レベル: 中級 Brent Miller (bamiller@us.ibm.com), Senior Technical Staff Member, IBM
2006年 10月 17日 イベント駆動型システムは、エンタープライズ IT 管理の重要な一部です。オートノミック・コンピューティング・アーキテクチャーでは、WSDM (Web Services Distributed Management) Event Format (別名 WEF) を基盤とした Common Base Event というイベント表現を定義しています。このイベント・フォーマットの普及率が高まるなか、IBM は使用方法のベスト・プラクティスを用意するのが賢明と判断し、今年の初めに一連のベスト・プラクティスを発表しました。この記事では、これらのベスト・プラクティスに関する展望を紹介し、IT 管理システムでのそれらの適用について検討します。
前回の記事 (「if you build it, management will come」) では、オートノミック・システムに対応した標準ベースのコンポーネントを開発する際に役立つツールについてお話しました。今回も引き続きオートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーに焦点を当て、その定番の 1 つ、Common Base Event を取り上げます。このイベント定義は、IBM による WEF (WSDM Event Format) 標準の初期実装です。その普及率が増加の一途を辿るなか、堅固で拡張可能なあらゆる仕様と同じく、WEF と Common Base Event には複数の実装方法があります。そのなかでも好ましい実装方法について記述するため、IBM では最近、「Best Practices for the Common Base Event and Common Event Infrastructure」(この記事では CBEBP と省略) を発表しました。この記事では、これらのベスト・プラクティスについて詳しく説明し、今後はどうなるかを紹介したいと思います。
この記事の流れは、まず Common Base Event と WSDM Event Format についてそれぞれ説明して、この 2 つの関係を明確にします。次にベスト・プラクティスの文書化の目的に目を向け、オートノミック・コンピューティングにおけるイベント管理の「最新動向」が何であるかを簡単に紹介します。(この記事では多数の資料を参照していますが、リンクは「参考文献」に記載しています)。
Common Base Event とは
CBEBP では、「イベントとは出来事を示すもので、潜在的に重要なことが発生したことを示すもの」と定義しています。一方、Common Base Event 仕様では、「イベントとは、すべてのシステム・オペレーションを外部に目に見える形で表したもので、プロセスの大小を問わず、その開始、展開、そして結末を表す」と記しています。
Common Base Event は、すべてのイベント表示で伝えられるべき共通の情報を標準的な方法で表現するために開発されました。この表現に含まれるのは以下のものです。
- イベントのソースに関する情報 (表示および扱っている情報)
- イベントの報告元に関する情報 (報告元がソース以外の場合、イベント・ソースについて指定された情報と同じ情報)
- イベントが報告している状態 (プログラムが理解できる、イベントの状態を記述する特定の列挙された値)
- その他のイベント情報 (関連メッセージ、相関情報など。タイム・スタンプとイベント ID が含まれることが必要)
Common Base Event 仕様では、Common Base Event の構文およびセマンティクス (意味付け) に関するすべての詳細を XML スキーマという形で指定しています。
Common Base Event は、イベント管理および問題判別関連の多くの製品をはじめ、多数の IBM 製品でサポートされていて、IBM の Autonomic Computing > Problem Determination > Products サイトにも記載されています。また、IBM 以外の多数のベンダーでも、その製品資料に記載されています (Autonomic computing > IBM Business Partners > Partners の Web ページにリストされている製品も多数含まれます)。Common Base Event の作成、変換、表示、分析用の開発ツールは、IBM オートノミック・コンピューティング・ツールキットの中に用意されていて、Eclipse TPTP (Eclipse Test and Performance Tools Platform) プロジェクトにも付属しています。
Common Base Event についての説明は上記のとおりとして、それでは WSDM Event Format とは一体何なのでしょう。そして何故このイベント標準が必要なのでしょうか。その点について、これから説明します。
