますが、この分野での標準化団体の数を数えることは困難です。これは、非常に様々な組織が登場しては消えており、また、標準にも様々なタイプがあり、その標準化方法も様々なためです。次は、これについて説明しましょう。




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標準を開発する

真の(文字通り「正当な」を意味する、de jure)標準というのは、大部分の人が『標準』と聞いた時に連想する標準です。真の標準は、標準を発行する権限を持つとされている団体によって作られます。こうした権限は、政府や国際協定、業界合意、公認団体などに由来しますが、これらの組織は、その権限内でのみ標準を発行する権限がある、と一般的に考えられています。この、de jureモデルに含まれる標準化団体としては、IETFやW3C、そしてISO(International Organization for Standardization)やIEEE Standards Associationなどがあります。

De jure標準(公的標準)は、IT業界にとって重要なものですが、IT分野で標準化されるものの非常に多くは、デファクト(de facto)による標準です。De facto(文字通り、「事実により」を意味する)標準は、真の標準ではありませんが、広く使われるようになった標準です。De jure標準とde facto標準の差は、時として主観的な判断に依存します。主な違いとして使われるのは、「一般的に認識された権威」が標準を発行する、という点です。デファクト標準の多くは広く業界に受け入れられており、各社が大きな投資をしていることを表しています。従って、ある人から見れば、デファクトもde jure標準と考えられます。

この議論の1つのポイントは、実は標準というものが、共通な方法で何かを行うグループ間での合意事項であるという点、そして、関心を持つグループ同士が標準を作るためには様々な方法がある、という点に行き着きます。また、できあがった標準が取る形式にも、様々なものがあります。標準は、公認団体や協議会、特定な利益団体といった組織でも開発でき、標準の形式にも、仕様やベスト・プラクティス、オープンソース・プロジェクト、標準実装など、様々な具体化方法があります。一般的に言って、業界での重要部分に対応する標準、また業界の主要各社の大多数が支持する標準が、最も有力かつ重要な標準としての地位を得ることができます。

オートノミック・コンピューティング技術に関係する標準や、標準化団体の多くが、「An Architectural Blueprint for Autonomic Computing」(参考文献)の中にリストアップされています。では次に、オートノミック技術に関係する重要な標準を、もう少し詳しく見て行きましょう。




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既存の標準

オートノミック機能を持つ製品を開発する際には、多くの標準が関係してきますが、既存の標準、あるいは開発中の標準として、特にオートノミック・コンピューティングに関係するものの中では、次のようなものが重要です。

  • DMTF(Distributed Management Task Force)による標準
    • Common Information Model (CIM)
    • Web Services Common Information Model (WS-CIM)
    • Applications Working Group
    • Utility Computing Working Group
    • Server Management Working Group

一般的に言って、上記の標準とワーキング・グループは、管理可能リソースの記述に関係したものです。

  • OASIS(Organization for the Advancement of Structured Information Standards)による標準
    • Web Services Security (WS-Security)
    • Web Services Distributed Management (WS-DM)
    • Web Services Resource Framework (WS-RF)
    • Web Services Notification (WS-N)

上記の標準は、Webサービスの管理と、Webサービスを利用した管理に関係するものであり、オートノミック・コンピューティング技術にとっての基本、およびモデルとして重要なものです。次のセクションでは、こうしたOASIS標準、特にWS-DMに関する詳細について説明します。




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新規の、そして新興の標準

オートノミック・コンピューティングに関係して活発な標準化が行われている重要領域の一つが、OASISのWS-DM技術委員会で作られている、管理標準です。これらの標準は、Webサービスの管理と、Webサービス利用の管理に焦点を当てています。オートノミック・コンピューティング・アーキテクチャーの実装はWebサービスに限定されるわけではありませんが、管理技術が既に様々な形で存在しているため、システム管理用インターフェースの例としてWebサービスを使うようになりました。従って、OASISが最近発表し、承認したWS-DM標準(次のセクションで、さらに説明します)は、システム管理において大きな役割を果たすと同時に、オートノミック・コンピューター技術にとっての鍵でもあるのです。