WEF (WSDM Event Format) が必要な理由とは
WSDM (Web Services Distributed Management) とは、OASIS (Organization for the Advancement of Structured Information Standards) による管理容易性/管理標準です。WSDM は多くのプロパティー、操作、インターフェースの定義に加え、標準イベント・フォーマットを定義しています。WEF (WSDM Event Format) と呼ばれるこのイベント定義は、IBM および Cisco が OASIS に提出した Common Base Event 仕様に基づいています。そのため WEF と Common Base Event は、タイム・スタンプ、イベント ID、補足イベント情報だけでなく、イベントのソースと報告元の要素、状態要素を含む、多くの基礎となる要素を共有しています。WEF では多数のプロパティー名と構造が更新されていますが、WEF と Common Base Event は基本的に一致しています。IBM では Common Base Event を WEF の初期実装とみなしており、2006 年 8 月に批准された WSDM バージョン 1.1 の WEF 標準採用を進めています。
WSDM 1.1 標準の一部である WEF によって、イベント駆動型システムの相互運用性は一層向上します。IBM の製品および技術には、WSDM 標準の一部をすでにサポートしているものもあります。詳しくは、Autonomic computing > Industry standards > WSDM > Products サイトを参照してください。
次は、Common Event Infrastructure について説明します。これはイベント標準を使用する IBM 技術で、CBEBP で議論されています。
Common Event Infrastructure
CBEBP で説明されているように、「CEI (Common Event Infrastructure) は、いくつかの IBM 製品に統合された組み込み可能なコンポーネントです。このコンポーネントは、Common Base Event フォーマットに基づくイベント・データの報告、永続性 (パーシスタンス)、配布、そして解釈をサポートします。」図 1 に、CEI の構造を示します。
図1. Common Event Infrastructure
対象イベントのパブリッシュとサブスクライブの標準的な方法を含め、イベントのフィルタリング、永続性、および配布は、イベント駆動型システムでは重要な機能です。CEI ではこれらの機能を共通プログラミング・モデルによって提供します。CBEBP で述べているように、「CEI は製品ではなく、むしろいくつかの IBM 製品で使用されている IBM コンポーネントで、Common Base Event を報告し、永続させ、そして使用するためのプログラミング・モデルを提供してイベント情報を簡単に共有できるようにします。」このような機能はイベント駆動型システムの中心であるため、CBEBP には CEI を使用してイベントを生成、使用、分配、フィルタリング、そして永続させるためのベスト・プラクティスが含まれています。
次に取り上げるのは、CEI を標準イベント・フォーマットで使用する方法です。
Common Base Event、WEF、および CEI の使用方法
標準イベント・フォーマットとイベント処理用の共通プログラミング・モデルを使うことで、イベント管理を充実させる上に作業を簡単にします。さらに、これらの機能によって IT 情報とビジネス情報の両方をイベントで伝達することを可能にし、ビジネスにおけるさまざまな役割の間の「縦割り」を取り除きます。この標準ベースの手法は、関係者全員の協力によってエンド・ツー・エンドの問題判別を一層効果的に実現できるよう、IT イベントとビジネス・イベントを統合します。
図 2 に、そのようなイベント駆動型システムの例を示します。
図2. 標準ベースのイベント駆動型システムでのエンド・ツー・エンドの問題判別
ベスト・プラクティス文書では、このような環境での IT イベントとビジネス・イベント両方に対する標準イベント・フォーマットおよびプログラミング・モデルの使用方法を説明しています。以下に、CBEBP の記載内容の一部を簡単に紹介します。
ベスト・プラクティスの紹介
CBEBP は、Common Base Event 仕様を補足する包括的文書です。Common Base Event、WEF、および CEI を使いたい、またはその詳細を知りたいという開発者、テスター、アーキテクトなどを主に対象としたこの文書は、以下についてのベスト・プラクティス、ガイドライン、および規約を扱っています。
- Common Base Event の一般的な使用方法
- 問題判別アプリケーションを対象とした Common Base Event の使用方法
- ビジネス活動関連のイベントを対象とした Common Base Event の使用方法
- 特定のプログラミング環境を使用した Common Base Event の作成および送信方法
- Common Event Infrastructure を使用したイベントの転送方法
イベント処理、CEI、問題判別イベント、およびビジネス・イベントの概要とコンテキストに加え、ベスト・プラクティス・ガイドには、Common Base Event を作成および使用する際の指針となる特定の具体的なやり方が事例を含めて記載されています。
さらに、ベスト・プラクティス・ガイドには以下の内容も記載されています。
- イベント駆動型システムで CEI、オートノミック・コンピューティング・ツールキットなどの IBM 技術を使用する際のヒントと事例
- オプション・プロパティーを使用して、極めて有意義で役に立つ問題判別およびビジネス・イベントを構成する際のガイドラインおよびアドバイス
- 一般的、問題判別での、およびビジネス・イベントでの使用方法に対して強調されたヒントとベストプラクティスを網羅したCommon Base Event のプロパティーごとの説明
- IT 問題判別とビジネス・イベント間の溝を埋める際に Common Base Event が果す役割を示すシナリオを含め、問題判別とビジネス・イベントの実例となる詳細なシナリオ
上記のすべてが、Common Base Events Best Practices ガイドに記載されています。
近い将来の展開
オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーでは、IBM による WSDM Event Format 業界標準の初期実装である Common Base Event を定義しています。この共通イベント・フォーマットは、オートノミック・コンピューティングのアーキテクチャーにおいてもっとも完成した成果物の 1 つで、いち早くオープン標準として批准されることになるはずです。Common Base Event が普及するなか、「Best Practices for the Common Base Event and Common Event Infrastructure」は正式仕様を補完し、このイベント標準が持つ相互運用性の価値を強化するために「微調整」を行います。
前に述べたように、Common Base Event は IBM による WEF 業界標準の初期実装です。WEF と Common Base Event には密接な関係があるため、ベスト・プラクティス・ガイドに記載されているベスト・プラクティスの多くは Common Base Event だけでなく WEF イベントにも適用できます。IBM では、今後このガイドを拡大して、移植 (マイグレーション) および共存に対応するために行われる WEF と Common Base Event フォーマット間の変換についての考慮事項を含め、WEF イベントの使用に固有のベスト・プラクティスを追加することを目指しています。このガイドは、developerWorks で入手できます。
次回の「オートノミック・コンピューティングの最新動向」では、WEF をはじめとする WSDM 標準をサポートするソフトウェアの開発方法について取り上げる予定です。
謝辞
ベスト・プラクティス文書に貢献してくれた IBM の多くの同僚、Abdi Salahshour 氏、Alan Chivers 氏、Benny Rochwerger 氏、Billy Rowe 氏、Cesar Araujo 氏、Christina Lau 氏、David Enyeart 氏、Don Bourne 氏、Eric Herness 氏、Eric Labadie 氏、Eric Wayne 氏、Herb Lee 氏、James Schoech 氏、Jun-jang Jeng 氏、Kumar Bhaskaran 氏、Mike Brown 氏、Mike Wamboldt 氏、Nduwuisi Emuchay 氏、Nick Butler 氏、Peter Brittenham 氏、Peter Sohn 氏、Tian Chao 氏、Valentina Popescu 氏、Victor Chan 氏、Kevin Denyer 氏、Mickey Nix 氏、Yoichi Yoshida 氏に感謝します。
参考文献 学ぶために
製品や技術を入手するために
議論するために
著者について  | 
|  | Brent A. MillerはIBMのオートノミック・コンピューティング・アーキテクチャー・チームの一員であり、自己修復アーキテクチャー開発のリーダーです。IBMでの勤務は21年にわたり、プリンター開発、モバイル・クライアント、モバイル・ソフトウェア、パーベイシブ・コンピューティングなどに従事してきています。 |
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