図1は、オートノミック・マネージャーのアーキテクチャーに関係する様々な標準を、図式的に表したものです(「An Architectural Blueprint for Autonomic Computing」に詳細が説明されています)。この図は、特定な標準が(オートノミック・マネージャーの)特定な一部分に当てはまることを示すためのものではありません。むしろ、オートノミック・インターフェースとオートノミック機能が、様々な標準に対応することを示しているのです。ただし図1に示した標準のリストは、完全なものではありません。


図1. オートノミック・マネージャーが使用する、代表的な標準
図1. オートノミック・マネージャーが使用する、代表的な標準



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最近のできごと

先に触れたWSDM標準は、最近OASISによって完成され、承認されました。2005年3月9日、OASISは、WS-DM 1.0を承認したことを発表しました。その発表文では、次のように言っています。

国際的eビジネスの標準化協議会であるOASISは本日、そのメンバーが、WSDM(Web Services Distributed Management)を、OASIS標準として承認したことを発表します(OASIS標準とは、最高レベルで批准されたことを表す地位です)。WSDMによって、Webサービスを利用して管理アプリケーションを構築することができ、1つのインターフェースを通して、多くのマネージャーがリソースを制御できるようになります。OASISのWSDM技術委員会の副委員長である、IBMのHeather Kregerは、「WSDMは、リソース・プロバイダーや管理ソフトウェア・ベンダー、そしてその顧客にとって、長年の頭痛の種を解消する上での鍵である」と言っています。またさらに、「異機種混合のリソースを、異種混合のプロトコルとプラットフォームを使って、異種混合の管理ソフトウェアに統合することにより、WSDMはWebサービスを活用して、管理統合問題の解決に取りかかることができる。」とも言っています。

私の同僚であり、IBMのオートノミック・コンピューティング標準化の技術リーダーであるThomas Studwellも、次のように言っています。「WSDMは、幾つかの点から重要です。第1に、先端的管理ソフトウェア・サプライヤーのほとんど全てが、この委員会に参加しており、幅広い業界サポートが約束されています。また、この標準は、今日のビジネスにとって重要な技術、つまりWebサービスのために、必要な管理インターフェースを提供しています。最後に、WS-DMによって、システム管理プラットフォームはWebサービスのSOA(service-oriented architecture)の持つ素晴らしい力を活用でき、Webサービスがビジネス・アプリケーションに対して証明したのと同じように、管理技術統合に向かっての重要な一歩を踏み出せるのです。」

IBMは、OASISのWS-DM技術委員会の積極的なリーダーとして、最近発表されたWS-DM標準に貢献してきました。特にIBMのCommon Base Eventは、WS-DM 1.0仕様に取り入れられた、WS-DM Event Formatの基礎となっています。




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まとめ

オートノミック・コンピューティング技術が広く採用されるために、標準化は致命的な重要性を持っています。OASISが最近WS-DM 1.0標準に関して行った発表でも見られる通り、IBMは、オートノミック・コンピューティングのためのオープン・スタンダードの開発と推進のために積極的に活動しています。異機種混合環境におけるシステム管理にとって、WS-DM標準の承認は重要なマイルストーンなのです。

IT業界では、オートノミック・コンピューティング技術に関連して、数多くの標準が役割を演じています。ここでは、そうした標準の幾つかを紹介しました。また、オートノミック・コンピューティング・アーキテクチャーのために、既存の標準や、開発中の新標準を使う背景と、その根拠についても説明しました。オートノミック・コンピューティング技術の進歩は、オープン・スタンダードの基礎の上で続けられるでしょう。




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謝辞

私の同僚、IBMのオートノミック・コンピューティングのシニア技術スタッフであるThomas Studwellと、新興技術シニア技術スタッフであるHeather Kregerに深く感謝します。2人は共に、OASISのWS-DM技術委員会(副委員長はHeather)において、WS-DM 1.0標準を生み出すために懸命に努力してきました。この記事の一部は、Thomasが作成した情報に基づいています。2人が行ってきた標準化作業のおかげで、私は有益な記事を書くことができました。



参考文献



著者について

Brent A. MillerはIBMのオートノミック・コンピューティング・アーキテクチャー・チームの一員であり、自己修復アーキテクチャー開発のリーダーです。IBMでの勤務は21年にわたり、プリンター開発、モバイル・クライアント、モバイル・ソフトウェア、パーベイシブ・コンピューティングなどに従事してきています。




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